第129話
「しかしながら、神仏が中宮様をお諭しに参られているという事は、皇子様であるという事かと……?」
神妙に語る朱明に、伊織は驚愕の目を向ける。
外見からはとても、そこまで見通せる者には見えないからだ。
「青龍は力を欲します。それは権力も含まれ、この宮中にはそれが豊富に存在致します。そしてその力は、この宮中の中では転がりやすい物にございますゆえ、あるべき処より、持って行こうとする輩が出現するも事実。その権力を得る為となるものがあるも事実。古の昔より、それを得て力を手に入れた者達は、数多と存在致します。ゆえに青龍は、それすらも好んで食うのでございます……つまりは主上様より、力を持って行くが可能である皇子様ならば、青龍は好んで食うという事でございます」
「……ならば、如何致さばよいのだ?」
伊織はそれでも、いいと思っている。
今上帝が脅かされる事がなくなるのであれば、それはそれでいい。力はあるべき処にあるべきであって、決してそれを転がしてよい物ではないし、かつてその道理で、青龍を抱きし摂政は青龍を奪われ、その地位すらも追われたのだから……。
ただ伊織は己の立場上、聞かねばならぬから聞いただけだ。
だがそれは、伊織が一番聞きたい答えを、陰陽師に言わせる事となった。
「腹の御子様に、主上様の御力を決して譲らぬ宣言をなさるのです」
「宣言とな?」
伊織は身を乗り出して、朱明を見つめる。
「本来ならば、中宮様から主上様に全てを告げ、謝罪をされた上で御子様には、その力を得る資格の無い事を、申し出られねばなりません。それゆえ神仏に、諭されておいでかと存じます」
「……悪夢ではないのか?」
「正直な御心でお聞きあそばされれば、それは決して悪夢とはなりますまい?しかしながら、それら全てを否定したい、御心がおありならば?それらは悪夢となり得ます」
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