第2話

突然だが、一つ質問をさせてもらおう

君に生きる目的はあるか?

ぱっとこたえが出てこない?

そうか、そうか

ちょっと質問が悪かったかもしれない。

いいなおそう

君に大切なものはあるか?

これなら簡単だろう

そして、この質問にたいていの者は「yes」

そうこたえるのではないだろうか


大切なもの


それは、友達だったり、スマホだったり、お金だったり、名誉だったりするのだろう

そして人は、それを得るため、守るために行動する

つまり大切なもののために生きる

最初の質問と2番目の質問は、結局言いたいことは一緒だったというわけだ




では、「no」

つまり、大切なものが、生きる目的が一切ない者はどうだろう

無気力になるだろうか?

中には、なる者もいるだろう

はたまた、死ぬ者もいるだろうか?

もしかしたら、死ぬ者もいるかもしれない

では、あきらめずに生きる理由を目的を探し続ける人はどれくらいいるだろうか―




◇◇◇



今日から本格的に授業が始まる。

高校までは片道30分なのだが、朝の支度をしなければいけないので、いつもより15分早く起きるようにした。

制服を着ながら、先日愛華と校内をまわったときのことを思い出していた。



「真治君は先生の話どう思う?」

「そうですね。今のところ上位5パーセントが安全と分かっただけでしょうか。」

「そうなんだよねー。でも、先生が最後に言っていたっていうのは気にならない?」

「はい。僕もそこには気になっていました。でも、高橋先生はその都度話していくと言っていましたし、そこまで警戒する必要もないのではないですか。」

「真治君がそういうんだったらそうかも。まあ、どうせ今の時点では分からないからいくら話しても同じだしねー。」

「そうですよ。今は話よりも部活動見学に集中しましょう。」




結局あの後は数時間かけてすべての部活動を見に行った。

制服を着終わったので思考を中断して部屋からでた。

「おはよう、真治君。支度。早いね。」

愛華も部屋から出てきたところだった。

寝間着姿なので、今起きたところなのだろう。

「今日から、学校なので15分早く起きることにしたんですよ。愛華さんは今から朝食ですか?」

「そうだよ。真治君もなら一緒に行こう。」

愛華は、眠気が完全に取れていからなのか、おぼつかない足取りで階段を下りていく。

大丈夫なのか。

不安になったので、転んだら助けれる距離でついていくことにした。




リビングに行くともう仁さんと真白さんが起きていた。

「愛華、真治君、おはよう。今日が初日よね。支度はしっかりした?」

「おはよう、お母さん。支度はこれからする。」

「おはようございます、真白さん。支度はもうできましたので大丈夫です。それにしても、今日は早いのですね。」

「あっ、そうだった。今日は私と仁さん、仕事で先行かないといけないの。戸締りよろしくね。」

真白さんと仁さんが行ってから俺たちが行くまで家には2人だけということが確定した。




「行ってらっしゃい。」

「仕事頑張ってきてください。」

2人を見送った後、家には愛華と2人になった。

今は8時10分前。8時に家を出るからあと10分時間がある。

と言っても準備は事前に全てしていたので、リビングに戻ってテレビを見ていた。

すると、一通り戸締りを終えたのか、愛華が隣に座った。

「真治君。昨日、部活動の見学したけど、入るとこもう決めた?」

「……まだですね。愛華さんはもう決めましたか?」

確かに昨日全ての部活動をまわったが様子見程度だったし、そもそも、部活動という存在を知ったのが昨日のことだったのだ。

―流石に昨日の今日で決めることはできない。

が、興味のある活動をしていた部活動はいくつかあった。

今後はそれらの部活動に焦点を絞って決めていこうと思っている。

愛華はどうなんだろう。

「んー。見当はつけてるんだけどね。今のところ、軽音部かダンス部のどっちかってところ。でも、中学の時にダンスはやったし、高校では軽音楽しようかなって思ってる。」

軽音楽。

クラシック音楽以外の大衆音楽の総称だ。

林海学園の軽音楽部では、その中でもメタルが有名らしい。

メタルは比較的ソロが多いため技術が必要なジャンルだ。


それにしても愛華がメタルか。

ちょっと想像がつかないな。

「そうなんですね。ちなみに、役割は何にしようと思ってるんですか?」

予想はボーカルかベースだとにらんだが……愛華の「ギター」の一声で予想が間違いだったとわかる。

「ギターですか。一度もひいているのを見たことがないのですが、ひけるんですね。」

「あ、真治君は知らないよね。実は小さい頃ギターやってたんだ。今はひけるかどうかわからないけど。」

「昔ひいてたんですか。それなら納得です。そろそろ時間ですし、続きはまた今度にしましょう。」

テレビに映っている「8:59」という数字を見ながら言った。





登校して教室に入ると、ほとんどの生徒が来ていた。

来ていないのは2、3人といったところか。

他の生徒は、席に座って問題集とにらめっこしている。

流石、Aクラスだ。

俺はというと、席に座るとすぐこの頃買った小説『スマホをもって異世界に行ったら』を読んでいた。

これはライトノベルというジャンルの小説だが、これを読むことがこの頃始めた新しい習慣だ。

そうこうしているうちに、1時間目のHRまであと5分。

ドアが開いて高橋先生が入ってきた。

「少し早いですがHRを始めます。今日のHRは昨日に引き続き学校説明です。昨日は、教師という立場からの説明だったので理解してもらえないこともあったと思います。なので、今日は生徒の立場からこの学園を説明してもらうために、生徒会長に来てもらっています。渡良瀬会長、入ってきてください。」

生徒会長から話が聞けるのか。

もしかすると、昨日聞けなかった他のルールを聞けるかもしれない。

渡良瀬会長であろう人が教壇の上に立った。

その瞬間オレの方を見た気がしたが……気のせいかもしれない。

「生徒会長の渡良瀬春奈わたらせはるなです。今日は新入生に学校の説明をさせてもらいにきました。」

一般的に見ても十分に人を引き付ける容姿をした渡良瀬会長は、落ち着いた声でそう言いながら教室を見まわした。

「まず、高橋先生から聞いたかもしれませんが、この学校は完全実力主義です。だから、実力さえあれば私のように2年生でも生徒会長になれます。ほかにも、実力がある、つまり高序列の生徒には色々な権利が付与されます。例えば、そうですね~。欠席しても出席扱いになる権利とか自分の研究室を持つことができる権利とかですかね。」

会長の言葉に教室内にいる愛華とオレを除く全員が息をのんだのが分かった。

欠席しても出席扱いになる権利や自分の研究室を持つことができる権利というのがそれほど魅力的なのだろう。

オレにはない価値観だ。

「しかし、それだけの権利が与えられる分義務も付きます。それは、高序列者による低序列の生徒のです。具体的に言うと、序列上位5パーセントの生徒は下位5パーセントの生徒とチームを組みます。それで、そのチームのどちらかの生徒が退学となればもう一方の生徒も自動的に退学してしまいます。」

今の話は、このクラスの過半数以上は関係のない話だが、俺にはもろに関係がある。

昨日の高橋先生の話やさっきまでの会長の話を聞いている限りでは、序列上位なら多くの特権があるにもかかわらず退学のリスクがなかった。それは明らかに不公平だ。

だから、序列上位者にも不利なルールがあると思っていたが、まさかチーム戦とはな。

特に、チーム戦が苦手というわけではないのだが、他人の能力に自分の退学を左右される分不安も大きい。

「チームは後で先生の方から通達があると思います。じゃあ、ここまでで質問はありますか?」

この後も、この学校の特色が話されたが重要なことははじめ話されたことだけだった。

「―以上で終わります。では、良い学園生活にしてくださいね。」

そう言って教室から出ていった。

前の席に座っている愛華は説明の間ずっと会長を見ていた。



休み時間になると、外の空気でも吸いに行こうと教室から出たが、そこには意外な人物がいた。

「茅野真治君、だったかしら?」

ゆっくりした足取りで近づいてきたその人物は、耳横で「ちょっとついてきてもらえる」と、ささやいて廊下を歩いて行った。

拒否権はないんだろうな。

心の中でそうささやいて、小さくなっていく背中を追いかけた。



ついて行った俺は、3階のカフェテリアに来ていた。

ちなみに、1-Aの教室は2階にあるから実際は階段を1階分上っただけだ。

改めて、目の前に座っている人物を見た。

だめだ。

残念だが一度も見たことがない。

というか、どこで接点を持ったのか俺が聞きたいくらいだ。

まあ、話してみなければ何もわからないか。

そう決心をして、ついて来いと言ったくせにメニューばかり見て何もしゃべらない目の前の人物を見て口を開いた。

「それで、どうしたんですか。いえ、この際は渡良瀬先輩と呼んだ方がよいのでしょうか。」






















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