Re: 『cmd/c-rd/s/q-c:\』

【作品情報】

『cmd/c-rd/s/q-c:\』 作者 辰井圭斗

 https://kakuyomu.jp/works/16816452220008397799


【紹介文】

 なし


 返事をすると云った手前、さてどこに宛てようと考えあぐねていたところ、ふと件の作品が目に留まったので。これはもうここに宛てるほかないのではないかと、ある種の思し召しめいたものに誘われるがまま、ぽつねんとここに記す。


 心地としては、汀にて流れ着く文字列がそのうち何やら良い感じの──心の微曚うすぐらいところまで活を行き渡らせるような言葉掛けになりはしないかと然して期待もせず眺めているに近い。


 これは何も漂流物からふみをつくることが億劫なわけではなく。むしろこの方が──寄せては返す無為に端から委ねた方が、まだマシなものが出来上がるのではないかと。


 諦めではなく、きっと創意工夫のひとつである。


 そういくらか前向きに解釈にしたところで、そういえば以前「作家になってほしい」とただ思ったみたいなことを書いたなぁ──と。


「姫乃只紫」らしからぬと重々承知はしていても、贈りものとして恐らくは至上であると解っていたからやれ贈るかと満を持した部分はあるし、「これを贈れば相手は喜ぶ」とある程度予想のつく言葉をあえて贈らぬ理由を探す方が滑稽な気もするし、せめて生き続ける呪いの足しになればと思ってしまったことは事実であり、あれ以外候補が浮かばなかったという本音もある。


 だからなのか、あれは言葉にして良かったのかと偶に思う。


 だって、作家になったところで多分〈それ〉は良くならない。


 海にざぶんと手を浸す。これといって掬い上げてやろうという気概もなかったが、両の掌で椀をつくれば指の端に引っかかってしまうものがいくつかある。


 ──何故に他人様のレビューでこんな小説めいたものを書いているのか。


「どんなにロマンティックな主義主張を並べたって、結局クリエイターの目指すところはそこ。一分一秒でも長く、自分の創ったコンテンツの中でぐずぐずしてほしい。本当に大切なことなんか忘れて、私の創った世界に没頭してほしい」


 某所にて、私(正確には作中の登場人物だが)はクリエイターの目指すところをこう表現したのだけれど。こうした返事さえ小説を気取ってしまうのは多分にこれが原因なのではないかと。


 とどのつまり、時間稼ぎ。良く云えばこう、悪く云えばこうもない。小説を謳う迷宮の中で、咀嚼に労を要する夢心地の中で、やろうとしていたことを片時忘れてぐずぐずぐずぐずしていてほしいのである。


 どうしてこの肝心なときに小説めいたものを書いているのか、小説の体裁を気取っているのかって、そりゃあ読み手を魅了したいと思っているからである。


 だから、あなたから目が離せないという人がいたら、それはもうあなたの〈作品〉が勝ち取った読み手なのだから、それこそ好きにさせるが最適解ではないかなぁと。


 そう考えると、私がレビューという体裁で、返事という名目で小説ぶったこれをしたためていること自体気恥ずかしくなってくるのだけれど──それこそ「らしい」と笑みのひとつでも引いてもらえたら、これ幸いと思うのです。

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