第11話 恩賜氏名
『—――でじゃ、その時トイレットペーパーがないことに気が付いてそれはあせったのじゃ。」
俺は今、大和帝国の頂点にして現人神たる紅玉帝のその玉音を賜っている。
もちろん正座で。
「いやぁ~、朕としても戦時下で物資は大事じゃと説いて、自分のことは自分でやると供回りの者を遠ざけたばかりで「紙が無い。」などと言って騒いでは流石に恥ずかしくてのぉ。』
「ええ、仰る通りで御座います。」
『うむ、其方もそう思うか。朕が恥ずかしい奴だと。』
「めっ、め、め、え、え、ぇ、っ、っ、めっ、滅相もございません。」
『ん?どっちじゃ、朕は恥ずかしい奴か。恥ずかしくないのか。はっきりせい。』
「紅玉帝陛下に置かれましては恥じ入ることなどありません。むしろ恥ずかしいのは手前にてございます。」
『なんじゃ、お主もトイレットペーパーが切れておったことがあったのか。』
一緒にしないで下さぁ~い。
トイレットペーパーが切れていたことがないわけでもないが。
えぇい、これも紅玉帝のトイレの紙を切らした傍付きたちのせいだ。
絶対に許すまじ~~~~~~~~~~~~!
まぁ、どいつもすでに首がつながってないだろうけど。
『それでじゃな~~。』
『ほい、そこまで。』
『お、着替え終わったのじゃな。』
『おう、こっからはおれが話す。』
俺はようやく通信の相手が隊長になったことに、ホッとため息をつく。
『でだ、トイレットペーパーが切れてたこいつがやったのがこれまた傑作な――――
「紙の話はもういいですよ。」
このままほっといたら本題に入れない。
という訳で、俺は強引に話を切り替えてこちらの事情を伝えた。
『なるほどな、やっぱりお前ってバカだよな。』
「うぐ。」
否定できない。
『まぁ、お前に付いてる悪魔のおかげとしても住む場所がすでにあるのはいいことだ。その屋敷にはあと何人ぐらいが住めそうだ?』
「そうですね、ざっと20人ぐらいですかね。」
『インフラは?』
「一応井戸がありますし周りには自然がいっぱいですので食料も豊富です。」
『なるほど、それなら
「残敵哨戒任務という形で甲型機動甲冑の試作ユニットの実験を任されたので、ついでに寄りました。」
『お前もそうだが、
ダメだった?いや駄目だろう。だろうけどこの人のもとではどうにでもなるんだろうな。
『まぁいい、手続きはこちらでどうにかなるし効率重視で行こうか。とりあえずこっちに戻ってこい、―――あー、名前…なんだっけ?』
「あの、自分実家を勘当された身で名乗る名前が無いからと。」
『そうだった、そうだった。確かそれで没落貴族だから「ボッキ君」だったけか。』
「それは飛鳥の奴が提案したけど即却下になったじゃないですか。」
『そうだっけか?まぁこの際名前がないのも大変だしボッキ君ってことにしようぜ。』
「お願いですからやめてください。」
『なんじゃ、ボッキ君は名前がないのか。』
陛下まで~。
そう落ち込む俺に紅玉帝陛下が楽しそうに言ってきた。
『ならば朕自らが
「そ、それはもしや…恩賜を賜れるということですか。」
『うむ、いいのを考えておくからこちらに来た時に正式に授与するとしよう。よいな。』
「はは、謹んで拝命いたします。」
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