第15話 ウルトゥムは二度見してきた。
床をのたうち回る筋肉。
一見幼女に見える美少女にまとわりつき、グュルジュブ、ゴキ、ミミチミミチ、といやらしい音を立てている触手。
そして、腹を抱えて笑っている悪魔。
信じられるか、これが今日から一緒に住む家族なんだぜ。
不安しかない。
こんなんで領主とかできるんだろうか。
―――あぁ、前世のオタクコレクションが懐かしい。
……………よく考えたら俺のコレクションって人外ヒロインモノやイカスオッサン(床でのたうち回っていたのはちょっと残念。)が出てくる作品が多かったような。
……アリか?
こっち方面でもおたくネタにはなるし、可愛い王道の萌えキャラは領主権限で集め―――もとい、スカウトした女の子をプロデュースすればいいし。
よし、今はこれで我慢して今後領地の発展に合わせて萌え文化を普及させていこう。
とりあえず当初の目的通り帝都に行って領地開拓のためのイロイロをしてこないと。
という訳でとりあえずは。
「ウルトゥムさん……それ…………大丈夫なんですか。」
グブジュル”ル”ル”~~~~~~~ッ。
俺が声をかけると、湿った音を立てて触手の塊からウルトゥムの顏が出てきた。
ただ…上下が逆に歪んでいたし、右目が飛び出していた。
「大丈夫です。心配い”い”い”い”りりません~。」
「大丈夫じゃないよね、それ!」
ウルトゥムの顏は喋っている間に口がグチャァ~っと裂けていっていた。
裂けた口からはのこぎりのような乱杭歯がのぞいていた。
「すみません。もう少しお待ちください。元に戻るのは簡単なんですけどこうして姿を変える時は少し手間取るのです。」
とか言っていたら、ウルトゥムの顏がさらに歪んでその下からもう一つ顔が浮き出てきた。
その二つの顏、その二対の目がジロリとこっちを見てきた。
使徒かお前は!
とりあえずウルトゥムの準備が終わるまでそっとしておくことにした。
…女の人の準備には時間がかかるとは聞くが、これは多分違うと思った。
by.デートなんかしたことのない男。
待つこと20分ほど、俺の前には先の戦争で対峙したボン、キュッ、ボンの美人さんが立っていた。
「ふむこれなら人前に出しても恥ずかしくないでしょう、ご主人様。」
むしろさっきまでのは恥ずかしさとは全く異なるモノだったのだが。
ともかく今は耳が長いこと以外は普通の人間に見える。
肌は日本人離れした白さではあるが、大和帝国には日本人以外もいるので問題ない。
むしろ、今の大和帝国では日本人とか外国人とかは問題視しない。
みんな同じ地球人なのだ。
そんなウルトゥムは今はメイド服でなく大和帝国の軍服を着ている。
階級は軍曹だ。
かく言う俺も軍装で階級は大尉。
ウルトゥムは大和帝国の軍人ではないが隊長が帝都に連れてくるときはこの格好をさせろと言ってきたのだ。
そして俺は正真正銘の帝国軍人だ。
もともとは曹長だったのが先の戦争での武勲で大尉に昇進した。
正直昇進しすぎな気がするが、何でも新しく領地を与えるのに爵位制を取り入れることになったからであるらしい。
これから細かい制度を調整するそうだが、とりあえず旧時代のを持ち出してきたところ爵位を与える以上は最低でも大尉の階級になるのだそうだ。
まぁ、政治の話は気にしないでおこう。
「似合ってるな、ウルトゥム。恰好いいぞ。」
「そうか、照れるな。」
そう言って照れるウルトゥムは―――グバァっと胸が開いた。
それに俺はまたしても目が釘付けになった。
こう―――ヒトデみたいにウルトゥムの胸が開いたのだ。服がではなくて…こう肋骨とかを無視して肉がガバリと、その内側には乱杭歯がずらりと並んでいたので口なのだろうか。
「済まない。まだ少し安定していない。この魔法具はワタシに寄生してワタシの思念によって動くのだが、本来の形と違う姿になっていると動揺などでこうして形が崩れるんだ。」
「そうか、気を付けてくれ。」
帝都行きが途端に心配になってきた。
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