箸休め 古代の虫はとっても巨大! ⑤荷電粒子砲は撃てないよ

※文末に今回の「まとめ」を掲載しています。

 お時間のない方は、一番下まで画面をスクロールさせて下さい。


 太古の巨大な虫に着目している今回のシリーズ。

 前回は環境の変化に適応出来ず、絶滅してしまったアースロプレウラを取り上げました。


 ◇太古の巨大なサソリ


 彼等はペルムの初期に姿を消しましたが、末期にも大きな虫が絶滅しています。


 災難に見舞われたのは、ウミサソリです。


 彼等は昆虫と同じ節足せっそく動物どうぶつですが、鋏角類きょうかくるいに分類される生き物です。


 鋏角類きょうかくるいは現在も存続しているグループで、サソリやクモなどがぞくしています。


 以前紹介した(『青い血は$になる!?』の回)カブトガニも、鋏角類きょうかくるいの一員です。

 他にもダニやザトウムシなど、比較的身近な生き物が揃っています。


 詳しくは「マーベラスなクモ!」シリーズで解説しているので、よければご覧下さい。

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054896244526/episodes/1177354054896246265

(URLをクリックすると、該当するシリーズに飛びます)


 カブトガニの回はこちら↓

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054883436079/episodes/1177354054883451432

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054883436079/episodes/1177354054883451443


 ◇世界中にいた!


 名前から想像出来るように、ウミサソリはサソリによく似た生き物です。

 また「海」と名付けられている通り、主に海の浅い場所に棲息していました。


 ただ多様な環境に棲む生き物で、淡水や汽水きすいに棲む種類もいたようです。

 陸上を歩ける種類もいたらしく、足跡の化石も発見されています。


 ウミサソリの化石は、北米やヨーロッパを中心に世界中で見付かっています。

 様々な環境で暮らせる分、棲息範囲もかなり広かったようです。


 ◇サソリとは別の生きもの


 彼等には海底や川底を歩いていたタイプと、泳ぐことに特化したタイプが存在しました。


 海底や川底を歩いていたタイプは、サソリにそっくりです。

 ただしサソリに似ているのは偶然で、祖先ではないと見られています。


 一方、泳ぐことに特化した種類は、サソリよりカブトガニに似ています。

 実際、カブトガニに近い生物と言われていますが、結論はまだ出ていません。


 ◇ウミサソリは強い!


 ただ強力な捕食者であったことは、ほぼ間違いないようです。


 (株)タカラトミーの販売している「ゾイド」には、「デススティンガー」と言う機体が登場します。


 デススティンガーはウミサソリをモチーフにした機体で、凄まじい性能の持ち主です。

 アニメではボスキャラ的な役目も果たし、多くの少年の心を掴みました。


 現実のウミサソリも、デススティンガーに勝るとも劣らない強者です。


 ◇シルルの覇者!


 彼等は恐ろしく古い生き物で、約4億7000万年前には地球上に存在しました。


 専門的にはオルドビスと呼ばれる時代のことで、恐竜が栄えた白亜紀はくあきの3億年以上前に当たります。

「原始的な魚が出現した頃」と言えば、どれほど昔のことか分かって頂けるでしょう。


 オルドビスの次のシルルになると、ウミサソリは生態系の頂点に立ちます。


 ウミサソリの中には、現代のサソリのように立派なハサミを持つものがいました。

 また尾に鋭いトゲを持つ種類も存在し、獲物を突き刺していたと見られています。

 彼等はこういった武器を使い、魚や他のウミサソリを捕食していました。


 ◇ウミサソリはデカい!


 何より凄まじいのが、身体のサイズです。


 海の浅い場所に棲んでいたプテリゴートゥスは、体長2㍍以上に成長しました。

 体重も相当なもので、現代のサソリの1000倍に達したと考えられています。


 2020年現在、彼等に並ぶサイズの節足せっそく動物どうぶつは、アースロプレウラしか発見されていません。

 彼等が現代まで生き残っていたら、おちおち海水浴も楽しめなかったでしょう。


 他にも太古の水中には、1㍍以上のウミサソリが棲息していました。


 ただし、全てのウミサソリが大きかったわけではありません。

 1㍍以下のものや、10㌢程度のものも発見されています。


 ◇ペルムの大量絶滅


 シルルが終わり、デボンになっても、ウミサソリが滅ぶことはありませんでした。

 更には次の石炭紀せきたんきも乗り越え、誕生から2億年以上も種を存続させます。


 しかし、次のペルムを越えることは出来ませんでした。


 ペルムの末期には、地球史上最悪の大量絶滅が起きました。

 姿を消した生物は、地球上のしゅの90㌫以上に達すると考えられています。


 2億年以上に渡って栄えたウミサソリも、この時に絶滅してしまいました。


 ◇大量絶滅の原因は、地球規模の火山活動?


 原因には諸説あり、未だに結論は出ていません。


 ただ有力視されているのが、超大規模な火山活動です。


 別の作品で使っているネタなので、あまり詳しくは語りません(笑)

 今回は「あらまし」だけでお許し下さい。


 当時、現在のシベリア一帯では、立て続けに大噴火が起きていました。

 無尽蔵に噴出するマグマは、アメリカに匹敵する範囲を埋め尽くしたと考えられています。


 火山の噴出するガスには、膨大な量の二酸化炭素が含まれていました。


 現代でも問題になっていますが、二酸化炭素には地球の気温を上げる働きがあります。

 大量の二酸化炭素は、ペルムの地球にも異常な温暖化を引き起こしました。


 また二酸化炭素は海にも溶け込み、本来アルカリ性の海水を酸性に変えてしまいます。

 更には海中の酸素濃度が低下し、海に棲む生き物に大打撃を与えました。


 多くの生物は急激な変化に適応出来ずに、絶滅してしまったと推測されています。


 ◇今回のまとめ


 ☆古代の海で暮らしていたウミサソリは、鋏角類きょうかくるいの仲間。


 ☆鋏角類は節足せっそく動物どうぶつ(昆虫やカニのこと)の一種で、クモやサソリがぞくしている。ダニやザトウムシ、カブトガニも鋏角類きょうかくるいの仲間。


 ☆ウミサソリは海の浅い場所で暮らしていた。ただし、汽水きすいや淡水に棲んでいた種類もいる。陸にも上がったらしい。


 ☆ウミサソリには海底を歩くタイプと、泳ぐことに特化するタイプがいた。


 ☆海底を歩くタイプは、現代のサソリにそっくり。ただし、ウミサソリはサソリの祖先ではないと見られている。また泳ぐことに特化したタイプは、カブトガニに似ている。


 ☆ウミサソリはカブトガニに近い生物と言われているが、異論もある。


 ☆ウミサソリが出現したのは、約4億7000万年前。


 ☆ウミサソリは優秀な捕食者で、一時は生態系の頂点に立っていた。


 ☆ウミサソリの一種プテリゴートゥスは、体長2㍍以上に成長した。巨大ヤスデのアースロプレウラと並んで、地球史上最大の節足せっそく動物どうぶつと考えられている。


 ☆ウミサソリの仲間は2億年以上も存続したが、ペルムの末期に絶滅した。


 ☆ペルムの末期には、地球史上最悪の大量絶滅が起きた。この時、地球に存在するしゅの90㌫以上が姿を消した。


 ☆大量絶滅の原因は、地球規模の火山活動。火山ガスに含まれる二酸化炭素が、地球を温暖化させてしまった。多くの生物は、環境の変化に適応出来なかったと見られている。


 ☆ウミサソリも大量絶滅の被害者。


 ◇参考資料


 オールカラー完全復元 絶滅したふしぎな巨大生物

 川崎悟司著 (株)PHP研究所刊


 絶滅した奇妙な動物

 川崎悟司著 (株)ブックマン社刊


 ならべてくらべる動物進化図鑑

 川崎悟司著 (株)ブックマン社刊


 クモ学 摩訶不思議な八本足の世界

 小野展嗣著 東海大学出版会著


 生物ミステリーPRO

 オルドビス紀・シルル紀の生物

 土屋健著 (株)技術評論社刊


 地球ドラマチック

「史上最強! 動物図鑑~海編~」

 放送局:NHKEテレ 放送日2019年8月3日


 地球ドラマチック

「大量絶滅の謎~恐竜はなぜ滅びたのか~」

 放送局:NHKEテレ 放送日2015年1月24日

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