箸休め 古代の虫はとっても巨大! ①げんしのちからだ! メガネウラ!

 ※文末に今回のまとめを掲載しています。

  お時間のない方は、一番下まで画面をスクロールさせて下さい。


 ◇前説(飛ばして頂いても大丈夫です)


『JCファーブルの空想特撮昆虫記』で紹介した通り、大昔の地球には巨大な昆虫が棲息していました。


「虫が一寸とは限らない!」シリーズで語ったように、現代にも巨大な昆虫は存在します。


 確かに、60㌢オーバーのナナフシや10㌢近いバッタは、化け物のようです。


 しかし太古の巨大昆虫たちが見たら、小さいと思うかも知れません。


 少なくとも、現代の昆虫が狩られる側になるのは間違いないでしょう。

 うかうかしていたら、人間も食べられてしまうかも知れません。


 太古の「巨大」と現代の「巨大」とでは、全くスケールが違います。

 かつての地球に存在していたのは、正真正銘のモンスターたちです。


 ◇人気者のメガネウラ


 代表例が、『JCファーブル』でも紹介したメガネウラでしょう。 


 彼等は人気の高い古生物で、様々なキャラクターに影響を与えています。


 ポケモンに登場するメガヤンマは、明らかにメガネウラがモチーフです。

 またゴジラと戦ったメガギラスやメガニューラも、メガネウラから着想を得ています。


 ◇大きいけど、空を飛ぶのは得意!


 メガネウラは巨大なトンボで、石炭紀せきたんき(約3億5900万年前から約2億9900万年前)後期こうきに棲息していました。


 見た目は現在のトンボと大差ありませんが、はねを開いた時の大きさは70㌢にもなります。


 それほどの大きさにもかかわらず、彼等はちゃんと飛ぶことが出来ました。


 しかも四枚のはねを別々に動かすことが可能で、かなり小回りがきいたようです。

 スピードも速く、時速60㌔以上で飛んでいたと言います。


 ただ現在のトンボと違って、はねを畳むことは出来ませんでした。


 ◇はねを畳めない虫たち――旧翅節きゅうしせつ――


 厳密に言うと、現在のトンボもはねを畳むことは出来ません。

 そのため、同じ特徴を持つカゲロウもくと共に、「旧翅節きゅうしせつ」と言うグループに分類されています。


 現在見られる(絶滅していない)昆虫の大半は、はねを畳むことが可能です。

 新しい(後に出現した)のも彼等のほうで、「新翅節しんしせつ」と呼ばれています。


 一方、旧翅節きゅうしせつは少数派です。

 昆虫には28個のグループがありますが、該当するのはカゲロウもくとトンボもくだけです。


 しかし太古の地球には、同じような特徴を持つ昆虫が他にも存在しました。


 メガネウラもその一つですが、彼等とトンボには大きな違いがあります。


 トンボはハチやハエのように、「背中ではねを重ねること」が出来ません。

 ただし、「はねを閉じ、背中に立てること」は可能です。

 実際、はねをヨットの帆のようにし、草木にまっている姿は珍しくありません。


 対してメガネウラは、はねを背中に立てることさえ出来ませんでした。

 どこかにまる時も、はねを開きっぱなしだったと考えられています。


 ◇トンボそっくりだけど、『トンボもく』じゃない!?


 また彼等は「トンボもく」ではなく、「オオトンボもく」(げんトンボもく)にぞくしています。


 オオトンボもくは現在までに、約40種程度発見されています。

 ただし、絶滅してしまったグループで、現代人が見ることは不可能です。


 姿が似ていることからも分かる通り、オオトンボもくはトンボもくに近いグループです。

 そのため、メガネウラを「トンボの仲間」と形容しても、間違いとは言えません。


 ◇大きくないメガネウラもいた!?


 2020年現在、空を飛ぶ昆虫で、メガネウラ以上に大きいものは発見されていません。

 と言うか、メガネウラは今まで発見された中で、最も大きい昆虫です。


 ただしメガネウラの全てが、ここまで大きかったわけではありません。


 彼等にはいくつか種類があり、小型のものも存在します。

 イメージとは大分異なりますが、現在のトンボと同じサイズの「メガネウラ」も発見されています。


 ◇メガネウラは優秀なハンター!


 現代のトンボは肉食で、ハエやカなどを捕食します。

 メガネウラも同様で、他の生き物を襲っていたと考えられています。


 現代のトンボと同じく、彼等は大きな複眼を持っていました。

 当然、非常に目がよく、視覚に頼って獲物を探していたと見られています。


 メガネウラは大食漢で、30分に一度は自分と同じ重さの獲物を食べていました。


 彼等のあしには物々しいトゲがあり、しっかりと獲物を捕らえることが可能です。

 また現代のトンボと同じく、強い顎を持ち、獲物を噛み砕くことが出来ました。


 出来るなら狩りの様子を見てみたいですが、彼等ははるか昔に絶滅しています。

 今となっては、飛ぶ姿も狩りも見ることは出来ません。


 ◇最初の化石はフランスで発見された


 しかしメガネウラの化石なら、現代でも目にすることが可能です。


 最初の化石は、1880年にフランスのコマントリーで発見されました。

 見付かった場所は炭鉱で、発見者は石炭を発掘中の人々でした。


 メガネウラが生きていた頃、コマントリー一帯は沼地でした。

 現代のトンボは水辺で暮らしていますが、メガネウラも同じだったようです。


 コマントリーでは、他にも巨大な昆虫の化石が発見されています。

 大食いのメガネウラでも、エサに困ることはなかったでしょう。


 ◇エサになる昆虫も大きい!


 獲物の一つが、パレオディクティオプテラです。


 彼等はカゲロウに近い昆虫で、「ムカシアミバネもく」とも呼ばれます。

 やはり旧翅節きゅうしせつの一員で、現在までに100種ほど発見されています。

 もっとも、既に絶滅してしまっているため、化石でしか見ることが出来ません。


 彼等はメガネウラばりに大きく、はねを広げると40㌢にもなります。

 現在のカゲロウと違い、はねの数は六枚でしたが、ちゃんと飛ぶことが出来ました。


 始めて空を飛んだ昆虫にはいくつか候補があるのですが、彼等もその内の一つです。


 巨大な獲物を捕らえるためには、捕食者自身も大きくなる必要があります。


 もちろん、獲物のほうも黙って食べられているわけではありません。

 捕食者に対抗するため、どんどん大きくなっていきます。


 石炭紀せきたんきの昆虫が巨大化した背景には、こういった生存競争があったのかも知れません。


 ◇現代の昆虫はなぜ小さいのか?


 現代でも昆虫たちは、熾烈な生存競争をくり広げています。


 しかし不思議なことに、メガネウラのように巨大な昆虫は存在しません。


 長くなったので、今回はここまで。


 次回は現在の地球に、巨大な昆虫が存在しない理由に迫りたいと思います。


 ◇今回のまとめ


 ☆石炭紀せきたんき後期に棲息していたメガネウラは、はねを開くと70㌢にもなる。現在までに見付かっている昆虫の中で、最も大きい。ただし、種類によっては現代のトンボくらいだった。


 ☆メガネウラの見た目は、今のトンボとほぼ同じ。ただし、はねを閉じ、背中に立てることは出来ない。反面、飛行速度は速く、時速60㌔以上で飛んでいた。


 ☆はねを畳めない(背中ではねを重ねられない)トンボもくやカゲロウもくは、「旧翅節きゅうしせつ」と呼ばれる。


 ☆はねを畳める昆虫は、「新翅節しんしせつ」と呼ばれる。現代の昆虫は、ほとんど新翅節しんしせつ


 ☆メガネウラは「トンボもく」ではなく、オオトンボもくげんトンボもく)の昆虫。


 ☆メガネウラは非常に目がよく、視覚に頼って獲物を探していた。また大食いで、30分に一度は自分と同じ大きさの獲物を食べていた。


 ☆メガネウラの化石が最初に見付かったのは、1880年。発見された場所は、フランスのコマントリーにある炭鉱。


 ☆石炭紀せきたんき後期のヨーロッパには、パレオディクティオプテラと言う昆虫も棲息していた。


 ☆パレオディクティオプテラはカゲロウに近い昆虫で、はねを開くと40㌢にもなる。


 ☆パレオディクティオプテラはメガネウラの獲物だった。


 ◇参考資料


 徹底図解 昆虫の世界

 岡島秀治監修 (株)新星出版社刊


 オールカラー完全復元 絶滅したふしぎな巨大生物

 川崎悟司著 (株)PHP研究所刊


 ならべてくらべる動物進化図鑑

 川崎悟司著 (株)ブックマン社刊


 地球ドラマチック

 「巨大昆虫はなぜ絶滅したのか」

 放送局:NHKEテレ 放送日:2016年3月12日

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