無限の食料

”闇”の包丁を手に取るサイ。


「・・・・・」


光に翳したりして隅々までよく見る。

極めて高度な技術で造られた包丁だろう。

しかし霊的な、 魔的な、 そう言う感じはまるでしない。

ただ物凄い良く切れる包丁で有る様に感じた。

試しに周囲の木を切って見たが確かに切れ味は良い。

しかしリーチに難があり、 普段使っている剣の方が良いと判断した。

サイは聖女の娘で剣に付いては一家言有る。

過小評価も過大評価もせずに下した判断である。


「手に入れたけど大して役に立たないかもね

・・・でも持っているだけ良いかもしれない」


そう言って懐に包丁を仕舞うサイ。

そして町に戻った。




「お、 帰って来た」


町に戻るとマックスの部下が待ち構えていた。


「アンタのボスは多分マックスって奴でしょ?」

「何で分かる?」

「カラースプレーとトレジャーハンターには会ったからね

残りはマックスとなる」

「・・・・・」


一気に距離を詰めて喉元にナイフを突き立てるサイ。


「アンタのボスの所に案内しなさい」

「分かった・・・と言うか連れて来いと言われていたしな」


画してマックスの元にやって来たサイ。


「やぁ、 初めまして私がマックスです」

「サイです、 早速ですが取引をしたい」

「取引? 君の事は噂で聞いているが外に出て戦いに協力してくれって事かい?」

「えぇ」

「断る、 私はここの環境に満足しているんだ」

「満足?」

「そうだ、 これを見給え」


マックスは部屋の脇に取り付けられた牢屋の見張り窓を開けた。

牢屋の中に居るのは二人組の奇妙な人型だった。

一人はまるで肉の様な姿で、 もう一人は真っ白だった。


「何、 これは?」

「動物の肉で出来た人間とバターで出来た人間だ

他にも色んなタイプの食べ物で出来た人間がいる

奴等は体の一部分を切り取っても再生する

つまり無限の食料が私の手中にあると言う事だ

そして私はその食べ物を流通させて商売をしている

元手ゼロでここまで出来るんだ、 これで満足しない訳が無いだろう?」

「・・・・・」

「君の包丁は欲しいが手に入れるべきか悩むレベルだよ

そこまで欲しいという訳でもない」

「じゃあこうしましょう、 この包丁をあげても良い」

「本当かね?」

「その代わり、 私がドラゴンスシを倒すのに協力して欲しい」

「ドラゴンスシを倒す? 何故?」


サイは事情を説明した。


「なるほどね、 あの痴女はそんな事を言っていたのか・・・」

「やっぱりあの格好は変よね?」

「まぁな、 私が奴だったら着る服が無かったら全裸になる

ハッキリ言って全裸よりも変質的な格好だし」

「あらら・・・」





登場したSCP

SCP-1630 - 食品人間ピラミッド

http://scp-jp.wikidot.com/scp-1630

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