言語化不可能な余韻だけを置き去りにしてくたばるクズを書きたい。【※自作語りです】
10『Xocolatl』
https://kakuyomu.jp/works/1177354054919328175/episodes/16816452219067312069
件の回に見える、
放課後、正親は陽から「虐められたことは」と尋ねられて「ある」と返答している。
実際、彼は中学時代の随分不名誉なあだ名等を「虐め」として認識していたのだろうし、そう認識すること自体個人の解釈なので、そこに正しいも間違いもないのだが──。
陽が、自分より壮絶な"それ"の被害者であることは明らかなので。
何となく──マウントをとられたような不快感があったのだろう。深刻度という視点で比較した場合、自分の方がかわいい立ち位置にいるので。ここで「ない」と云ったら負けた気がする。だから、「ある」と云っちゃったのである。
云うまでもないが、「虐め」というのはネガティブなカラーが強い出来事である。
あの虐めがあって今の自分がある──といった具合に、新たな視点から過去に意味を見出しているとかならまだしも「いやぁ、あのとき虐められてよかったわ~」と過去そのものをありがたがっている人なんてまずいないじゃないですか。出来事としてなら無論ない方が嬉しい。
それでも「虐められたことないんでしょ?」みたいなノリでこられると、ついつい「いやぁ、云うてないことはないぜ?」とよくわからない見栄を張ってしまうジレンマ。
だから、正親が「ある」と答えるこのシーン、人間らしくて私はそこそこ気に入っている。
人は「苦労したことないんでしょ?」と云われるより「苦労してきたんだね」と云われた方が何だか誇らしく感じる。冷静に考えると、いや苦労したから何? って感じなんですけど。むしろ苦労せず立ち回る術を心得ているならそれに越したことなくね? とも思いますし、甚だ。
08『Salamander』
https://kakuyomu.jp/works/1177354054919328175/episodes/1177354054921435674
さて、ここで陽視点に戻ると寂しい事実に気づくのだが、陽の感覚を通した世界には三船正親の「み」の字も出てこない。
とどのつまり、正親の陽に対する想いは病的かつ一方的なのである。さながら──のちに警察のお世話になる可能性が非常に高い、極めて厄介なドルヲタの如し。そもそも陽が自分を見下したというのも彼の"印象"でしかないので。
人は皆自分の世界を生きているけれど、マジで自分以外の世界に見向きもしないというか、そもそも自分以外の世界があると気づけないタイプというか──知り合いにいたら絶対厭だけど、キャラとしてこの手の視野狭窄に陥った人物を描くのは素直に楽しい。視点人物として活躍させたとき映えるので。まあ、紛うことなきクズなんですけど。
個人的にクズは"退場"するとき、読み手からただざまあ(笑)と思われたら負けだと思っている。かと云って、可哀想だよぉ~的な同情の余地も残したくはないので。
叶うなら、言語化不可能な余韻だけを置き去りにしてくたばるクズを書きたい。よっしゃ、タイトル回収。今回はそんな感じ。ではまた~。
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