死神vs流星・白夜【Final・Strike】
握り締めるは夜の星剣・スターゲイザー。白夜の黎剣・シャイニングクリア。
星の熱源、光源が鼓動するように大地にて輝き、今、飛翔せんと空を
対峙する大剣に名前はない。白と黒が混じった灰色の大剣。さながら、燃え尽きた後の遺骨のような色をした大剣が、後背に虚空を背負った形で振り上げられる。
示し合わせる必要はなく、合わせたつもりもない。
が、77度の死闘を繰り返したがためか、互いに意識していた好敵手故か。
繰り出すタイミングは、コンマ1秒の差もなく、重なった。
「
「生ける万象を照らし! 命を燃やし! 息を焦がす!」
【抗えぬ終焉。抗えぬ終結。終わりの体現、終わりの具現が
「億を超える光年駆け抜け届きし光よ、我らが剣に乗り、御身を刃に昇華せん――!」
「光年の距離を圧縮し、原初の星の輝きをまとえ! 究極の輝きを放て!!!」
【炎。雷。水。嵐。破壊の足跡、これぞ死なり。恐怖を躊躇うな。死に抗うな。苦痛なき終焉こそ、人間が神と崇める者の慈悲――故にこの一撃もまた慈悲にして慈愛〗
「「“ディープ・ブルー・アストラル・ノヴァ”!!!」」
【“
もはや詳細を語ることは適わず。
語るような詳細も何もない。
ただ上から降り注ぐ圧倒的質量に対し、抗う青い光が衝突するだけの光景を、一体どのように説明しろと言うのだろうか。
さらに言えば、世界は2つの巨大な力の衝突によって真白に覆われ、暫く停止したのかと思えば、プレイヤー全員が強制的に現実へと、叩き起こされたのである。
そう、プレイヤー全員が。
* * * * *
日本国都市部、某病院管理下入院患者専用医療棟。
「あり得ない。なんの前兆も前触れもなく、突然に――!」
「だが、目の前の光景こそが事実だ」
隣に、女性が寝ている。
髪は長く伸び、未だ火傷跡を残す体が、自分が知っているそれよりやや膨らみを帯びているように見えるのは、果たして衣服のせいだろうか。
隣に、男性が寝ている。
初めて見る髭の生えた顔。未だ火傷跡を残す体が、自分が知っているそれより四角いと言うか、角ばって見えるのは、果たして衣服のせいだろうか。
だがわかった。
疑うまでもなかった。
負けたのだ。言い訳の余地もなく。負けてしまった。
アルタイルとベガは負けた。
だから戻って来た。
2人は互いに、相手へと手を伸ばす。
やや遠い距離。先程まで剣を振っていたはずなのに、何もない腕が重い。
辛うじて伸ばした中指だけがくっ付き、結ぶことが出来た。
お帰り、初。
お帰り、天馬。
実際に声を出すのはまだ出来ないけれど、それでも心は通わせられる。
帰って来たのだ。医者も驚く回復力で、未だ目覚める気配がなかった状態から、まったく同時のタイミングで。
死神を倒して戻ってくることは出来なかったみたいだけれど、結果的に、死神に殺されることで、戻って来れた。
少し癪だし、あれにそんなつもりもないだろうけれど、感謝はしなければなるまい。
だが、お礼言うのは、ずっと先の話になりそうだ。
アルタイルとベガには、暫く眠っていて貰う。
2人でいた時間だけ、天馬と初として、2人で過ごしていたいから。
それこそ死んだように。安らかに。
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