分相応 『golzār』
【作品情報】
『golzār』 作者 辰井圭斗
https://kakuyomu.jp/works/16816700429536035246
【紹介文】
なし
──あなたは私があなたのことを好きだから放っておいても構わないと思っていたのだ。
人は「ああ、この人私のこと好きだな」と判断すると、安堵感からなのか観察回数が少なくなるらしい。つまるところ、気に留める回数が少なくなる。思わせぶりな素振りが巧い人ほどいやに引く手あまただったり、常時顔色をうかがうことを強いられる目上に気づけば心酔しているのは、どうやらそういうことで。自分にとってどっちつかずだから、常に気に留めていなければならないのだ。常に気に留めているから、これはまあ好きなのだろうと、好きでなければやっていられないだろうと。そうした機微が背景にあるらしい。
あらかじめそういうことを備えていると、いざ云い当てられても然程どきりとしないので。知識とはつくづく防弾チョッキだなぁと思う。
ところで、彰さんが"私"を放っているのは決して安堵感からだけではないと思う。一口に云えば、吞まれたくないのだ。常日頃目に映して、心囚われたくないのだ。だって、吞まれてしまったら。
縋る振りをして引きずり込もうとする"私"を連れ出せない。
線路に飛び込もうとする"私"を引き留められない。
"私"の放った炎の中で、"私"を引き寄せられない。
思うに──彰さんに共々墜ちるつもりはないのだ。
未だ何かできると信じているのだ。
彰さんは自身の命が惜しいように"私"の命も惜しいのである。
「ええ。私はあなたが評価してくれたよりも俗だから」
俗と云うのは、多分にそういうことではないかと。
きっと、ただ諦めないばかりが彰さんには分相応に思うのだ。
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