第158話
「そうではない。もはや主上の御心に、かのお方はおいでにはなられぬ。その様な事、そなたが一番存じておろう?」
すると雛は一瞬喜んでいるような、否々不満であるような、それは複雑な表情を浮かべた。
「御父院であられる法皇様とは、かのお方以外にもいろいろとあるのだ。此度その御父院様から御母君様であられる、亡き中宮様の事をお聞きになられた……主上が抱きし青龍の強過ぎる力が、亡き御母君様を死に追いやり、御父院様の御心を乱れさせ、譲位へと追いやられたとは……」
「はて?母御が薨った事と青龍が、如何して関係致すと申すのだ?」
「青龍の力が大きいばかりに、御母君様は全ての力を青龍に取られ、その御身を弱らせられ薨られたのだ……ゆえに、最愛なる中宮様を亡くされた法皇様は、御誕生間もない主上に譲位され、法皇となられてしまわれたのだ……」
伊織は、心痛な表情を浮かべて言った。
「その様な事、誰が申したのだ?」
「法皇様であろう?……他に知る由も無い事だ」
雛は伊織の真顔を見つめて、視線を外らせた。
……ここの処、時を止めろと言わぬはその所為か……
雛は一向にその身を寄せて来ようとしなくなった、今上帝を遠目に見て納得した。
それが未だにあの
雛は未だ嘴の黄色い雛だから、だからあの
雛ゆえに痩躯で、今上帝が望む事の無い我が身とは違い過ぎている。
あれ程を知る今上帝ならば、もはや雛の痩躯など用無しなのも合点がいく。
つまり雛の痩躯には今上帝は目もくれず、少女を愛おしむ様に抱擁し愛おしんでいるのだ。
大人のそれを求めてはくれない。
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