第34話 ウルトゥムとの夜。その1.

俺は朱居の案内で本当の居室に案内された。


先ほど案内されたのは幻術で見せられた幻だったらしい。


部屋に通されるとそこには浴衣姿のウルトゥムがいた。


「っご主人様—――。」


ウルトゥムは俺の顔を見ると感極まったかのように抱き着いてきた。


ウルトゥムの身体は温かく――――温泉の臭いがしていた。


そうですか、俺が陛下との胃が痛む謁見を行っている間ウルトゥムさんは温泉を楽しんで来たのですか。


―――しかし、そんな不満も尻尾を振りそうなウルトゥムの嬉しそうな姿を見ては霧散するというものだ。


ブン、ブン、ブン。


フリッ、フリッ、フリッ。


「―――って、ウルトゥムさん、出てますよ。触手のような異形の尻尾的な何かが出ていますよ。」


「おっと、これは失礼しました。」


「……松永さま、尻尾プレイは2人っきりの時にしていただけませんか。」


「だぁー、ツッコミが追い付かねぇ~、とりあえずウルトゥムは少し離れてくれないか。」


―――――そんな上目遣いで服のすそを掴んで「えっ?」って見つめられたら困るんですけど。


そして、「我々はこれで失礼いたします。」と言って出ていく朱居と女官たち。


―――あいつら笑ってやがったぞ。


……


…………


とりあえず、ウルトゥムを落ち着かせ、テーブルをはさんで対峙する。


その姿は温泉宿に2人だけで来たラブコメの主人公とヒロインのようなぎこちない雰囲気だった。


『旦那、僕の出番ですか♡』


『出てこなくてなくていい。』


『むしろ旦那はたっぷり中に出してボクに満足感を与えてください♡』


『D・A・M・A・R・E』


とりあえず、悪魔の横やりをしのいでウルトゥムとの2人きっりであるが、ウルトゥムはアノ触手の服を脱いで本来のロリ体形で浴衣を着てお茶を啜っている。


「―――あの、ご主人さまは今までどちらにいらしたのですか?。」


お茶をすすりながらロリウルトゥムが訪ねてくるのに、俺の鼓動は早鐘を打ちだす。


いや違うぞ、俺はロリコンじゃない。


ロリコンじゃないからウルトゥムに手を出して子供ができたりなんかしないぞ


冷静に、冷静に対処しなければ。


「あぁ、俺か、俺は皇帝陛下に呼ばれて大事なお話(?)をちょっとしてきただけだ。……ウルトゥムの方はどうだったんだ?」


「あっ、あの、ワタシの方はその、何と言いますか、いろんな服を着せられました。」


聞くところによるとウルトゥムは明日のお披露目の儀式に着るための衣装の着せ替えをされていたようだ。


「しかし、この皇宮に入る前に幻術を食らわせられたのは腹立たしいです。」


「そう言うな。それも警備の一環なんだから。」


「分かってます。分かってはいるのですが……それでも…あのようなものを………」


「……?なんだ、何を見せられたんだ?」


「―――っ、ご、ご主人様は知らなくていいんです。」


顔を真っ赤にして上目遣いに俺を見てくるウルトゥムに俺の胸の早鐘がさらに加速する。


垂直方向へのラディカル・グット・スピードだ。


俺の思考に紅玉陛下の御言葉が反芻される。

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