西区の整形外科
少女の忠告にビビったステラであったが、そのまま義兄の元に帰る気にもならず、情報の取集を続ける。区長からの断片的で動いているため、あまり効率的ではない。しかし、だんだんと区内でも目立つ存在の者が被害者になっている事が分かってきた。
犯人像についてアジ・ダハーカと話しつつ、五件目の訪問先である整形外科専門の医院の扉に手を掛けた。ここで被害に有った者の話は、区長から聞いたのではない。
西区での聞き込みで知ったのだ。
国を代表するスポーツ選手が、一カ月前からこの医院に通っているようなのだが、最近目に見えて弱ってきているのだとか。
本人に聞いても何も言わないので、周囲の者が注意深く観察したところ、この医院が怪しいとなった。診察から帰ってくると、異様な程に青ざめていることから、”ここで何かされているんじゃないか?”と想像しているようだ。
ステラは、目の前に立つ医院の看板を見上げ、「ごくり」と喉を鳴らす。
”美青年クリニック”
確かにそう書いてある。
これは開業した者が付けた医院名なのだろうか? とんでもなく自意識過剰な者の存在を感じずにいられない……。
「自分の顔面への評価ハードルを上げているのだな」
「医者の顔は綺麗じゃないと許されないです?」
「それはそうだろう! どれ、確かめにいくぞ!」
入口の扉を開けてみると中には誰もいなかった。
不思議に思いながら一歩足を踏み入れ、軽く仰け反る。
唐突に首に何かが突き刺さったのだ。
「いだぁっ!? 何か飛んできたです!」
「大丈夫か、ステラ!?? ――それは、注射器?」
相棒の言うのだから、注射器に似ているのだろう。しかも、それは透明なチューブに繋がれており、どういう仕組みなのか、ステラの血がドクドクと吸い取られていく。
「ひうっ!?? 血が抜かれてる!!」
「なんて病院だ。早く抜き取ってしまえ! 回復魔法をかけてやるぞ」
「勝手な真似をしてもらっちゃあ困るよ」
奥の方から聞こえてきた青年の声に驚く。
この恐ろしい注射器は彼が投げたとみて間違いなさそうだ。
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