第91話 新しい仲間。6
騎士団の人員との顔合わせを終えた十全だが、これが本来の仕事ではない。
決して元許嫁や元義妹と話すのが気まずいからという訳でなく、――――いや、実際気まずいが、それでもほかに優先しなければならない仕事があったのだ。
まず、新しく派遣された人員は騎士団を除いて100名余りである。
すでにそれだけの人が住めるだけの施設は出来ている。
これだけの人員が増えればやれることも増えていく。だが、そうなれば十全とウルトゥムだけで全部を管理しきれなくなる。
そのために各分野の管理職を指名して組織化していかなければならないのだ。
これが領主である十全の仕事だ。
ついてまずは土地の開拓や施設の建築、つまり土建屋だが、これは先に来ていた人員のなかで既にまとめ役になっていた人物を頭にする。
名前は
小麦色に焼けた肌と江戸っ子気質の40代後半のそのおっちゃんは、十全のことを「大将」と呼んで慕ってくれている。
十全はそれに「少佐だよ。」と返すのが挨拶になっている。
新しく入って来た人員も含めて彼に土建屋を任せることに。
「それで大将、街づくりの基本は把握しましたが、この貴賓館の作りはどうしやす。」
「そこなんだよねー。ウチに求められているのは大和の国賓をもてなすことじゃないからね。」
「それなら温泉旅館でも建てればいいって話でやすがね。」
「異星人の国賓をもてなす、となるとね~。」
「異星人が好む調度品とか分からんですからねぇ~。」
2人してうんうんと頭をひねっていると。
「ご主人様、そろそろお食事になさいましょう。」
と言って、大人バージョンでメイド服を着たウルトゥムがやって来た。
最近はウルトゥムは人前に出る大人ヴァージョンの時は「ミツル。」ではなくて、「ご主人様。」と呼び方を変えてきている。
と、いうのも、ウルトゥムには女性の仕事を中心に監督してもらっており、特に屋敷のメイドたちの管理は彼女任せだ。
そのため、仕事中は手本となるようにしているらしい。
「ご主人様、何をそんなに悩んでおいでですか。」
「いやな、迎賓館をどうするべきかとな、ウルトゥムは他国で歓待されるときどんなのがいい。」
「アタシがですか。すみません。ワタシはそういうのには全く経験が無いもので。」
「そうか~。」
十全が残念そうにつぶやいていると。
「ア、アノ、ご主人様、イイですか。」
ウルトゥムに付いて来ていたニャルがウルトゥムの後ろから顔を出して声を掛けて来た。
ニャルはこの2か月で大分日本語にも慣れて来たものだが、まだ人見知りするところは治っていない。というか、最近はむしろ十全に対して照れているような感じがする。
(というか、異星人でもある程度言葉が通じるのに、なんで不慣れな者が居たりするんだろう。)と、この世界のちょっとした疑問の方が勝った十全はニャルの表情に気が付いていない。
「どうしました。何かいい案があるのですか。」
「はい姉さま。実は――――
「ニャル、ワタシじゃなくてご主人様にちゃんとお話しして。」
「ハ、ハイ。あっ、あのですね。ワタシは変に他所のことを考えない方がイイと思いマス。」
「ん?それは何で。」
「タブンですけど、大和に来る方たちは大和のことが知りたくて来るのだと思います。なのに他所に合わせたりしたら間違った誤解をサレル思います。」
「おっ、それもそうか。」
「むしろへたにコビ売った方が舐められる思います。」
「そうだな。棟梁。」
「合点ださぁ。あくまでも大和らしくですね。任せてくだせぇ。」
「棟梁ぉ~、仕事はご飯食べてからにしてください~。」
「おっとこりゃいけね。」
そんな感じで問題が解決したので十全たちもご飯に向かう。
「ありがとなニャル。」
十全がお礼を言ってニャルの頭をなでる。
カッ~~~~~~~。
と、ニャルの顏が赤くなるが、十全はそれに気が付かない。気づいているのはウルトゥムだけだった。
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