発見! 帝国の調査団
おびただしい数の球体には小さな世界が収まっている。
山や海、街などなど、様々な空間があるため、なかなか色とりどりだ。
「インドラさん。この球体が魔法で生成された空間なのだとしたら、これらのうちどれかに、私達が入れると思うです?」
肩車をしてもらっているため、真下に居る彼がどの様な表情なのかは分からない。だが、返答するまでに少しの間が開いたので、彼なりに慎重に考えているのかもしれない。
「うーん……。これらの球は、スノードーム? みたいに飾り物染みている……。外部から空間に対して何か働きかけたり、選んだりする目的がなければ、こうして鑑賞できるようにはしない気がするな!」
「うん?」
「入れるかどうかは分からない! けど、試したらいい!」
「うえぇ!? で、でも。ここにアジさんやエマさんを置いて行くのは心苦しいというか……」
「動けているのは俺達だけだ。あの者達に誰かが何かする心配はいらないだろう!」
「そうかなぁ」
ステラは胸の辺りの布を握りしめて、沢の方を見る。
確かにインドラの言う通り、今動けるのはステラと彼の二人だけだ。
それに、自分達がこの空間に居続けたら、誰一人助からないかもしれない。
今ここで、思い切った決断をしなければならない。
「い……行ってみようです。みんなで元の世界に戻る為には、私達が行動しなきゃです」
「その通りだなっ! あんたのその
「あい」
ステラは近くを漂う球体に手を触れる。
すると、ガラス玉のような表面に、何らかの古代文字が表示される。
(この文字、”95”って意味だったかな? 95番目に出来た空間ってこと?)
推理しているうちに、再び身体がチリチリするような感覚になる。
一瞬の暗転の後に、明るくなると、目の前にはさっきと同じように”テミセ・ヤ”の兵器があった。
「あれ? 同じ場所のままみたいです」
「いや、ちゃんと移動出来たと思う!」
「そうですか?」
「さっきよりも、霧が薄く、雲が高い位置にある」
「えぇ……」
周囲を確認してみても、ステラには違いが分からない。
しかしながらレイフィールドにゆかりのあるインドラが言うのだから、真実なんだろう。
「えーと、ちょっとだけ歩いてみようです。さっきの場所との違いを実感したいですので」
「分かった。ただし、あんたは体力的にきつそうだから、このまま歩くっ!」
「あい……」
肩車なんか、義父にも義兄にもしてもらったことがないのに、なかなかに思い切ったことを頼んでしまった。微妙に思えてくるけれど、疲れ切っているのも事実なので、おとなしく乗っかっておくことにした。
◇
沢まで移動し、ようやくステラにも先ほどの空間とこの空間との相違点が分かった。そこに見覚えの無い人間達が固まっていたからだ。
動きを止めた人々は帝国国旗のマークがついたマントを羽織っており、【アナライズ】してみると、ほぼ全員がそれなりの猛者だった。
「この人達は、ゴンチャロフ皇帝が派遣した調査団員さん達っぽいです」
「俺もそんな気がするっ」
「【アナザー・ユニバース】を解いたなら、この人達も外に出してあげられるかもですね」
「ああ。無事に救出出来たなら皇帝にたんまりと褒美が貰えるかもしれない!」
「褒美! 貰える物があるなら、しっかり貰っちゃうです!」
「それが良いぞぅ!」
脈拍を測るなどして、調査団員達が生きているのを確認し、再び”テミセ・ヤ”の兵器の所まで戻る。
この空間においても兵器に描かれた魔法陣は使え、再び大量の球体が放出された。
「次はどの空間に行ったらいいかな?」
「……何となく、レイフィールドを模した空間以外を選んだ方が良いように思う!」
「ふむぅ? 理由を聞きたいです」
「今出ている球体は100個程度はありそうだが、レイフィールドを模した空間が大量にある一方で、見覚えの無い光景もかなりある」
「うんうん」
「だけど、俺が思うに、これだけの大魔法を使える場所というのは限られているはずで……。何て言ったらいいかな。知られてはいけない場所を切り取っているものも多いんじゃないかな~と思った!」
「ハッ!! ヤバイ実験場とか、ヤバイ工作活動地とかを模した空間が見れるかもって意味ですか!!」
「おう! そんな感じだ! たぶん!」
「す、凄そう……」
インドラが話してくれた事はありえそうだ。
把握しきれない程の数の空間には秘密がいっぱいあるだろうし、それらを放置しておかざるを得ないのは、テミセ・ヤがこの魔法を使いこなせていない証拠でもある。
だとしたら、最も”ヤバイ”球体を見つけ出したら、それが突破口になるかもしれないのだ。
――しかし……。
「問題は、その空間を探すのがかなりメンドクサイ事なんです……」
「気合で乗り越えようっ!!」
ステラは「はへ~」とため息をこぼし、空に浮かぶ無数の球体を睨んだ。
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