to destroy everything

真辺ケイ

プロローグ

 2030年1月1日。


 日本のある研究所が破壊された。


 その破壊された研究所の前に現れた1人の少年。



「はぁ、やっとここから出られた。本当に外の世界は広い。ここでならオレのしたいことが見つかるかもしれない。」



もう跡形しか残っていない研究所に向かって呟かれたそれは誰もいない虚空に消えていった。









 6:30

 近づいてくる足音に目を覚ました。


 2秒後。


 そのくらいで部屋の前に来るだろう。

 その間に、ボーっとしている頭を覚醒させ、反射的に周りを見る。



 異常は……ないな。



 寝る前に物の位置を記憶し、起きてから確認する。


 物心着いてからずっとしてきた習慣だ。

 あの時から1年たった今でも体に染みついて取れない。


 あと1秒。


 部屋の外に意識を向けると、1年前からずっと聞きなれた足音が近づいてきている。


 ―仁さんか。


 仁さんは、俺の主任研究員だった人で、本名は九重仁ここのえじん

 1年前からこの人の家に居候させてもらっている。

 他にも、仁さんの配偶者の真白ましろさんと娘さんの愛華あいかと一緒に住んでいる。

 愛華は16歳で俺と同い年だ。

 愛華の学校は、八――


 0秒。


 コンコン。


「真治君。起きているかな。」

 思考を途中で中断して、来訪者に注意を向けることにした。

「はい。起きています。何でしょうか。」

「少し話がある。落ち着いてからでいいから、リビングの方に来てくれるかな。」

「分かりました。すぐ向かいます。」

 かなり真剣な声だったけど、何の話だろうか。

 身に覚えが全くないので、不思議に思ったが取り敢えずリビングに行ってみることにした。




「失礼します。」

 ドアを開けてリビングに入ると、もう3人が座っていた。

 3人が全員揃うとは珍しい。

 特に、仁さんはいつも自室にこもって何かしている。


 そんなことに少し驚いていると、仁さんが「早く座ってくれ」と目で促してきた。

 いつものように無視しやろうかと思ったが、仁さんの目が本気だったので、おとなしく空いている椅子に座ることにした。

 俺が座ると、すぐに目の前に座っている仁さんが口を開いた。


「真治君も来てくれたことだし、そろそろ話を始めるよ。実は、真治君にも愛華と同じように高校に通ってもらおうと思ってるんだ。もしかしたら、真治君は行く必要がないっていうかもしれないけどね。学校は、一般常識とかを知る上でも大切だと思うんだ。だから、前向きに考えてほしい。」


 高校か。

 これまでも研究所にいたとき何度か聞いたことはあるが、実際にどんなとこであるかは全く分からない。

 でも、俺もそろそろ一般常識を身につけていかないといけないと思ってる。

 社会に出た時に困るからな。

 だから、正直興味はあるが…。

「いいんじゃない。私も、真治君には学校に行ってほしいと思ってたし。」

 愛華がこう言ってくれるのなら、高校、行ってみるか。

「愛華さんも賛成してくださるのなら有難く通わせてもらおうかと思います。」

「そうか。それは良かった。それで、通う学校なんだけど、『林海学園りんかいがくえん』にしようと思う。ここなら、多少の融通が利くからね。でも、かなりの難関だから、試験ではそれなりの点数はとっておかないといけないよ。って、そこは真治君も愛華も心配はいらないか。」

 なるほど。

 試験があるのか。

 難関と言っているが、仁さんがああいってくれていることだし心配はいらないか。

 そんな楽観的な真治とは真逆に愛華は焦っているようだった。

「ちょっと待ってよ。『林海学園』って超難関校じゃない。倍率も100倍近くあるし、真治君は大丈夫だと思うけど、私は合格できるかわかんないよー。」

 日頃から、真白さんから愛華はかなり頭がいいと聞いている。

 そんな愛華でも無理だったら、俺は、本当に合格できるのだろうか。

 流石に、落ちるようなところに受験はしたくないなー。

 すると、真白さんが不満げに口を開いた。

「冗談はよしなさい、愛華。貴方、毎回テストで満点じゃない。愛華が合格できないなんてありえないわ。」

「えへへ。ばれた?まあ、正直に言えば高校入試くらいでは対策なんかしなくても合格するとは思うけどねー。」

 なんだ。

 演技だったのか。

 心配して損したよ、ほんと。


 愛華と真白さんが会話を楽しんでいると、仁さんが申し訳なさそうに口を開いた。

「楽しんでいるところ悪いが、もうすぐ願書を出さないといけないから。志望校の変更はできない。もう一度聞くけど、二人とも『林海学園』でいいね?」


「いいよー。」


「変更はありません。出願宜しくお願いします。」


 こうして、俺の人生初めての学校生活が始まることとなった。

 しかし、高校とは何を勉強するところなのだろうか。最近は、研究所にいた時とは違う生活に慣れてきたが、研究所を出てから、まだ同年代では愛華としか話していないからな。高校には、同年代の人たちが集まる。この機会に、何人かは友人を作っておきたいものだ。



 それにしても、


『林海学園』か。


 研究所で一度だけ耳にしたことがある。


 少し気を引き締めておかないといけないのかもしれない。




















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