行楽のお誘い?
ステラがエルシィに対して自分なりの誠意を示すと、彼女は明らかに挙動不審になった。両手を顔の前でパタパタと
「エルシィさん?」
「あ……の……。まさか貴女が私を想ってくださっているだなんて予想もしていなかったのよ! だから少し、ほんの少しだけっ、動揺してしまったのですわ」
「うん?」
エルシィにしては珍しく、良く分からない事を口にする。
ステラは話の内容をうまく呑み込めず、口を半開きにしてエルシィを見つめるしか出来ない。
「もちろん貴女の気持ちを尊重するつもりです! ご自分に自信を持てるまで、私は待ち続けますっ」
「今の私だと、王様にとってとるに足らない人間だと思うです。無視出来ないくらいにビッグな存在になって、私の考えを堂々と言いたいですよっ!」
「ご自分をとるに足らない人間だなんて、思わないで下さいませ。私が知る限りでは、貴女は王都と言わず、ガーラヘル一素晴らしいアイテム士です。お父様もきっと直ぐに実力をお認めになるでしょう」
「そうなのかな。そう、だったらいいですね」
遠くに見える王城に国王陛下が居る。
ステラをマクスウェル家に預けた後、
駅の売店での出品権をくれるくらいだから、悪感情は抱いていない……と思いたい。
「はふぅ……。ちょっと
「うふふ。今日のステラさんは少し大人っぽいですわ」
「本当にっ!? ついに成長したですか!? 身長!? 身長ですかっ!?」
身を乗り出して問えば、エルシィがまたもや真っ赤になり、
「み、見た目ではなく、心の事を言ったのですけど、いつもより1ミリ程度は大きいかもしれませんね。おそらくですが」
「ああ……。そうですよね……」
「身長なんて、大した問題ではないと思いますわ。内面の方がずっと大事ですもの」
「素晴らしい慰めの言葉なんです。グスン……」
割と本気で悲しんだステラだったが、エルシィの方は笑って流しただけだった。
「気にしすぎは良くないですわ。それよりも、よかったら、秋の行楽をご一緒出来ないかしら? ヴァルドナ帝国の収穫祭は盛大なので、一度拝見してみたいのです」
「ヴァルドナ帝国?」
『帝国』と聞き、ステラは深夜の出来事を思い出す。
昨日入手したブラウンダイアモンドが元々は帝国の一都市、レイフィールドで採れたからだ。
アレムカの策略により作られた契約書の所為で、ブラウンダイアモンドの所有者はステラに代わってしまったようだった。
しかし、所持することで予想される現象が起きないのが不思議だ。
アレムカの家でブラウンダイアモンドを調べた時に、”不適正者に所持された場合、その者のアビリティに変異を加える”効果があると知ったわけだが、今日の明け方に分析魔法をかけても同じ結果だった。
所有者がステラに代わったなら、アビリティがおかしくなりそうなものなのに、作るアイテムは”感電”の効果が付かない。
検証の為に作ったマジックアイテムは、全てがいつも通りなのだ。
まさかとは思うが、ステラにあの
(正しい使い方すら分からないのに、適正なんかあるわけないよね)
今現在、金剛杵はアジ・ダハーカが収納してくれている。
雷神の力の影響を受け続けると気分が悪くなるらしく、時折外に出しているのが気になりはするものの、彼に持ってもらわないと変な時にブラウンダイアモンドステラの近くに沸いてしまう。
まったくもって、迷惑極まりない物体である。
契約書を無効に出来ないのであれば、レイフィールドに還しに行った方がいいかもしれない。
「うーん、うーん……。レイフィールド」
「ステラさん?」
「わっ! ごめんなさい。
エルシィの前でどっぷりと考えこんでしまった自分を恥じ、ステラは慌てた。
だけども、彼女は怒りもせず、麗しい笑みを浮かべる。
「レイフィールドがヴァルドナ帝国にあるとご存知とは、流石はステラさん。大陸の地理にも詳しいのですね」
「地名を知る機会があっただけなんです。実は――」
エルシィにブラウンダイアモンドの件を説明する。
アレムカのことも伝えようかどうか迷ったが、こっちの方は黙っておく。
あの老婆の所業を知ったなら、正義感の強いエルシィは必ず動いてくれるだろう。
しかし、なんとなく実の姉の力をあてにしたくないという気持ちがある。
なるべく自分で解決し、何事も無かったかのように振る舞いたい。
ステラが話し終えると、エルシィは目を輝かせた。
「雷神様の神器を入手されたのですわねっ!! ステラさんは幸運の持ち主ですわ!」
「そうです?」
「ええ! 神器のルーツがレイフィールドにあるのでしたら、やはり帝国に参らなければならないでしょう! こちらを訪問のメインの目的にして、収穫祭はついでとしませんこと?」
「一緒に行くのは決定事項なんです?」
「勿論ですわ!!」
「ふむぅ」
自分の両手を握りしめられ、ステラは目を丸くしてエルシィの顔を見上げた。
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