第113話 九州統一
- 肥後(熊本)人吉城 -
毛利氏と実質的に島津宗家を牛耳っていた島津実久との和睦交渉が決裂した。島津氏は、鎌倉時代からこの地に土着している大名主なので、国人と言ってもどこかしらで血が繋がっている。この情報はあっという間に薩摩(鹿児島西部)と大隅(鹿児島東部)の国人の間に広まった。
この状況でまず動いたのは、日向(宮崎)で伊東氏が降伏するまでの状況を斥候に調べさせて、密かに毛利氏への降伏を打診をしていた北郷忠相さんだった。
豊後(大分南部)の西山城から肥後の人吉城に九州侵攻の拠点を移した元就さまの元に単身で訪れると降伏を願い出て、その日の内に承諾された。
石見(島根西部)矢滝城に北郷忠相さんの身内がいたため、毛利氏が大友氏につきつけた条件より若干緩かったというのは後から知ったけどね。北郷忠相さんは一旦日向に戻り、日向で待機していた福原広俊さん率いる毛利軍8000を率いて南下を始めた。攻められた大隅の国人は次々と降伏しているという。
次に行動を起こしたのは愚谷軒日新斎さん、島津貴久くん親子。護衛を50人程を連れて人吉城にご機嫌伺いに来た。愚谷軒日新斎さんにとって毛利氏は借金げふんげふん。もとい資金援助をしてもらっているスポンサー様だ。ご機嫌伺いにきても何の不思議もないという理屈だ。もっとも、周りから見れば愚谷軒日新斎さんが挙兵して毛利軍に合流したように見える。それが狙いなんだけどね。愚谷軒日新斎さんが挙兵したという情報を聞きつけた薩摩の国人や住民が勝ち馬に乗るべく集まってきているらしい。
国人は、毛利氏が大友氏につきつけた条件を受け入れる国人のみ受け入れるとした。なお愚谷軒日新斎さんは臣従していない。今のままでは俸禄の額が悲惨だからね。島津実久の領地とかつての自領を平らげてから臣従することになっている。これも既に愚谷軒日新斎さんの身内が毛利領にいることによる優遇策。
ちなみに島津宗家である島津忠兼・・・今は島津勝久だっけ?島津勝久は島津実久がいる出水城に島津実久と共に籠っているらしい。
「では、
島津貴久くんが頭を下げて出ていった。
「では、戦後の話し合いを行うことにしましょうか」
俺の言葉に、その場にいた元就さま、口羽広良さん。それと九州統一後に内政の責任者(予定)である龍造寺家兼さん、吉岡長増さん、愚谷軒日新斎さんが頷いた。
- ☆ -
出水城は包囲されて三日目に、豊州家の頭領である島津忠朝と先代相州家の頭領だった島津運久の説得によって毛利氏に降伏し開城したよ。
島津実久と島津勝久は隠居して島津貴久くんに島津宗家と薩州家を譲り、家族ともども京にドナドナされる事になった。で、ふたりを京にドナドナするついでに色々と政治的な工作をすることにした。あと、九州で配下になった毛利の次世代を担う若者の教育をすることにした。まあ修学旅行とも言うんだけどね。
「首領。港が見えてきました」
船員から摂津(兵庫南東部から大阪北中部)堺の港が見えてきたという報告を聞いて、俺たちは
「いやー、噂には聞いていましたが、本当に早いですね」
「「「しかり、しかり」」」
大内義隆くんの感想に、島津貴久くん、鍋島清房くん、戸次親守くんが声をハモらせて同意する。
「このような最新の軍船に乗って上京させていただきまして」
「「「「石見介さま。有難うございます」」」」
4人とも隠れて練習していたようだ。物凄く恥ずかしい。
「久しぶりだな。欧仙殿」
赤城を降り、港で出迎えてくれたのは顔に物凄いクマをこしらえた三好元長さんだった。事前に連絡をした訳でもないのに、堺を実質支配している人が出迎えてくれるなんて怖すぎるのだが。
「ご無沙汰しております、筑前守さま。あの、大丈夫ですか?」
三好元長さんとがっちり握手しながら、囁くように尋ねる。
「ははっ・・・山城(京都府南部)の守護代になって最近なにかと忙しくてな」
「おお、確か桂川原で管領軍を撃退されたのでしたな。守護代はその功でおめでとうございます」
「はは、ありがとう。でも活躍なら毛利殿の方が凄いのでは?ああ、宴席を用意させますので、その辺の情報もお教えくだされ」
三好元長さんは本当に嬉しそうに手を上下に振る。
「是非とも。宿を手配して、ご連絡差し上げます」
「楽しみにしておりますぞ」
本当にお疲れの模様。何か三好元長さんが喜ぶものを考えておこうか・・・
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