麺は伸びる前に喰え

厨房にやって来た闇とブタ面の男。


「さて、 おい、 所で醤油は見つかったか?」

「無いですね、 今日調べて回りましたが

この世界に醤油は存在しない様です」


ブタ面の男は報告した。


「そうなると俺のラーメンは封じられたも同然か・・・」

「醤油さえ有れば・・・」

「いや醤油だけの問題じゃねぇ、 この城の小麦粉を見たか?

あれは安いだけの屑小麦だ、 水だけは質が良かった

井戸水らしいが良い水質だ」

「俺にはさっぱりです師匠」

「旨い物を作ろうとしたら拘るだろう」


闇寿司らしからぬ闇寿司の言葉である。

旨ければ強い闇寿司らしい言葉、 しかし闇寿司とは言い難い言葉。

江戸前寿司を極め邪道を極めた闇ならではの言葉だ。


「いずれにせよラーメンに必要な三要素、 麺、 スープ、 具材、 器の内

三つが欠ける、 四要素だった」


器は手持ちが有り、 何度も洗い直せるが具材はそうはいかない。


「如何しますか?」

「とりあえず手持ちのラーメンを喰うか」

「良いんですか?」

「しょうがないだろ、 早くしないと麺が伸びる」


ラーメンは寿司よりも日持ちがしない食材である。

麺が伸びてしまったら何もかも終わりなのだ。


「そういえばこの間秋葉原にラーメン缶が有りましたよ」

「あれか・・・確かに悪くは無い」


糸こんにゃくを使用する事で伸びない麺を造り出す事に人類は成功した。


「だが小麦の方が良い」

「ふむ・・・」


闇が懐からラーメンを取り出し、 受取るブタ面の男。

ラーメンをすする闇とブタ面の男。


「塩ラーメンで行ったらどうですか?」

「ラーメンは醤油が一番旨いんだよ」


個人の感想です。


「自作するしか無いか」

「醤油、 作れるんですか?」

「作り方は分かるし作った事もある、 しかしやはり買って来た方が良いな

プロに任せた方が間違いは少ない」


資本主義の真理、 自分でやるより買った方が手間が少ない。

しかし中世ファンタジーの世界では通用しない論理である。


「魔法で醤油造りだせませんかね」

「出来そうではあるが・・・多分出来ねぇだろ

自分の世界も救えないのに醤油が作れるとは思えない」

「変な理屈ですね」


ズズーとスープを飲み干すブタ面の男。


「でもファンタジーの世界なら色々と調理出来そうな物も有るんじゃないんですか?」

「そうだな、 トカゲ男をさっき見た、 となるとあれかな

不死鳥とかそういう類の生き物も居るのかもしれない」

「不死鳥・・・不老不死になる為に求める人は多いけれど

食べようとするのは師匠が初めてだと思います」

「そうか? 一人くらいは居そうな気がするが・・・」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る