第21話 小鳥遊 飛鳥はサイコである。

小鳥遊 飛鳥、今更ながら一応女と言っておこう。


年は20才前後だと思われるが童顔であるため詳細は分からない。


現在の階級は少尉。


小顔にクリっとした大きめな目、瞳の中に☆が舞っている系の女である。


髪はミドルのツインテールで、コスモスのような赤とピンクのグラデーションが掛かった色をしている。


変わった色だが染めていない地毛らしい。


顔には化粧が施されていて可愛いを強調しようとしているようだ。


しかし、それも今は甲型機動甲冑に引きずられたことでドロドロだ。


また、プリーツスカートの女子高生の制服みたいな感じに軍服を改造している。


それも今はドロドロだが。


それを指摘やると、こいつは「ちょっと待ってね。」と言って、顔をごしごし、服をパンパン、髪を手櫛でシュシュッと、たったそれだけで綺麗になってやがる。


「何でそれで綺麗になるんだ。」


「女子力。」


多分違う。


いくら女子力が高くたってそんなことはできないはずだ。


あと顔をごしごししていたけど、泥だけ落ちて化粧が落ちないとかどんな手品だよってレベルだぞ。


つまりこいつは普通の女じゃない。


普通の女が時速60㎞で地面を引きずられても無事なはずがないのである。


今の大和帝国軍人はこの世界の環境でかなり強く、頑丈になっているが、結構ヤバい怪我になるモノだ。


なのにかすり傷ひとつついてやしねぇ。


それに加えて、こいつは問題児である。


いい年こいた大人が問題児と言われるのは恥ずかしいかと思うが、自分の生き方に迷いがない奴は気にしないのだろう。


そしてコイツはシリアルキラーである。


サイコパスでもある。


加えて人気アイドルでもある。


―――――――――何でそれでキャラが成り立つのか不思議だ。


だが、確かに小鳥遊 飛鳥は小鳥遊 飛鳥なのである。


歌って踊れて、敵も殺せるスーパーヒロインである。


コイツが戦場に立つと味方の士気がガンアゲになる。


死山血河を築いてその頂にて輝くアイドルである。


だが、正直コイツとは関わりたくない。


だって、信者が怖いし。


何よりコイツが怖いし。


―――うちも執事にメイドに悪魔と正気の沙汰ではないのだが。


それでも戦闘シュミレーターで何度も惨殺された経験に比べればマシというものだ。


思い出しても吐き気がこみあげてくる、だけじゃなくて内臓が痛くなって下がっていき金玉がキンキン言い出す。


コイツは舞台に入ったばかりの俺を散々に惨殺してくれやがった。


戦闘シュミレーターだから本当には死なない、と言っても完全没入型でペインアブソーバーもかかっていないものだから、ログアウトした後も残響した痛みにのたうち回った物だ。


特に最初の頃は即死させずにいたぶって来るので痛みと恐怖をこれでもかと刻み込まれて、眠れない日が続いたものだ。


しかし、それも俺が痛みと恐怖を克服するまでで、その後は遊びの無い即死狙いとなって行った。


つまりこいつのおかげで俺は危機察知能力と反射行動をみにつけられたのだが、


だからと言ってコイツに気は許せない。


出来るだけ関わらず退散しよう。


「それじゃぁな、コレをトッコーに返してから隊長のところに行かなきゃなんねーから。」


「ふーん、そうなんだ。でも実は今ボリアの残党が帝都に入って来てるんだよ。」


「ふーん、大変なんだな。」


「うん、だから飛鳥が出張ってきたんだけど。」


信者どもを投入した残党狩りか。


たぶん正式な作戦じゃない独断行動だろうけど、たぶん門の衛兵が言ってたのはこれだろう。


見事に巻き込まれてしまってます。


「それがね、さっきまでコソコソ逃げ回ってたやつらが何故か向こうから寄ってきたんだよ。―――今囲まれちゃってるけどどうする?」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る