第31話 大和帝国皇帝見参!なのじゃ。

無間の広間に居る俺の目の前に巨大な階段が現れた。


それはホントに傍にあるのか遠くにあるのか分からない構図の光景で、しかし最上段を見ればテレビを見ているかのようにその光景が近くに見える。


ともすれば先の幻の方が現実ではないかと思える不思議な空間。


皇帝陛下のおわす内裏は未知の神秘があるのだろう。


「ひかえおろぉ~。」


おどろきの光景にしばしフリーズしていた俺はその声に意識を取り戻し、胡坐は失礼だから正座で頭を下げようと姿勢を変える。


「おろぉ~。おろぉ~。おろろろろろろぉぉぉぉん。」


ズッこけた。


ベンツに飛び乗ろうとしてハンドルがとれたルパン三世みたいに見事にひっくり帰った。


「ゴホン。陛下、下品ですよ。」


新たな声がしたので(ひっくり返ったまま。)顔を上げて、と思ったけど首がうまく動かなかったので視線だけ向ける。


御簾の前、左側にピンっと背筋を伸ばして立っている人物が見て取れた。


赤と黄色の女官服に身を包み、綺麗な黒髪を結い上げた女性、朱居が立って何やら疲れた顔をしていた。


先ほどはこの広い空間に響いた声だったが今度は聞こえなかった。が、何やら朱居と話しているのが分かる。


御簾には一人の影が映っているのだが、何やら身振り手振りを加えて話しているみたいだからだ。


しかし、この広い空間といい、先の幻術や声などから流石に特別な神秘があるようだ。


皇帝陛下に失礼のないように『すでに手遅れじゃないかなぁ♡』これ以上の失態を見せないように気を引き締めて姿勢を正す。


「わ、キュィィィィィィィ。

             あ~、テス、テス、マイクテス。」


今度は正面に向かってズッこけた。


こうケツを頭より前に突き出すように、頭が地面にめり込む感じにひっくり返った。


「おいおい、頭が高いと申したが、これではケツが高いではないか。朕はへりくだるよりも自信があるやつが好きなのじゃ。よって、今すぐ面を上げて胸を張れぃ。」


「ハッ。」


俺は陛下の御言葉に従い姿勢を正す。


「あっ、正座はしなくて良いぞ。アレは見ていて朕まで足がしびれそうなのでな。」


俺は陛下に従って胡坐をかく。


礼儀なんてものは偉い人の一言で簡単に変わる。


一番大切なのは偉い人に嫌われないようにすることだ。


「さて、貴方は今の状況を分かっておりますか。」


朱居がすました顔でこちらに問うてきた。


「はい、今後の戦略について―――ですね。」


「―――はっ!」


朱居に鼻で笑われた。


「?」


「どーーーーーん!なのじゃ。」


「うわぁ!」


突如、俺の目の前の床がはじけ飛んで一人の人物が飛び出してきた。


「颯爽登場!大和帝国皇帝。しかして紅玉帝とは世を忍ぶ仮の姿、その実態は秘密結社『萌えの夜明け』こと、『モエモエ・ドーン!』の総統である、朕こそは「P、N、紅ちゃんペンネーム、あかちゃん』ここに見参。」


そうな乗りながらポーズを決めているのは……まごう事なき大和帝国の皇帝陛下であらせられる紅玉帝である。


御簾の影は最初から偽物だったらしく、首のところがバネになって頭がびよょ~~~んとなっていた。


「はぁ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~。」


朱居が、もとい、朱居さんが長い溜息をを吐き出していた。

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