死神再臨

 旋風つむじかぜより竜巻へと昇華された荒れ狂う風の中、死神の五体が浮かび上がる。

 ボロボロだった漆黒の鎧が砕け、新たな装甲――意匠が構成されていく。


 両手の肘までガントレットで覆われ、肩と胸部、腰の部分に装甲が展開される。

 脚部の装甲は靴も兼ねており、ヒールブーツのような作り。

 他、装甲に覆われていない部分は、漆黒を基調とした深紅のデザインが模された――現実世界ではタイツと呼ばれるらしい素材で覆われており、以前までの前進甲冑に覆われた姿と比較して、大分軽装と言えた。


 竜巻に吹かれて乱れ舞う、白と黒の羽が幾つかまとまって死神の周囲を取り囲むと、死神の今までの主武装であった大剣よりも若干小振りのサイズの8本の剣となって、死神の周囲で円を描いて回転する。


 白と黒の剣を4本ずつ携えた死神は自ら竜巻を斬り裂き、姿を現す。


【女神よ、手間を掛けたな。出来れば、このスキルは使わず終わらせたかったものだが〗

〖そうね。でも、あなたの気位よりも、あなたが負けないことの方が大切だわ。それに、ちょっと嬉しいの。約束、してくれたものね】

【……そうであったな〗


 亀裂の入った髑髏の面を取り、自らの握力で砕き割る。

 直後に見せた顔は、一言で言ってしまうと整った美男子のそれで、かつ男らしく凛々しい顔立ちをしていた。

 面の下で眼光を光らせていた双眸は赤と青に色が分かれており、白と黒が混じった灰色の前髪の下で、鋭く光っている。


【これで満足か〗

〖えぇ、充分よ】

【我の素顔を見たいなどと言うのは、せいぜい汝程度だ〗

〖そうでもなさそうよ。この戦いを見てるみんなが、驚いて記録しているもの】

【……そうか。まぁ、いい〗


 死神の周囲を高速回転していた剣が止まる。

 片手に漆黒、片手に純白の剣を取ると、未だ唖然として傍観している2人に一瞥を配って、同時に振り下ろした。


 音が割れ、震動が2人の肌を撫でる。

 遅れて、焦土と化していた地面に亀裂が入った。


【どうせ、記録には残る。なれば記憶媒体には残すまいとする戦いを、双眸から脳裏へと刻み付けてくれようか〗


 死神再臨。

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