第55話大天狗(興仙)さんになんとなくバレた
1523年(大永3年)12月下旬
- 石見(島根西部) 矢滝城 -
「がちゃぽんがちゃぽん・・・うん」
いままでに溜まりに溜まったガチャのコモンドロップ品の数々をエクスチェンジボックスに叩き込んで、コインカウンターが最大になったのを確認した俺はガチャボタンに手を伸ばす。
「ぽちっとな!」
不意に背後から声がしたかと思うと、横から手がするすると伸びて来てガチャのボタンをぽちっと押す。
「な、いつの間に!」
手の伸びてきた方を見ると、そこにはとてもいい笑顔の司箭院興仙さんが座っていた。
がしゃごん
大きな音がして、これまでより少し大きめ、全高約180センチはあるSSRゴーレムが姿を現す。ガチャも空気を読んで欲しい。というか、今までのゴーレムといささか趣の違う形をしている。
一番の違いは鉄製らしい鈍色の輝きを放っていること。今までがウッドゴーレムなら、これはアイアンゴーレム。
次に背中越しに脱着式の弾倉を備えた巨大な
「さて城代殿。そろそろお主の正体を教えてくれんかの?」
それまで好々爺とした感じの司箭院興仙さんの気配が変わる。おっかないな・・・
「さすがの大天狗殿でも判りませんか?」
俺の挑発っぽい言葉に司箭院興仙さんはあごに手をやりふむと考えこむ。
「その箱は判りますぞ。城代殿が偶に下賜してくれる名品珍品を吐き出す玉手箱じゃろ?」
「いや、見たまんまですね」
そう言うと司箭院興仙さんはカラカラと笑いだす。
「城代殿は西洋の天狗ですかのう?」
西洋の天狗。ガーゴイルかな?間違っても天使じゃあるまい・・・いや、まて俺はSゼウスさんぽい神の駒だから天使になるのか?
「さて、どうなんでしょうかな?天狗っぽいことは出来ますが」
くだらない葛藤を脳から叩き出し、ヒ〇ドルブとエクスチェンジボックスをアイテムボックスに収納する。
司箭院興仙さんの目には、たぶん一瞬の内にヒ〇ドルブとエクスチェンジボックスを消したように見えただろう。
「うむ。天狗じゃな・・・まあ良かろうて。応仁の騒乱から十干十二支が一巡しても終わらぬ世を治める為に来たのじゃろ?儂も手伝ってやるわ」
司箭院興仙さんは納得したような顔をして部屋を出て行こうとして足を止めた。
「なあ城主殿。箱のボタンじゃが、1週間に一度は儂に押させてくれ」
エクスチェンジボックスのボタンの何が司箭院興仙さんを引き付けるのだろうか?大いに謎である。
-☆-
矢滝城に籠って2日。オリーブグリーンに塗装されたヒ〇ドルブ型バリスタを北山の山頂に設置して1日。夜半からチラチラと降り始めた雪が、本格的となり地面を覆い始めた。雪中行軍大変だろうに・・・ただこれで、雪が溶けるまでは安芸(広島)からの後詰めが期待できなくなった。まあ、あのバリスタが一基あるだけでも大分違うんだろうけど・・・
「城代さま。試射を始めます」
「始めてくれ」
弓足軽小頭の金築次郎がヒ〇ドルブの上に立ち、「目標。麓の藁人形」と目標を告げると、アイアンゴーレムは脇についていた取っ手をぐるぐると回し、背中のバリスタを山の麓に向ける。
山の麓にいる桂広澄さん、司箭院興仙さん、佐波秀連さん、小笠原長隆さんが見守るなか、「放て!」
という命令のもと引き金が引かれる。
しゃしゃしゃしゃ
澄んだ風切り音が響いて、15秒で10本の矢が射出され、麓に置いてあった5体の藁人形に突き刺さる。「おおっ」と桂広澄さんたちが感嘆の声を上げる。ちなみに広澄さんたちは村で動き回るゴーレムを見ているので、今更このゴーレムには驚いてはいない。
「次弾!放て」
金築次郎がアイアンゴーレムに命令すると、アイアンゴーレムは台座にあった弾倉を担ぎ上げ、バリスタ上部の弾倉を挿げ替える。ガシャンガシャンとレバーが引かれ再び引き金が引かれる。
しゃしゃしゃしゃ
再び澄んだ風切り音が響いて、15秒で10本の矢が射出され、麓に置いてあった5体の藁人形に突き刺さる。またもや「おおっ」と桂広澄さんたちが感嘆の声を上げる。
「威力はあるが命中率に難があるな・・・」
山頂から麓までそれなりに距離があるが、藁人形にはそれなりに深く刺さった矢が見受けられるが、刺さった矢は放った矢に対して少ない。
「攻撃が直線的なので竹束や盾で効果が薄まりますね・・・数を揃えれば問題ないでしょうが」
金築次郎も自身が感じたことを言う。弩は記録がある紀元前5世紀の中国、孫氏の兵法で有名な孫臏の時代から日清戦争まで生き残った武器だけど構造が複雑なんだよね。
「すぐには無理だな。ただ初見殺しにはなるだろう。配置や運用は任せる。まもなく敵が押し寄せてくるだろうが、こいつの移動が必要なら遠慮なく言ってくれ」
「はっ」
金築次郎とその部下たちが揃って頭を下げた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます