物語の創り方5~三幕構成③

 引き続き三幕構成について説明していきます。早いもので、三幕構成についての話もすでに三回目! 読んでいただいている皆さんには大変言いにくいのですが、一向に終わる気配がありません、あはは……


 前回の復習です。

1.おもしろい物語を書き上げたければ、まず制約(文字数縛り、あるいは締め切りを設ける等)をかけよう!

2.書き始める前に、「誰の、何についてのストーリーなのか」簡潔に説明できるあらすじを書こう!

3.物語の発端、結末を決めよう!


 1なんてまるでハンターハンターの念能力のよう!

 

 ここで私自身の確認のために言っておきますが、今お話しているのは、ハリウッド脚本術であるこの三幕構成法を、小説の書き方に応用させるということです。なんだか忘れてしまいそうなので一度書いておきました。「物語の創り方」というテーマを掲げていますが、これは小説のことです。物語という言葉はドラマや映画も含まれてしまうのでわかりにくいのですが、私としてはこの「物語」という言葉がしっくりくるのでそうさせてもらっています。


 また話がそれましたね。戻ります。あらすじは書けた、今書こうとしているのが「誰の、何についてのストーリーなのか」もはっきりしている。ここまで考えられた方、さあ執筆だ!となるわけなんですがちょっと待ってください。


 今みなさんの考えた物語、


 今流行りの異世界転生もの、このお話の多くは交通事故なり自殺なりをして異世界転生するところから始まりますが、別に異世界転生して1年目の冒険中から書きはじめてもいいし、異世界転生する1年前の生活からはじめてもいいわけですよね?


 三幕構成における発端、それはとにかく「状況設定」に終始します。主人公を紹介し、何についてのストーリーかを提示し、出来事が動き始める状況をつくりだす。すでに伝えましたが、ハリウッドの映画の総時間は約120分、発端はそのうちの30分です。このたった30分のうちにどんな映画かを視聴者に理解されなければ終わりとまで言われているそうです。

 おそらくみなさんも自然とそのことを知っていて、読み手の方にわかりやすい展開を選んでいるのだと思います。


 中盤を飛ばして次に結末の話をします。これはわかりますよね。みなさんの物語が、最後はどのように終わるのか。三幕構成では「解決」といったりします。つまり発端で示された状況が、最終的にどのような形に収束するのか、ということですね。ミステリーで考えるとわかりやすいです。発端「誰かが殺された」、結末「犯人はおまえだったのか!」ですね。


 さあ、ようやくやってきました、中盤です。ハリウッド脚本術の中でも、実はここが一番難しいと言われています。なぜか。それは三幕構成のうち、最も長い時間(60分)が費やされるからです。しかも発端や結末と違い、若手の脚本家や脚本家を目指す学生さんなんかも「何を書いたらいいかわからない」と悩む人も多いんだとか。

 ズバリ言うとこの中盤、描かれているのは「葛藤」です。ここで物語の創り方1の話に繋がってくるわけですね。おおー


 ここでいったん整理します。ハリウッド脚本術の三幕構成は、第一幕(状況設定)、第二幕(葛藤)、第三幕(解決)という形をとります。※これからはより具体的にするためこの三つ(状況設定・葛藤・解決)の言葉で示しますね。


 葛藤についてはすでに違うエピソードで触れていますから、ここでは葛藤=「主人公の前にたちはだかる障害」とでもしておきますね。そしてシド・フィールドさんのこの言葉も示しておきます。


「ドラマ(物語)とは、すべて葛藤である。葛藤がなければアクション(行動)はなく、アクションがなければ主人公もいない。主人公がいなければストーリーは作れず、ストーリーがなければ脚本(ここでは小説)は書けない」

 

 つまり一番難しいとされる第二幕(中盤)は、ひたすら主人公が目の前の障害を乗り越えていくことに費やされるわけです。みなさんの小説はどうでしょうか。物語は始まった(状況設定は済んだ)、さあ、主人公の前にはどんな障害が立ち塞がっているのでしょうか。もし障害がない、というのであれば、少なくともハリウッド脚本術からすると没、ということになってしまいます。あくまでハリウッドでは、ですよ!


 ここで気づいた方もいるかもしれませんが、つまり障害が立ち塞がるということは=主人公には何としても果たしたいあるいは欲求がある。ということです。その目的を妨げるものが障害となるわけですからね。


 私がつい今しがた読み終えた「鬼滅の刃」(19巻までです笑)、ハリウッド脚本術からしても、まさにお手本のようなお話です。主人公の炭次郎は、鬼にされた妹を救うため、鬼の親玉鬼舞辻打倒を目指します(合ってますよね?)。炭次郎が何より家族を大切にしていることが丁寧に描かれているがゆえに、その目的はまさに命を懸けたものとなります。

 第一幕(第一巻)でその状況が説明されたあとは、鬼舞辻打倒を目指す炭次郎の前にありとあらゆる障害が立ち塞がってきます。そして私のまだ読んでいない20巻で解決!?という、ジャンプ漫画にしては異例の超展開。まさにハリウッド映画顔負けの息もつかせず120分!といったところでしょうか。


 これでようやく、この「三幕構成」のとき最初に書いた「ミッドポイント」の話ができます……次回で。


 まとめです。

1.三幕構成とは第一幕(状況設定)、第二幕(葛藤)、第三幕(解決)によって成り立っている。

2.第二幕はひたすら葛藤(主人公の前に立ち塞がる障害)を描く!

3.読者の心をつかむ葛藤を描くためには、主人公には「何としても達成したい、しなければならない」目的があり、さらにそれを状況設定の段階で明確に示されていなければならない。


 では、今回はこの辺で。

 普通に2000文字過ぎてます。簡潔に、わかりやすく伝えるということは本当に難しいことですね。

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