悪魔

 魔法陣というのは、案外自然に発生するらしい。

 それを知ったのは小学六年生の冬だった。

 図画工作の授業で誰かが彫刻に掘った幾何学模様から悪魔が現れたのだ。意味がわからないかも知れないが、そういうことがあったのだから仕方が無い。

 何でも、普段悪魔が出てこないのはそこにめぼしい魂がないからだそうで、条件を満たすと何でも無いようなものが魔法陣になるのだ、と悪魔を追い払った天使が言っていた。

 そして、めぼしい魂というのが僕の魂らしいのだ。なんでも悪魔ならのどから手が出るほど欲しいらしい。

 天使はできる限り対処する、と言っていたが、一度寝坊してきたので信用はしていない。名前がネムリエルだし。眠り得ちゃだめだろ、起きろ。

 ということで、自分なりに対処の仕方を考えた。

 名付けて悪魔バトルロワイアルである。

 やり方は簡単。幾何学模様の何かを集めて適当な呪文を唱えればいい。そうするだけで三分でクッキングよりもお手軽に悪魔が呼べる。

 そしてこう告げてやる。

「最後に生き残った悪魔には商品として僕の魂を得る権利を与える」

 商品は誤字ではない。やつらは契約という形で言質をとってくるから、賞品といってしまえば僕の死は確定だ。

 どうにも僕の魂は相当なものらしく、何の確認もなしに悪魔が争い始める。もちろん人里から離れてやっているから被害は心配いらない。

 アニメなんかよりも見応えのある戦闘が終わると、大抵最後にぼろぼろの悪魔が残る。そしてその悪魔が近づいてきたところに、天使お手製聖銀のナイフをぶすり。これで弱った悪魔は大抵死ぬ。ちなみにナイフをくれたのは代理の天使だった。おのれネムリエル。

 まぁ、それが悪魔対処法だ。

 悪魔はエネルギーの塊みたいなものらしく、本来人間が倒せるはずのない悪魔を倒すとそのエネルギーが人間にいくらしい。簡単にいうとレベルアップみたなものだ。

 それのおかげで普段生活している時に出現する悪魔も一人で対処することが出来るようになった。

 問題は、レベルアップもどきの後遺症か、天使お手製ナイフを握ると手がひりひりすることだけだ。あとでネムリエルに文句を言ってやろう、としっぽを揺らめかせた。

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