ピザトーストの店

 横長の雑居ビルの一室で菱桐夫妻は今日もラーメンをひさぐ。

 一度、こういう会話があったそうだ。

 「な、うちみたいな形状の雑居ビルって何か一般名ついてないのか?」

 「雑居ビルは、雑居ビルじゃないの。」

 「こんな風に、二階建てで、一階が店舗で、二階が事務所で、それが三組位列なっていて、表に駐車場が五、六枠あるビル。福山のしろとかあけぼのに矢鱈多い体裁の、こういうビル。」

 「手城とか曙とか往かないから分かんないわよ。」

 そういう体裁の雑居ビルの西側がラーメンいくおなのである。真ん中は私が小二の頃迄クリーニング屋だったけど今は空室、東側はかつては建築士の事務所で知らぬ間に空になった。で、東側の店舗だけ最近改装工事が始まった、建材屋の軽トラが停まったり、作業着を着て頭にタオルを巻いた工事員さんが出入りしてる。

 そういう肉体労働の代表みたいな職の人達が往来するので、やがて相当の割合がうちの常連になってくれる。作業着で四人揃ってテーブル席を占拠してくれたこともあった。当然、店としても儲かる。私の給料も増える。お金がたまった暁にはパソコンを新調しようかと思っていた。その矢先だった。

 若菜さんが工事員さんの一人にこう尋ねた。

 「で、あすこの店、どんな店になさるんです?」

 「喫茶店っすよ。喫茶店。丁度お姉さん位の若い方が切り盛りされるって。」

 別の工事員が言う。

 「茶店というかピザトーストの専門店にする、っておっしゃってましたね。原価が安くて滋養になる、朝食に最適の料理だって。」

 「無添加の食パンに無添加のモッツァレッラを載せるとか。」

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