第138話飯盛城の戦い
1532年(享禄5年)1月
- 京 山城(京都南部) 施薬不動院 -
細川晴元くんから蟄居を申し渡された三好元長さんは、阿波(徳島)に蟄居をせず、京で出家して海雲と号した。遠回しに、細川晴元くんを非難し抗議するための出家。
ただ、三好元長さんが庇護している法華宗系の寺での出家ではなく、俺の施薬不動院で剃髪をおこなった。髪を剃って勝手に法名を名乗り、いつでも還俗しますっていうなんちゃって出家だから懇意にしている寺を使う気にはならなかったのだろう。
実際、出家したとか言いながら畠山義堯さんと謀って木沢長政を攻めるための挙兵の準備を進めているようだ。このまま史実をなぞって腹掻っ捌いて自決も後味が悪いので、山城(京都府南部)山科の総本山が悪さを出来ないよう、いくつか手を打っておく。
まず山科本願寺の近辺で噂をバラ撒く。北近江(滋賀北半分)の坂本にいる僧兵たちが山科を狙っている。守りは大丈夫か?と。
つぎに最近小火という不幸に見舞われた摂津(兵庫南東部から大阪北中部)大坂の一向宗の門徒たちに囁く。『山科が、加賀(石川南部)での敗戦の屈辱を雪ごうとしている。その際大坂の兵と懐を当てにしている。再び天が怒るのではないか?』『仏の意思と嘯き好き勝手やっているのではないか?』と。
つぎに南近江の堅田本福寺の周辺で噂を流す。『山科の蓮淳は破門だけでは満足していない。願証寺と謀って本福寺を物理的にも潰すつもりだ』と。ついでに5貫文ほど布施を匿名で行う。
つぎに伊勢(三重北中部から愛知、岐阜の一部)の願証寺の周辺で呟く。『没落している堅田本福寺を援助するモノ好きがいる』『援助しているのは舅を見殺しにせざるをえなかった北畠の殿様らしい』
で、北近江にある比叡山の延暦寺・・・の麓にある坂本。天台宗の僧兵という
さて、どれだけ一向宗の数を減らせるかな?2割も-削れれば御の字なのだが。
1532年(享禄5年)3月
三好元長さんと畠山義堯さんの挙兵準備に焦った木沢長政が畠山稙長とともに兵3000で挙兵して、畠山義堯さん配下の遊佐堯家を攻めて自刃させるという事件が起きた。ただちに畠山義堯さんは三好一秀さんとともに兵4000を率いて畠山稙長を討ちとる。
木沢長政は居城である飯盛山城に逃げ込み、畠山義堯さんは飯盛山城を包囲し三好元長さんも兵1000を率いて飯盛山城の包囲に参加する。
木沢長政はただちに細川晴元くんに救援を要請。救援を求められた細川晴元くんは対話による問題可決[解決]を選ばず、山科本願寺の本願寺蓮淳を頼った。
本願寺蓮淳は第10世宗主である本願寺証如に指示して「仏敵三好元長を討て」と門徒衆に号令をかける。蜂起した一向一揆軍は和泉(大阪南西部)と河内(大阪東部)と紀伊(和歌山から三重南部)から併せて15000。飯盛山城へ向かって進撃を開始する。ただ、摂津の大坂本願寺からは2000とかなり少なかった・・・いや、十分な数かな。
「如何いたしましょう?」
一向一揆軍挙兵の報告を持って来た服部半蔵くんが尋ねる。
「海雲殿は和泉に逃げると、包囲されて詰みなんだよね・・・大和(奈良)なら安全だろうし何とかなる?」
ちらりと服部半蔵くんを見る。
「そうですね・・・伊賀(三重西部)者を使っても良いですか?」
「手付25貫文で成功50貫文。働き者は俺が長期に雇う。そうそう海雲殿の家族の救出も併せてお願いする」
条件を告げると「御意」と呟いて服部半蔵くんは姿を消す。
そして一向一揆軍15000が蜂起したという情報を手に入れた三好元長さんと畠山義堯さんはただちに撤退を開始。結果としては、畠山義堯さんは居城に戻る前に河内の一向一揆軍兵5000と激突。畠山義堯さんは討ち取られ畠山軍は壊乱。また、和泉顕本寺に逃げていた三好一秀さんは紀伊と和泉の一向一揆軍9000に囲まれで自刃。このとき三好一秀さんは腹を十字に割いて、なだれ込んできた兵に向かって自分の臓物を投げつけるという壮絶な最期を遂げたという。三好元長さんの身代わりになった形だ。
そして服部半蔵くんと合流した三好元長さんは、命からがら大和に逃げ込んだようだ。服部半蔵くんを含めて100人も居なかったという。
で、この一向一揆軍。調子に乗って足利義維さんを阿波(徳島)へと追放。また逃げた三好元長さんを追って大和に乱入した。なぜ三好元長さんが大和に逃げたのを知ったのかは謎である。(すっとぼけ)
そして・・・
「一向宗以外の仏教宗派を近畿から追い出せ!」
本願寺証如や本願寺蓮淳による静止命令を無視して大和に乱入した一向一揆軍は、明らかに標的を変えるのだった。
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