占い

「おめでとうございまーす!第1位はかに座のあなた!今日は素敵な日になるでしょう。強く願えば、いろいろ叶うかも!ラッキーアイテムはリュックサック。」


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「あら小鳥遊さん。学校指定のカバンはどうしたんですか。」

「何をおっしゃいますか先生。これが学校の指定カバンじゃないですか。」

「私には違うように見えるけど。」

「あら、メガネの度数があってないんじゃないですか?それとももう年ですか?」

「そうね。もう年だから、とりあえず下校まで没収させていただこうかしら。」

「なんで年と没収が結びつくの!?ちょ、先生!ごめんなさい!若いですから!先生は若いですからぁ!今日だけは没収見逃してください!」

「今日はロッカーや机の引き出しに教科書などは入れておきなさい。放課後のHRが終わったら返してあげるわ。」

「ちょ、あっ、先生!先生~~~~~!!!わ、私のリュックが・・・」

「あ、朝から賑やかだね・・・。おはよう小鳥遊さん。」

「あ、うん・・・って佐藤!お、おはよう・・・!」

小鳥遊姫子。7月21日生まれ。かに座。

彼女は占いが大好きで、朝の星座占いは必ず見るのだ。

いつもはラッキーアイテムを持ち込んだりしないのだが、今日はわけが違った。

かに座1位。しかも願えば願いが叶うかもしれないという、最高の結果の日。

今日は願いに願いまくって、佐藤との交際、いや婚約できればいいなと考えていたのだ。

願いの内容こそはぶっ飛んでいるが、実に乙女チックなのである。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


7時間目。

ここまで何の進展もなし。

(ま、まあ?ここでくるのよここで・・・。ラッキーアイテムは取られちゃったけど、1位なのには変わりないわ。佐藤と結婚。佐藤と結婚。佐藤と結婚・・・)

「小鳥遊さん。」

「ケッコン!?」

思わず声に出てしまった小鳥遊。

焦る。

「あ、いや、これは、その、ケッコンってのは、えー・・・」

「よくわかったね。ケッコン。」

「え!?え、それはその、わ、私と、というか、この先を一生・・・」ボソボソ

「ん?あのね、ケッコンついてるよ。」

「ケッコン?ついてる?」

「うん。ほら小鳥遊さんの袖のところ。『血痕』ついてる。」

血の痕とかいて血痕。結ばれる方の結婚ではなかた。

「あ、あーこの血痕ね・・・。まあ、そうよね、おかしいもんね・・・」

「痛くないの?」

「気づかないうちに切ってるみたいね。けど、全然痛くないし、大丈夫よ。」

「絆創膏は?持ってる?」

「絆創膏は・・・あのリュックの中、ね。でも放っておけば治るわよ。」

「ダメだよ小鳥遊さん。ほら僕の絆創膏あげるから、ちゃんと貼って。」

佐藤は絆創膏を取り出す。

「ほら小鳥遊さん。手出して。」

「ひぇ!?て、手!?」

「片手じゃ貼りづらいでしょ。ほら早く。」

(す、素直に・・・、素直になるのよ・・・)

「じ、じゃあ、はい・・・」

佐藤が小鳥遊姫子の腕に絆創膏を貼る。

「ど、どうも・・・」

「うん。」

無言で小鳥遊姫子は佐藤の机に何かを置く。

「小鳥遊さん、これ。」

「お、お礼よ・・・!受け取っておきなさい・・・!」

「あ、ありがと小鳥遊さん。」

小鳥遊姫子があげたのはチョコレート。彼女なりの精一杯のお礼かつ愛情表現である。

「小鳥遊さんって優しいね。」

「べ、別にそんなんじゃないし!してもらってだけじゃなんかむずがゆかっただけだから!」

「お礼してくれるだけでも十分に優しいと思うけどな。ホントに優しくない人ならお礼なんてしないよ。」

「だ、だから別にそんなんじゃ―――」

「僕、将来は小鳥遊さんみたいな優しい人と結婚したいな。」

「え?」

「い、いや、なんでもないよ。じゅ、授業受けよ・・・!」

(僕なんだか変な事言っちゃった・・・!聞こえてなきゃいいけど・・・。聞こえてたら絶対キモいやつ判定されるよ・・・)

(『小鳥遊さんみたいな優しい人と結婚したいな』『小鳥遊さんみたいな人と結婚したいな』『小鳥遊さんと結婚したいな』『小鳥遊と結婚したい』・・・。ぎゃあああああああああああああ!!さ、佐藤、わ、わわわわわたしと結婚したいって言った!?言ったよね!?き、聞き間違いかもしれないけど、『私と結婚したいって言った?』なんてはずかしいこと聞けないし・・・。もーー!!むずがゆいんですけどぉぉぉぉ!!!)


ラッキーアイテム、持ってきて大正解。


小鳥遊姫子の挑戦はまだまだ続く。

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