レベルアップとお泊りのお誘い
ステラは売店係長やクリスとの打ち合わせを終え、スライム組の教室に入る。
すると、多くのクラスメイト達が視線を向けてきた。
模擬戦争の動画を観て、クラスメイト達は色々思う事があったのかもしれないが、ステラは知らないふりを決め込む。
この学校では細かいことを気にしていたら、やっていけないのだ……。
「ステラちゃん、今日は休みなのに来たんだね!」
「おそようなんです。チョロっと来てみたです」
声をかけてくるコリン達と軽く話をしてからレイチェルの席を見ると、彼女は大股でこちらに近付いてきていた。
小さく手をふれば、満面の笑みが返される。
「ステラ~! ヤッホー!! 昨日は楽しかったねっ!」
「こんにちはですっ。楽しかったかもです」
「聞いて、聞いて! 模擬戦争で私、二年の有名人チャストラ先輩と戦ったじゃん?」
「うん」
「それで、あたし、レベルが上がったんだよぉ!」
「おお~! おめでとうなのですっ。レベルは幾つ上がってました?」
「上がったのは2。聖騎士がレベル32になったんだよね~」
「凄いです! 実は私も魔法使いがレベル26になりました。うへへ」
新たな魔法の習得に励んだり、模擬戦争で魔法を連発したのが良かったのだろう。魔法使いのレベルが2上がった。それに、これは内緒なのだが、アイテム士のレベルも1上がっている。
今朝自分に分析魔法を使用してみたところ、以下のようなステータスとなっていた。
【ジョブ】アイテム士 L v49
【サポートジョブ】魔法使い L v26
【パラメータ】 STR:13 DEX:493 VIT:22(+100) AGI:59 INT:246(+100) MND:284(+100) HP:880 MP:29,760
【アビリティ】効能倍加、効能反転、効果移動、エーテル抽出、エーテル添加、変質/攻撃魔法Ⅱ、治癒魔法Ⅲ、防御魔法Ⅲ、生産魔法Ⅴ、分析魔法Ⅴ
自分なりに、このレベルアップの理由について考えてみるに、アイテム士の方は、模擬戦争での働きの他に、普段マジックアイテムをチマチマと作っていたから、今回のレベルアップに繋がったんだろう。
レベル45を過ぎてからは、本業レベルでないとなかなか上にいかなくなるのが辛いところだ。
大事なところを伏せたまま喜びを露わにするステラに対し、レイチェルは探るような視線を向けてきた。いつもなら、ステラのレベルアップを褒めてくれそうなものなのに、珍しい反応である。
ステラはハッとした。先週クリスの口から、ステラがステータスを偽っている件について暴露されていたのだ。レイチェルはきっと、詳細を聞きたくてたまらないんだろう。
「えぇと……。授業の予習をしなきゃです。ほんじゃ、またねーなのです」
「ステラってそんなに真面目な子だっけ?」
不思議そうにするレイチェルを残し、自分の席へと戻ろうとした。しかし振り返るとかなり近い場所にエルシィが立っていて、危うくぶつかりそうになった。
予想外の出来事に、ステラは大袈裟に驚く。
「うわぁ! ビックリなんです!」
悲鳴を上げれば、エルシィは気まずそうに顔を背けた。
用があるなら、声を掛ければいいのに、何故そうしないのか……。
「ステラさん。御機嫌よう」
「御機嫌ようございます……」
「今少しお話しても宜しいかしら? これから予習をするとのことだったから、迷惑かもしれませんが」
「はい! あ、いえ……。予習なんかどうでもいいです」
ステラ達のやり取りがおかしいのか、レイチェルが後ろから笑い始めた。
「今週の土曜日から、来週の月曜日までこの学校は連休になりますでしょう? ですから……その……、私の旅行に付き合っていただけませんこと?」
「旅行……」
目を見開いて固まってしまう。
エルシィとは最近割と仲良くしているが、泊りがけで旅をする程に親交を深めていたかは謎だ。
気が付くと、周囲に居た生徒達も一様に黙り込み、こちらの会話に耳をそばだてているようだ。二人の話が途切れたのに、あきれたのか、レイチェルが割って入った。
「王女様ー。イキナリ泊りに誘っても普通の子だったら警戒するんじゃない? ちゃんと具体的に言わないと」
「警戒!? べ、別に変な意味で誘っているのではないわ! ただ、プリムローズさんが、今回の件のお礼に、妖精の国オスト・オルペジアに来ないかと誘ってくださいましたの。ですから! 私だけではなく、皆さんもご一緒にどうかと思っただけなのだわ!」
一気にまくし立てられた所為で、耳がキーンとなったが、内容は伝わった。
急な話ではある。だけど魅力的すぎて、ステラの頭の中はそこでやりたい事、見たい事でドンドン埋まっていく。
妖精の国は長い間鎖国状態で、選ばれた人間しか立ち入る事が出来ない。
それは彼女達の国土や文化を守る為なのだそうだし、利益を守る為でもある。当然門外不出の技術なども存在している。妖精アイテム士が残した幻のアイテムレシピなる物もあるのだとか。
行く機会があるなら、是非堂々と踏み入りたい地である。
国を出るのにはジェレミーの許しが必要だけど、誘ってくれているのは王族だ。これ以上安全な旅行はないだろう。
ステラはニコリと微笑み、エルシィに頷いた。
「妖精の国に行ってみたいです! 是非連れて行って下さい!」
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