決闘の内容とは?
カーラウニと話した数日後、ステラは教室の机に突っ伏してうんうんと唸る。そんなステラの足元には綺麗に包装されたプレゼントが幾つも転がっていて、少しばかり脚を動かしただけで、それらに当たる。
今日学校に来ると、色んな人が教室にやってきて、お供え物をするかのようにプレゼントを置いていく。
その理由は明白で、本日はステラの誕生日だからだ。
何故誕生日を知っているのか不思議ではあるが、受け取らない理由はなく、だんだん机の周りが酷い状態になる。
しかし、今のステラには与えられるプレゼントを喜んでいられる程の心の余裕はない。
というのも、二週間後にカーラウニと決闘することになったからだ。
ガーラヘル王国法に基づいた決闘は、王都の南に位置するテラファー遺跡群で行われる。
広大な面積を誇る遺跡は聞く話によると、かなり特殊な土地で、”エーテルだまり”が現れやすいのだとか。
つまり、その”エーテルだまり”を利用すれば、大規模な魔法を乱発出来るし、ただひたすらにバリアを張り続けることも可能。占拠出来るか否かで勝敗が決してしまうくらいに大事な要素と言える。
しかしながら、事前に”エーテルだまり”があるポイントを把握することは出来ない。
数時間毎に現れては消えるそれらを、捜索し続け、確保しなければならない。
”エーテルだまり”に注意を払いつつ、勝利条件を満たすための動きも必要だ。
1時間半にも及ぶ戦闘時間終了後、相手側のリーダーを自陣営に留めおくか、または戦闘不能状態にするのだが、またしてもステラがリーダーなので、そこもまたストレスである。
身体能力的に素早移動等が不可能なのは、それだけでデメリットになる。
今日はアジ・ダハーカがテラファー遺跡群に下見に行ってくれているし、後程クリスから過去の戦闘映像をもらうので、家に帰ったらじっくりと観てみるつもりでいる。
「うはぁ……。気が重くなってきた……」
「スーテーラ―!! おはよー!」
「ふへ?」
レイチェルの声がしたと思った次の瞬間、帽子が取り払われ、頭がワシワシと撫でまわされる。
いつも以上に過剰なスキンシップに、ステラはポカンと口を開け、彼女の顔を見上げた。
「レイチェルさん、おはようです」
「今日はステラの誕生日だったよね!? これ、あたしからのプレゼントだからっ!」
彼女が小脇に抱えていたのは、巨大なクマのヌイグルミだった。
ステラの胴体よりも大きなそれを、ギュムっと押し付けられ、アタフタとする。
真っ白で可愛らしくはあるが、窒息寸前である。
「むー! むー!!」
「あ、ごめんごめん!」
直ぐにどけられ、ヌイグルミは机の上に乗っけられるが、ステラはついつい自分を殺しかけたクマを恨みがましい横目で見てしまった。
「にしても、ステラすっごい量のプレゼントを貰ったね」
「コリンさん達や、売店でのお得意さん達がくれたです。中にはかなり高額な素材も混ざってて、ラッキーなんです」
「良かった! ステラの誕生日を教えてほしいって、良く言われるから、教えてあげてるんだよね」
「そうだっだんだ……。何か照れます」
「ステラって皆の可愛い妹みたいなもんだしね! あ! エルシィ王女からは何貰ったの?」
「ん? 今日はエルシィさん学校に来てないです。用事があるみたいで」
「あらら。王族って、まともに学校に通えないんだね。かわいそ!」
本人に聞いた話だと、今日はエルシィの妹が亡くなった日なのだそうだ。
まだ王妃のお腹に居る段階で命を落としたようで、エルシィ自身、イマイチ姉妹が居たという実感がないのだとか。
それでも、この世に一度性を受けたのは事実。国王夫妻はこの流産の件でもめ続けているらしい。
(家族って大変なんだなぁ)
エルシィの憂い顔を思い出すと胸が痛む。
しかし、他の家の事情についてアレコレ考えるのも悪い気がして、ステラは頭をブンブンと振って思考を消し去った。
そんなステラを面白そうに見ていたレイチェルは、彼女らしい気遣いをしてくれた。
「さっき少し気になったんだけど、何かに悩んでなかったー?」
「いっぱい悩んでましたっ!」
「やっぱ、そうだったかー! 授業までまだ時間あるし、あたしに話してみて!」
こういう時、話しやすい友人が居るのは助かる。
隣の席に座った彼女に対し、ステラは身を乗り出すようにして、カーラウニとの決闘の件を説明する。
「――それで、負けたら不倫をしている男女の仲を取り持つはめになったです」
「えええ!? きつぅ!」
ステラの話を最後まで聞いてから、レイチェルは大袈裟に顔をしかめてみせた。
服装が派手な彼女だが、ただれた人間関係についての話題は受け付けないらしい。
いつの間にか、ステラの席の近くに集まって来ていたコリン達も難色を示す。
「おかしな大人達なんかに、ステラちゃんの貴重なアイテムを使ってほしくないよ!」
「確かに! っていうか、味をしめた奴が、ステラちゃんのアイテムを悪用するかもしれない!」
「ってことは、不倫専門のアイテム士になるって事か!」
あーでもない、こーでもない、と話し合い始めたクラスメイト達に、ステラは慌てふためいた。
「不倫専門のアイテム士は絶対にイヤなんですっ!!」
「とーぜんだよ! 皆でステラの為に闘おう!!」
「「「おう!!!」」」
「み、みんなぁ……」
レイチェルの声掛けで、決闘に必要になる人数は直ぐに集まったのだった。
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