約100回記念特別企画 マイナー昆虫決定戦! ⑥日本にいない昆虫は2種類だけ

 

 全28種類の昆虫(もく)を、あますことなく解説している今回のシリーズ。

 前回に引き続き、今回も知名度がB妙なBクラスを紹介します。

 

 ◇ルール


 ①まず各グループをABCの三つに分け、Cクラス以外をふるい落とす。

 

 ②Cクラス内で決勝を行い、最もマイナーなグループを決定する。


 ※クラス分けの基準は、以下の通りです。


 Aクラス:昆虫に興味のない方でも知っているグループ。


 Bクラス:昆虫に多少興味のある方や、特定の業界には知られているグループ。


 Cクラス:かなりの昆虫マニアしか知らないグループ。


 ※カマアシムシもく、トビムシもく、コムシもくも、広い意味では「昆虫」です。

  ただし他の昆虫とはちょっと違うため、今回は除外します


 ◇特別ルール


 グループ自体は無名でも、有名な昆虫が含まれる場合は、ワンランクアップとします。


 例:「コウチュウもく」と言うグループが無名でも、「カブトムシ」が超有名な場合。

 →本来はCクラス相当でも、Bクラスになる。


 ※最終的には作者の独断と偏見で決まります(笑)





 ☆ネジレバネもく撚翅目ねんしもく) Strepsiptera


 総数:約600種。


 変態:完全かんぜん変態へんたい(成虫になる際、サナギになる)。


 代表的な昆虫:ネジレバネ。


 関連シリーズ:なし。


 解説:恐らく、昆虫界で一番ミステリアスなグループ。


 ・こことハエもくは某財団が収容するべきだと思う。


 ・色々と奇妙な生態を持つため、意外と知名度は高い。


 ・コウチュウもくに近いとされているが、異論もある。


 ・他の昆虫に寄生するグループで、非常に小さい。


 ・最大の種でも、5㍉程度。


 ・ハチもく、バッタもく、カメムシもく、カマキリもくと、宿主になる昆虫は多い。


 ・寄生する相手は、種類によって違う。

  またオスとメスで、寄生する昆虫が違う場合もある。


 ・割と寄生している確率が高いそうなので、探してみるといいかも。


 ・最大の特徴は、オスとメスの姿が全く違うこと。


 ◇オス


 ・成虫になると、宿主から離れる。


 ・見た目は少しハエに似ている。

  小さな複眼を持ち、複雑な形の触角も生えている。


 ・膜状のはねを持ち、自由に飛び回る。


 ・後ろのはねは扇形で、結構大きい。

  反面、前のはねは退化し、棒状の平均根へいきんこんになっている(ハエと逆)。


 ・はねに脈がほとんどなく、セロファン(またはビニール)のような印象を与える。


 ・口が退化しているため、エサを食べることが出来ない。


 ・寿命が短く、数時間で死んでしまう。


 ◇メス


 ・オスより大きいが、複眼もあしも顎も触角もはねもない。卵巣らんそうすらない。


 ・見た目は完全にウジで、一生宿主から離れない。


 ・宿主の身体から、頭だけ出していることが多い。


 ・メスにあしや複眼がある種類も存在するが、日本には棲息していない。


 ・一度に産む卵の数が、恐ろしく多い。最低でも1000個は産む。75万個と言う記録もある。


 ・卵は母親の胎内で孵化し、頭と腹の境目から外に出る。


 ・ただ幼虫は自力で宿主を探さなければいけないため、生存率は高くない。


 ◇幼虫


 ・宿主に寄生する前と寄生した後で、大きく姿を変える。


 ・最初はシミに似た姿で、あしがある。


 ・この状態の時は活発に動き回り、寄生する相手を探す。

  そして宿主になる昆虫を見付けると、相手の皮膚を食い破り、体内に寄生する。


 ・その後、宿主で体内で脱皮し、今度はウジのような姿に変わる。

  こちらにはあしがなく、ほとんど動かない。


 ・以降、オスは成虫になるまで、宿主の外に出ることはない。

  メスに至っては、一生宿主の体内で生活する。


 ・こうやって完全かんぜん変態へんたいの昆虫が、幼虫時代に大きく姿を変えることを「過変態かへんたい」と呼ぶ。


 ・他の生きものに寄生する昆虫は、過変態かへんたいを行うことが多い。


 ・コウチュウもくのツチハンミョウや、アミメカゲロウもくのカマキリモドキが代表例。


 ・大抵の場合、活発に動ける状態から、運動能力の低い状態になる。





 ☆イシノミ目(古顎目こがくもく) Archaeognatha


 総数:約510種。


 変態:しない。ただし脱皮をすることで、大きくなる。


 代表的な昆虫:イシノミ。


 関連シリーズ:なし。


 解説:シミと同じで、はねを持たない原始的な昆虫。


 ・以前はシミもくに含まれていたが、現在は別のグループに分けられている。


 ・見た目はシミに似ているが、イシノミのほうが大きい。


 ・また平べったいシミに対し、こちらは円筒形えんとうけいの身体を持つ。

  昆虫と言うより、小さなエビに見える。


 ・更にシミは眼が小さいが、イシノミは大きな複眼を持つ。


 ・最大の違いは、顎の構造。


 ・シミや他の昆虫は、頭と大顎が二箇所(前と後ろ)の関節で繋がっている。


 ・しかしイシノミもくだけは例外で、頭と大顎を繋ぐ関節が一箇所(後ろ)しかない。


 ・そのため、イシノミもくだけが「単丘亜綱たんきゅうあこう」(※)と言うグループに分類されている。

(※古顎亜綱こがくあこうと呼ばれることもあります)


 ・ちなみにシミもくを含む他の昆虫は、「双丘亜綱そうきゅうあこう」と言うグループ。


 ・「古顎目こがくもく」と言う名前からも分かる通り、新しいのは顎の関節が二箇所あるグループのほう。

  関節が一箇所のグループより可動域かどういきは狭いが、正確に噛むことが出来る。


 ・つまり、イシノミもくはシミもくよりも原始的な昆虫。


 ・と言うか、現在見られる(絶滅していない)昆虫の中で、一番古い。

  実際、昆虫の祖先に当たる虫から、一番先に枝分かれしたと考えられている。


 ・シミと同じく、身体はリンプンに覆われている。


 ・ただシミのリンプンは白いが、イシノミのリンプンは濃い色。


 ・シミもそうだったが、腹部に「腹肢ふくし」と言う突起が生えている。

  腹肢ふくしは木や岩肌に登った時、身体を支える役目を持つ。


 ・触角は長く、尾(腹部の端)にはアンテナ状の毛が三本生えている。


 ・シミほど動きは速くない。

  反面、尾を地面に叩き付け、素早くジャンプすることが出来る。


 ・湿気の多い場所が好きで、木の幹や岩陰いわかげ、落ち葉の下などに棲んでいる。

  複数のイシノミが、一つの場所に集まっていることも多い。


 ・エサは地衣類ちいるい(コケに似た菌類)や藻で、昆虫の死体を食べることもある。


 ・オスは交尾をせず、精液を付けた糸にメスを誘導する。

  メスは尾(腹部の端)にある産卵管さんらんかんで精液を吸収し、受精する。


 ・正直、Cクラスにするか迷ったグループ。


 ・ただ立ち位置が特殊(最も原始的。はねがない。唯一の単丘亜綱たんきゅうあこう)なので、そこそこ知名度はある。


 ・厳密にはC以上B未満ですが、今回はBクラスにさせて下さい。





 ☆ヘビトンボ目(広翅目こうしもく) Megaloptera


 総数:約350種。


 変態:完全かんぜん変態へんたい


 代表的な昆虫:ヘビトンボ、センブリ。


 関連シリーズ:なし。


 解説:特徴的な姿のおかげで、そこそこ知名度のあるグループ。


 ・ガランダー帝国ていこくに寝返り、十面鬼じゅうめんきと戦ったことは一部で有名。


 ・後述する幼虫のこともあり、Bクラスの中ではメジャーな存在。


 ・「トンボ」を名乗っているが、トンボもくとは全く違う昆虫。


 ・そもそもトンボもく不完全ふかんぜん変態へんたい(成虫になる際、サナギにならない)だが、こちらは完全かんぜん変態へんたい


 ・アミメカゲロウもくに近いグループで、身体の構造や見た目がよく似ている。

  「ヘビトンボ」として、アミメカゲロウもくに組み込まれることもある。


 ・「広翅目こうしもく」と言う名前からも分かる通り、膜状のはねは大きい。

  学名の「Megaloptera」も、「大きな翼」と言う意味。


 ・細長い身体やはねは柔らかいが、頭だけは硬い。


 ・また顎の力が非常に強く、人間の皮膚も食い破ってしまう。

  極端に顎が長い種類もいて、見た目がかなり物々しい。


 ・夜行性の昆虫で、昼間は水辺の石や木にまっている。


 ・センブリはヘビトンボによく似た昆虫だが、ずっと小さい。


 ・やはり水辺に棲む昆虫で、幼虫は水中で暮らしている。


 ◇幼虫


 ・エラがあり、水中で暮らしている。


 ・幼虫時代から顎の力は強く、積極的に他の昆虫を捕食する。


 ・ある程度育つと陸に上がり、サナギになる。


 ・サナギの状態で顎を動かすことが可能で、容赦なく噛み付く。


 ・串焼きにされ、「孫太郎虫まごたろうむし」と言う名前で売られている。


 ・「孫太郎虫まごたろうむし」には滋養強壮の効果があり、江戸時代に大流行した。


 ・また子供の夜泣きや、神経症にも効くと言われている。


 ・ただしあくまでも民間薬で、効果があると認められたわけではない。





 カカトアルキもく踵行目しょうこうもく) Mantophasmatodea


 総数:約21種。


 変態:不完全ふかんぜん変態へんたい(成虫になる際、サナギにならない。幼虫ががそのまま大きくなる)。


 代表的な昆虫:カカトアルキ。


 関連シリーズ:なし。


 解説:昆虫界のニューカマー。


 ・昆虫の中で最も新しく作られたグループで、2002年に認められた。


 ・全く新しいグループの昆虫が発見されたのは、約90年ぶり(絶滅したもくを除く)。


 ・そういったこともあり、知名度はそこそこ高い。


 ・少なくとも、「いらすとや」さんに絵がある昆虫はマイナーではない。


 ・アフリカに棲む昆虫で、日本では発見されていない。


 ・ちなみに日本で発見されていないのは、カカトアルキもくともう一つ(まだ出てない)だけ。


 ・2020年現在、最も見付かっている場所が少ないグループ。


 ・現在見られる(絶滅していない)昆虫では、総数(種類)が最も少ない。


 ・まだ出ていないグループに近く、一緒にされることがある。


 ・別のグループと一緒にされる場合は、「非翅目ひしもく」(Notoptera)と呼ばれる。

  この場合、「カカトアルキもく」ではなく、一つ下の「カカトアルキ亜目あもく」になる。


 ・顔はカマキリ、身体はナナフシに似た奇妙な昆虫。


 ・学名の「Mantophasmatodea」も、カマキリもく(Mantodea)とナナフシもく(Phasmatodea)に由来する。


 ・ただカマキリやナナフシにははねがあるが、カカトアルキにはない。


 ・また割と寸胴ずんどうな昆虫だが、ナナフシほど細くはない。


 ・グループとして認められたのは最近だが、実は古い昆虫。


 ・その証拠に「非翅目ひしもく」に分類されるもう一つのグループも、昆虫の中では原始的な存在。


 ・あしの先が上に向いていて、「かかとで歩いて」いるように見える。


 ・「踵行目しょうこうもく」と言う名前も、「かかと」で「行く」ことに由来する。


 ・肉食の昆虫で、前脚まえあしを使って他の昆虫を捕らえる。


 ・求愛の際、腹部で地面や木を叩く習性を持つ。


 ・現在見られる昆虫の中で、学名(Mantophasmatodea)が一番長い。


 ・非翅目ひしもくに分類されるもう一つのグループも、かなり学名が長い。



 長くなった(本当に長かった……)ので、今回はここまで。


 次回はいよいよCクラス。

 誰も知らない虫たちが激戦をくり広げます!


 どうかお楽しみに!


 ◇参考資料


 徹底図解 昆虫の世界

 岡島秀治監修 (株)新星出版社刊

 

 昆虫の誕生 一千万種への進化と分化

 石川良輔著 (株)中央公論社刊


 ※その他、過去に作者自身の書いたものを参考にしています。

  当時参考にした資料は、各回をご覧下さい。 

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