Slice of life 『俺は、君の小説が好きだよ』
【作品情報】
『俺は、君の小説が好きだよ』 作者 辰井圭斗
https://kakuyomu.jp/works/1177354054934069235
【紹介文】
市原浩次は文芸サークルの後輩柚江夏樹を生命の危機から間一髪救うのだが。
stand.fmなる音声メディアで、件の作品を「嫉妬小説の入門書」と評したわけである。
物書きとして「ああ、そこ押されたらしんどいよね」というスイッチを一通り押してくれているので。特に「お前が、それを書くのか。」のダメ押しに至っては、押された当人の気持ちを思えばしんどいの一言だが、読み手からするともはや親切丁寧である。
ああ、このテーマでそこまで押さえてくれるのか──と。
ちなみに同作者の『Line』もまた才ある者に向けた嫉妬を題材とした小説だが、あちらは作者の"我"が出ている一方、こちらはどちらかと云えば"書き手"が出ているなと思った。
──何を云っているのか流石に伝わりそうにないので補足しておくと、"我"=中の人で"書き手"=HNである。これで伝わらなければ、それはそれで良し。
「のろい」と「まじない」(あと「ねがい」) 『Line』
https://kakuyomu.jp/works/1177354054896176243/episodes/1177354054922235556
軒並み押されていっそ清々しい、何より嫉妬を題材にした小説としてとても分かりやすい。それゆえ、「嫉妬小説の入門書」「お手本のような嫉妬小説」という評価に落ち着いたのだが──。
どうにも、褒めている気がしない。
否、褒めることは義務でも何でもないのだが。ただ、いいと思ったからこそ紹介させてもらったのは確かなわけで。では、どこが良かったのだろうと。嫉妬を描いた作品として非常に明快だったことはさておき、どこがうつくしかったのだろうと。自分なりに考え耽って、辿り着いたのは。
自分は、この人の小説が好きなのだろうなぁと。
読書というのは、実のところ科学的に実証されたストレス解消法のひとつだったりする。こと小説において、読者は文字情報だけでは足りない部分をイメージで補うが、このイメージで補うという行為自体がメンタルに良い影響を与えるらしい。
とはいえ、各々趣味嗜好は異なる以上、読めば何でもかんでも癒しに繋がるわけではないので──。
ただ、私の場合はこの人の書いたそれが癒しになるのだろうなぁと。この点に関して、たとえば漢字とひらがなの割合がいいとか、文章のリズムがいいとか、落とし込まれている人生の一コマがいいとか、考え得る要因は色々あるのだろうが。描かれているのが血染山河であれ、激しい嫉みであれ、心地の良さに繋がってしまうのだろうなぁと。
思うに、作中の「うつくしい」とはこれかもしれない。だから。
「俺は、君の小説が好きだよ」
──この場合は、俺ではなく私になるのだけれどね。
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