第11話「未来と光輝」

 一時間後に私は作り終わり審査員に試食にするために作ったお菓子を持っていった。女性の審査員が「それではお菓子を食べていきたいと思うのですがどちらからにしますか?」「私からよろしいでしょうか?私はプロです。後攻になると当主としての恥になりますので」





「では桃田さんの方からいただきましょう、見守さんはよろしいですか?」「はい私は先でも後でもどちらでも構いません」私が答えると審査員の前に桃田さんが作ったお菓子が置かれた。「ではお菓子の説明をお願いします」「はい仮名は「光輝」です」





「このお菓子のモチーフは花の「サザンクロス」をイメージしたお菓子で名の由来はイギリスの植物科学、ジェームズクロウさんが星座の南十字星似ていると思い付けたそうです星の形をしていることから流れ星に願えば願いが叶うと言い伝えられてるようにサザンクロスの花言葉は「願いを叶えて」と言われています」



「それではいただきましょう、」女性の審査員の言葉で一口食べる審査員達「「「!?」」」審査員が全員食べた瞬間驚いた顔をする「えっ何かあったの?」佐藤さんが不思議そうに審査員を見る「お気づきになりましたか?」「何これ?噛むことに味が変わっていく」





 女性の審査員が言うと男性審査員が「これは驚いたリンゴ、だけを使っていると思えば梨、柿、ブドウの味がする」男性審査員が「こんな和菓子食べたことない見事だ」もう一口食べる。「ありがとうございます」



 審査員が食べ終わった後「最後に私から一つ質問があるのですが聞いても?」「はい何でしょう?」「この和菓子をどんな思いで作ったのか教えてもらえませんか?」






「はい、私は子供の頃から和菓子が大好きで両親が和菓子を職人でお店は大きくはありませんでしたが両親の和菓子を食べたいと全国からお客様がいらしゃる姿を見て私はそんな両親が私の誇りでした」






 桃田さんは微笑みながら言う、「子供の頃から私も和菓子職人を目指すようになって高校卒業するとお店を始めてお客様に私の作った和菓子を食べてもらえるそれだけで幸せでしたですがそんな幸せの日々が突然奪われたのです、私は原因不明の味覚障害になりました」




「えっそれでは味覚を感じないんですか?」女性の審査員が「はい医者に診てもらいましたが治らないと言われました」「ならお菓子はどうやって作るのですか」女性の審査員が聞く「こんな味だったと記憶を頼りに作っています」





「味覚がなくてこの完成度は素晴らしい」男性審査員が言った後他の審査員が頷く「私がこのお菓子に込めた思いはこの勝負に勝ち私の願いを叶える、私はその想いで作りました」「桃田さんの気持ちは分かりました、次は見守さんのお菓子をいただきましょう」





 女性の審査員が言うと「はい」私は審査員の前にお菓子を置く「ではお菓子の説明を」「はい仮名は「未来」です、」「何とも美しいをしたお菓子なんでしょうもしかして和菓子を普段から作るのですか」男性の審査員に聞かれる





「はい趣味の一つです、独学で和菓子の作り方を勉強しました、」私が言うと審査員達は一口食べて「これはもしかして柚子が入っているのですか?」






「はい柚子の果実を入れました柚子にはリラックス効果がありそれ以外にも歯が痛い時、風邪を引いた時に良い薬になると言われています、そちらの男性のお客様お店にいらしゃった時から頬を押さえていたので歯を痛めていると思いました」私が手のひらで指した男性審査員が「確かにさっきよりも少し痛みが収まった気がする」




「それに女性のお客様は私が見たところ風邪引いているのではないかと思いました」「どうしてそう思ったんですか?」「お見かけしたところずっと鼻をすすっていましたしそれにハンカチで鼻を押さえていました」私は女性の審査員がが手に持っているハンカチを手のひら指した



「確かに風邪気味ですけど見ただけでよく分かりましたね」「ありがとうございます」「そして柚子にはリラックス効果があります」私はお菓子を手に取り桃田さんの前に置く「どうして私の前に?」「桃田さんにも食べてほしいから」




「ですが今の私には味覚がないので食べても意味はないと思います」「本当にそう思っているの?桃田さんは一体なんの為に和菓子職人になったの?」「私が和菓子職人になったのは私が作ったお菓子でお客様に喜んでもらう為に……」





「お客様に喜んでもらう為そのお菓子で人を殺そうとしている人が何を言っているの?」「貴女に何が分かるんですか?趣味でしか作ったことない貴女に一体何が分かるの?」「分かりたくないね自分の好きなもので人を殺そうとしている人の気持ちなんて」



「あの審査の最中なのですが……」男性審査員が言う「あのすいません私に時間をください」私が審査員に言うと女性の審査員が「構いませんよ、貴女の言いたいことを桃田さんに言ってください」「ありがとうございます」女性の審査員にお礼を言うと桃田さんに




「私は五年前にまだ職人になる前の貴女の作った和菓子を食べたことがあります、色んな辛い出来事があってその日は何もかも逃げ出した公園のベンチに座って居たらそんな時貴女に出会ったんです」「えっ」





「貴女が突然声を掛けてきて私の隣に座り和菓子を私に手渡したそして「何でそんな悲しい顔をしてるのか分かりませんが元気を出してください、今は辛くて悲しい出来事が続いてもきっと未来には良いことがあるかもしれない」微笑みながら私にそう言ったのです」





「どうしてあの時泣いたんですか?」桃田さんは思い出したかのように私に聞く「その時はどうして泣いたかなんて分からなかったけど今は分かる、貴女のお菓子を食べた時この人は和菓子を心から好きなんだと思った、和菓子の味はとても繊細で優しい味わいで私の好みの味だった」



「……」「でも私が一番感動したのは和菓子に対する愛とその想いに感動してそして羨ましいとも思った」「羨ましい?」






「私には自分の心から好きだと思える物、何があってもやりたいと思える物がないから、何もかもが嫌になっていた私にとっては一番の美しいと思える出来事だった、だからもうやめて、貴女の一番の誇っている和菓子で人を殺めようとするのは」




「でもこうでもしないと私は一生味覚がないままだから」「それは人を殺してまで得なきゃいけないものなの?」「!?」





「貴女は人を笑顔にする為に和菓子職人になったんでしょ?貴女の和菓子は人を殺める為に作るんじゃない、この勝負に勝って願いを叶えったって貴女は平然とまたお菓子を作り続ける事ができるの?」「私だってできればこんなことはしたくないけどやるしか他に方法はないから」



「味覚、味覚って言ってるけどそもそも和菓子を作るのに味覚が絶対になきゃダメなの?」「それは……」




「ちゃんと作れてるじゃん記憶を頼りに前と同じように味を再現できてる、お客様に喜んでもらえるお菓子をちゃんと作れてる味覚がなくたって、貴女には和菓子を作る為の知識と才能そして愛があるだから、本当に和菓子を心から愛してるなら、自分から汚しちゃ駄目でしょ?」





「何で貴女が泣くんですか?」〈私が泣いてる?〉自分の頬を触ると確かに涙が流れていた。「とにかくそうゆことだから」私が言うと桃田さんは微笑んだ後に「貴女っておかしな人ですね」そう言い未来を食べると「あれ?味覚が戻ってる?ちゃんと味を感じる」




「えっ本当に?良かったじゃん」そんな私の姿を見て驚いた後に「本当におかしな人で不思議な人、負けを認めます、私の負けです見守周君は解放します」目を瞑り数秒して目を開けると「解放しました、念の為の病院に連れていった方が良いですよ」




「大丈夫信頼できる親友に周の事を託したから」佐藤さんのスマホがなって「もしもしめぐみちゃんえっ周君が床から出てきた?周君を病院に連れていって」私を見ながら言う。「早くここから逃げた方がいい」私が桃田さんに言う「えっ」





「桃田さんさっき負けを認めたでしょ?このゲームに参加して負けを認めたら失格になって安藤の側近が殺しにやって来るだからすぐにここを……」ドアがガラっと開いて「そうはいきません、俺それは俺の仕事ですから」「黒岩!」






 私は桃田さんの前に立つと佐藤さんと翼君が私の元に来て「香織、光と桃田椿を守るぞ」「うん」「また貴女ですか?面倒な人が居るもんですね」佐藤さんを見て黒岩が言う「悪いけど私は刑事だ、市民の安全と安心を守るのが私の仕事だから今日こそ逮捕する黒岩!」





「仕方ありません、面倒ですが仕事ですから」佐藤さん黒岩が格闘を始める殺し屋相手に互角に戦う佐藤さん私はその姿を見て「桃田さん、ゲームに参加したのはいつ?」「昨日です」





「ならまだ間に合う、私が今から言うことをよく聞いて時間が戻ったら何があってもゲームに参加しないで、桃田さんは何があってもお客様に喜んでもらえる和菓子を作り続けて」「見守さん一体何を……」私は事前に持っていたナイフを取り出して首を切った。私は四度目の人生を終えた。





 目を覚ましたら十三日に戻って居て周りを見渡したら前に住んでいた私の部屋に居た「周?周!」私は廊下に出て出ると「周!周どこに居るの?」リビングのドアが開いて「光?どうしたの?そんな大きな声出して」「周……」私は周を抱き締める。






「周、会いたかった……」「光?何かあったの?」私は周に説明をして佐藤さんに電話して荷物を置いた後お菓子を作り手紙を書いた後に私は佐藤さんに周を任せて桃田さんがやってる「鈴蘭」に行った「いらしゃいませ」と高月さんの声が聞こえる。





「すいません、全種類一種類ずつください。」私は高月さんに言う。「かしこまりました、少々お待ちください」十分後「お待たせしました、こんなに沢山のお買い上げありがとうございます」私は二つの紙袋を受けとると





「そうだこれ私が作った和菓子なんですけどもしよろしければ皆さんで召し上がってください」私は「未来」の和菓子入った紙袋渡してお店を出る。五分後「お客様お待ちください」後ろを振り返ると桃田さんが居て「どうかしました?」私は何事もなかったように話しかける




「すいませんこんなことはいきなり言うのは失礼になるってことは承知の上で言います、昨日会いましたよね?私と和菓子対決をしましたよね?」私は「味覚はあるの?」「えっ味覚は一週間前までは本当に感じなかったんです貴女のお菓子を食べたら急に味覚が戻っていました」




「ならもうゲームに参加する必要はないね、またお店にお菓子を買いに行くよ、桃田さんこれからもずっと自分の信じる和菓子を作くり続けて」私はまた歩き始めた後ろから「ありがとう見守さん」と聞こえたような気がした。


























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