第257話「人物紹介(第三部、四章終了時点)」

 ハダシュトの街の総督 マルカス・ハダシュト 五十四歳


 カスティリア王国からは男爵の地位を、アナトリア帝国からは太守パシャの地位を与えられているオジサン。

 二つの国家に臣従して国を保っているのは、国境を接する地方貴族にはよくあるケースで、ハダシュト提督は、シレジエ王国からも男爵の地位をありがたくいただいた。

 二つの国家に臣従を示すためか、頭に白いターバンを巻いてカスティリア王国貴族の洋服に身を包んでいる。

 付近の海賊にもまったく刃が立たずやられるままになってる弱い総督だが、常に友好的で強い相手には絶対逆らおうとしない靭やかさを持っている。

 マルカス総督の街では、ユーラ大陸でも唯一、人族と魔族が別け隔てなく住んでいて交易関係もある。

 砂漠地帯に住む魔族である爬虫類人レプティリアンとの友好的な関係を築いているマルカス提督は、意外にやり手かもしれない。


 爬虫類人レプティリアンのシェバ族 族長 デ・シェバ・デバ 六十歳


 長く白い顎髭の生えたシェバ族の長老。

 爬虫類人レプティリアンの男は、あまり外見で歳が分からないが、デ族長は一目で老人と分かるほどシワを重ねている。

 マスケット銃の弾さえ撥ね退ける頑強な身体を持つ反面、四十歳程度の寿命しかない爬虫類人レプティリアンにあって、デ族長は無類の長命といえる。

 一番の古老ということもあって、デ族長はシェバ族の民から深く尊敬されており、その権力は絶大である。

 歳を取った分だけ知識も豊富で、カタコトながら人族の言葉も話せる。

 外の優れた血を取り入れることで、爬虫類人レプティリアンの進化の可能性を探っており、タケルにも子作りさせようと孫娘のララちゃんを預ける。


 半爬虫類人ハーフレプティリアンの少女 ラ・シェバ・デバ(ララちゃん) 十三歳


 族長の孫娘。爬虫類人レプティリアンの他に人間や他の魔族など、雑多な血が混じっている。

 灰色の肌、上半身は人間の少女のもので、手足としっぽがトカゲ型爬虫類人レプティリアンの特徴がでている。

 よく見ると、瞳孔が縦に割れていたり、ハーフらしい特徴がある。

 普段は、布で出来た粗末な貫頭衣を着ている。

 ちなみに本名はラだが、タケルはララと呼んでいる。シェバ族は、名前に深い意味を持たせないのであまり気にしていないようだ。

 ハーフであることもあり外の世界には興味を持っていた。

 本来、シェバ族は雄以外を外に出さないので、タケルにくっついて外に出られたことをラッキーだと思っている。


 幼女教皇 アナスタシア二世 八歳


 他者と心を同調させることで相手の心を読む憑依体質の巫女。

 アーサマが降臨するのにもこの上ない体質であり、八歳にしてアーサマ教会最高位の教皇となる。

 教皇として仰々しい言葉遣いをしているが、中身は普通の幼女である。


 ランゴ・ランドの女王 ダレダ・ランゴ・ランド 三十三歳


 アフリ大陸の北西。大砂漠の沖合に浮かぶランゴ島の女王。

 青いセミロングの髪から、黒褐色の二本の竜角が突き出している。手足の先が太く鋭い爪と青い鱗が付いていて、ドラゴンの青い翼と長い尻尾が付いている以外は、大柄な人間の女と変わらない。

 対照的に肌は透き通るように白く、ゆったりとした豊満な身体つきで、胸や腰を白い木綿のローブで覆っている。


 アンティルの街の門番 ランツとレントン


 歳若い兵士見習いランツで、年配の熟練兵士長がレントンである。

 ララちゃんを連れ歩いていたタケルを魔国の騎士だと勘違いする。

 ランツは、バルバリッチャのグリフォンにやられて悲惨な死を遂げてしまう。レントンは重傷で済んだ模様。


 アビスパニアの将軍兼大臣兼……まあその他いろいろ 忠義の騎士長 バーランド・ハーラント 四十八歳


 元々は黒茶色の髪に、白髪が増えてロマンスグレーになっている。

 口元の無精髭も精悍な騎士。シワが深く白髪が多いのは苦労が絶えないからで、見た目ほど年寄りではない。

 騎士としては熟練の戦闘力を持っている。街の治安を維持する指導力もなかなかのもので、度重なる敗戦を生き抜いた知勇を兼ね備えた英雄。

 滅びかけているアビスパニアを、たった一人で支えている。


 乳児女王 アモレット・アビスパニア・リリエラ ゼロ歳


 千二百年前にユーラ大陸に勃興し、千年前に滅亡した神聖リリエラ女王国の末裔。アビスパニア女王国、第二十七代の女王。

 その証として、生まれながらにアーサマの白銀の羽根を持つ。

 ゼロ歳児にして、足腰も立たぬうちに両親を失い、国の女王として立つことになったのは悲劇的といえる。


 アモレット女王の乳母 プティング・ハーラント 二十四歳


 最初女王と間違えられた。

 実はバーランドの奥さんだったりする。乳母ができるので、二人の間には子供もいる。

 若いカミさんがいるバーランドは、意外にお盛んである。

 ちなみにどちらかといえば惚れているのはバーランドのほうらしく、かかあ天下でバーランド騎士長は嫁の言うことにあまり逆らえない。

 忠義一本槍で理想主義者のバーランドに比べると、妻のプティングは現実的な方面で聡明な女性でもある。


 六大魔国 リンモン国大将軍 バルバリッチャ 三十七歳


 大魔王より、グリフォン部隊を授けされたリンモン国の将軍。黒豹の毛皮を頭から被り、ラメラーアーマーに身を固めた勇猛な武将である。

 いかにもな感じで高笑いを上げて余裕綽々で登場したので、案の定だいたい登場から三分で狙撃されて死亡。

 多分バルバリッチャとしては、グリフォンで敵がビビってそのまま降伏してくれたら楽だからそうしたとかいろいろ理由はあるのだろうが、戦場で余裕ぶっこいてると、ろくなことがない。

 その場で撤退しておけば傷は浅かったのだが、副将格のカニャッツォまで同じことを繰り返して無駄死にしたので、アンティル島への侵攻作戦は後々まで指揮系統に大きな打撃を受けることとなる。

 ここらへん、魔国は勢いがあるのはいいのだが、急造軍の欠点が出てるような気がする。


 六大魔国 タンムズ国海将 ダモンズ・コーラング 三十五歳


 頭に二本、立派な水牛の角を生やした魔軍の海将。

 大魔王イフリールより、大海竜を使役できる『赤竜の鱗』と五百隻もの大船団を託されるが、タケルに敗北する。

 陸将のバルバリッチャに比べると慎重派で、目端が利く現実主義者であり、六大魔国の方針にも疑問を持っていたこともあって、人族の血が混じった家族を救ってくれると約束したタケルに恭順する。

 祖先は、タンムズ一帯の海を支配した『海皇コーラング』で、強い力を引き継ぐ貴種魔族である。



 バーランドの実子 バーモンド・バーランド 零歳


 母親のプティング譲りの栗毛色の柔らかい髪の赤子。

 ちなみに男の子である。


 オジサマ好きの竜乙女ドラゴンメイド アサッテ 十八歳


 竜乙女ドラゴンメイドの村一番にお淑やかで夢見がちで、ちょっと天然が入った気立ての良い娘さん(アレ談)

 ドレイク提督を狙い続けて、ついにアバーナの港で(性的に)射止める。

 ある種の呪いで、今のような半竜神ドラゴンハーフの姿であり続ける彼女らの個体の見分けは難しいが、よくよく見るとアサッテは他の竜乙女ドラゴンメイドよりは、青い髪が他の娘より長く、小柄で翼や爪も小さい。

 島では、編み物などを生業としている女性的なタイプである。


シレジエ近衛騎士 ベレニス 二十四歳


 褐色の肌に、黒妖精族ドワーフの長い耳。

 庶民の出の娘ながら、王国兵士から騎士の従卒、正騎士へと登り詰めた有能。

 戦時では、分隊長としての経験もある。

 黒妖精族ドワーフが王国兵士、ましてや騎士になるというのはとても珍しいことである。彼女は、ちょっと変わっているらしい。

 思い切りの良さが特徴で、敵の騎士を多数打ち破るなど殊勲を立てている。

 やや軽率なところがあり、シモネタ好きで下品なのが玉に瑕である。ちなみに筋肉フェチでもある。


シレジエ近衛騎士 クレマンティーヌ・マンチーヌ 十八歳


 金髪縦ロール。お淑やかに見えるが、実は怪力。たゆんたゆんしてる肉付きの良い肢体を持つ。

 ヴィエンヌの街を治める、マンチーヌ家の子爵令嬢、家督を継げないため女性騎士の道を選んだ。

 騎士団一の怪力で騎士としても高い志操と能力を持つが、性格が引っ込み思案なためイマイチ活躍できていない。

 お父様、お父様と言うのが口癖。どうも可愛がられすぎて、ファザコンの毛があるらしい。

 戦時では副隊長としての経験もある。


 ちなみにクレマンティーヌ家の開祖は、聖槍せいそうのロドリゲスという英雄。

 父親はロドリコ・ヴィエンヌ・マンチーヌである。


 バアル州の総督 猛虎将軍 アバドーン・バアル・ドーン 三十九歳


 三大魔国の一つ、ニスロク国の初代魔王に使えた六十六魔貴族の一つドーン家の当主。

 ドーン家は、純粋なる虎型魔族の家系であり。

 大魔王となったニスロク国の王子イフリールに仕えたアバドーンは、猛虎将軍の異名を持つにいたる。

 五千騎と魔獣を引き連れて、見事辺境の地バアル州を征服して総督まで成り上がったが、規格外の敵、竜乙女ドラゴンメイドに襲われて異国の地の土となる。享年三十九歳。


 アバドーンの腹心 カワーン 三十五歳


 副総督の地位にあったが、即座に竜乙女ドラゴンメイドに殺される。

 この辺りの人たちは、本当に運が悪いだけなので可哀想。


 オルランドの砦駐留軍、守将 ゴモリー 三十二歳。


 ニスロク国出身。魔貴族でもない一般兵卒からの叩き上げで成り上がりである。

 リンモンの戦いの活躍で英雄と呼ばれ、五千人もの兵を統率する陸将となり、イースター半島一帯の守護を一任される。

 長いくちばしを持った鷲型魔族。

 的確な将としての判断力を買われて、大魔王からブルードラゴンを授けられたが、その成り上がりの半生は竜殺しの英雄によって絶たれることとなった。


 リンモン州総督 魔軍参謀総長 サルディバル・ゴメス 四十五歳


 ゴリラ型魔族。

 一見すると粗野なゴリ男だが、その実は慎重で臆病な智謀の将である。

 六十六魔貴族筆頭格の家柄。魔軍参謀総長という役職が示すとおり、形式上は魔軍ナンバー2の実力を持つ。強大な魔力を有し、その魔力はオリハルコンの剣を断ち切るほど。

 リンモン州という治めやすい領地に赴任してきて民情を安定させた途端に、アビスパニア解放軍の反乱に遭遇する。


 プレシディオ騎士団長 ギボン・クルパン 三十歳


 牛角うしづのの兜をかぶった黒騎士。

 愚直に上司の指示を聞く性質を好かれて、総督サルディバルに新生プレシディオ騎士団団長に抜擢される。

 頭が固く武断派の男だが、命令であればそれを曲げる程度の柔軟性はある。


 魔獣使い ハイドラ 二十歳


 青い肌の蛇型魔族の血が混じった若い女。

 肌もあらわで際どいボンテージアーマーに身を包んだ、美貌の女である。魔獣使いらしく、手には使役するための杖を持っている。

 出世の糸口を掴みたいと頑張る。


 騎士副団長 ビハーン 四十二歳


 実直な男。

 ギボンの副官であったが、そのままスライド式に騎士団長に。やや能力不足。

 総督の戦死後、バル騎士隊長達に担がれて、総督代理となるが指揮系統の混乱を招いてしまう。


 三魔将を務める魔貴族。騎士隊長 デリシオ・イルマン 二十一歳


 黒いマントを羽織ったように見えるデリシオは、コウモリ型魔族であり重い鎧を付けてなお、短時間なら飛ぶことも出来る能力を持つ。

 六十六魔貴が一つ、イルマン家の若き当主。初代魔王に仕えた三魔将の一人『漆黒の闇』の異名を持つイルマン家の血筋で、高貴なる吸血コウモリ型魔族である。

 騎士隊長を務める野心家であり、文官出身である総督サルディバルをどこか低く見ている。


 総督の戦死後、街を守れという命令を拡大解釈して総督代理として州都プレシディオを収めようとするが、デリシオの人望のなさから外のビハーン達を取りまとめることに失敗。

 結果としてビハーンとデリシオの反目が、指揮系統を混乱させて州都は陥落させることとなった。


 騎士隊長 バル 二十三歳


 平民出身の野心家。

 ビハーンを担いで成り上がろうとするが失敗。

 州都の正門が打ち破られるときに、隊長クラスを狙撃していたタケルに頭を撃ち抜かれて戦死した。


 魔王宮侍従長 デモゴルゴーン 六十六歳


 先代より大魔王に侍従長として仕える、白山羊型魔族の長い白髭の老魔人。

 温厚で人の意見をよく聞く性格が災いして、下と上の板挟みになっていつも苦労している。

 時折ストレスに耐え切れず、草を食んで「メェ~」と鳴いている。

 魔軍の地位としてはさほど高位ではないが、将軍以下の地位の者が大魔王に謁見するためには、宰相を通すか侍従長であるデモゴルゴーン老に頼むしかない。

 おかげで陳情がこの老人に集中するので、心労で年齢以上に老いている。


 対聖母軍討伐軍 大将軍 アズラーン・サルズバーン 三十六歳


 六十六魔貴族のサルズバーン家の当主。

 サルズバーン家は、だいぶ数が減り、各地に散った魔貴族の血筋の中でも名門中の名門である。

 ニクロム国に残っていた四将軍麾下一万の軍勢を率いて、突如巻き起こった聖母軍の反乱を鎮圧するために向かい、そして討ち果たされた。


 魔軍四将軍 知覚のハボリエル 剛のカザンジュ 知恵のムルムーン 魔獣のキュバーン


 本来は魔軍八将軍だったのが、ここまでの戦いで四人にまで減っている。


 タケルの輸送・伝令役 飛竜騎士 


 魔獣使いハイドラの捕獲など、要所で活躍しているがいまだ名無しである。

 壊滅した旧ゲルマニア帝国飛竜騎士団の数少ない生き残りであり、その後タケルに仕えてシレジエ王国の保護下で飛竜騎士団の復権をはかるなど有能な騎士なのだが、物語的には端役である。

 いつか名前を呼んでもらえる時もくるかも、この人物紹介に出てくる順番も若干遅いような気もする。

 タケルに命じられ、伝令役として聖母軍を率いたリアの元へと行くのだが……。


 竜乙女ドラゴンメイド アンナとドンナ


 竜乙女の姉妹。

 男日照りの竜乙女の島で男を見つけられずに悩んでいたところ、アビス大陸への遠征に誘われてダレダ女王に付いてきた。

 かなり強引に男をめとろうとしているが、竜乙女の中では奥手のほうである。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る