電車の客・自動車の客

 某日の昼、うちの店に福山のグルメ情報誌の記者が来たそうだ。

 うちの店で出すようなラーメンは「美食」というより熱量・スタミナ補給食と云った方がいいと思うが、もの好きにとってはうちのラーメンも美食なのだそうだ。機能美、なのかな。分らなくもないような。

 月末に当の雑誌が送られてきた。「わざわざ福塩線に乗って食べに来るお客も多数」とか書いてあった。

 間違ってはいないが、東京のラーメン紹介するのに「わざわざ山手線で――」とか書かないだろ。その位、福山近郊の住民にとって福塩線という鉄道は微妙な鉄道なのである。

 基本的に田舎、とりわけ福山近郊ってのは休日に飯を食いに往くにしても、車の免許を持ってる連中は自家用車で大通り沿いの店にありつくのが普通なのである。この辺だと、486 号線沿いに建ってるラーメン屋とか自称台湾料理店(台湾らしき料理がどう見ても名古屋系の「台湾ラーメン」だけ)とか。

 因みに、うちのラーメンを食べに来る人達の一定数は戸手駅から神辺や福山に通勤通学する人で、帰りに戸手駅を降りてうちのラーメンにありつくのである。駐車場が三枠しかないので、自動車の常連はほぼいない。

 戸手から他所よそへ往く折にうちのラーメンを食べる輩もいるが、福塩線の電車に大蒜臭が充満しないか気になる。今の所苦情は来ていない。

 因みに、先程の雑誌、うちのラーメンに対する具体的な感想がまるでないのである。「東京で流行りの豚骨もやしマシマシ系」云々といった、ラーメン自体の特徴は書いてある。

 まあ、私にしても生郎さん若菜さんにしても、味を競う為にラーメン屋を構えてる訳ではない。無論、不味いラーメンを出そうとも思わない。

 雑誌が世に出回った翌日は中学の生徒からちやほやされた。「お前がバイトしてるラーメン屋、W××k に載ってたぞ」云々。W××k に載ったら味が美味くなる訳でもないし、W××k を読んで来たと告げた所でラーメンを値引きする訳でもない(そういう店もあるが)。

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