2.ジン
「うわー、だれ? どうやってランプから出たの? 煙も出てなかったよ」
王子は目の前にいる男と壊れたランプを交互に見つめた。
「煙ってなんだよ? あっ、おまえ今オレのことランプの魔人だと思った? バカじゃねーの? そんなのいるわけねーじゃん」男はやれやれといった表情だ。
「えっ、じゃあ。だれなの?」王子が尋ねる
「ジンだよ」男はボソッと言った。
「えー! ジンって、やっぱランプの精じゃないかー」王子が男を指差して喚いた。
「うるせーな、ジンって名前なんだよ」
「えー、じゃあ、ジンはなんなの? 魔人じゃなかったら、なんなの?」
「霊、だな」と言うと、男はニヤリとした。
「霊……、精霊じゃなくて?」王子は後ずさる。
「あ? そうだよ。霊だよ。悪いか?」ジンが笑っている。
「な、なんで、霊が魔法のランプから出てくんだよ」王子の声は少しだけ震えていた。
「はぁ? ランプからなんか出てねーよ。さっきからいたよ」ジンはそっけなく言った。
「さっきから?」
「そうだよ、お前が寝てるから気づかなかっただけだろ?」
そうなの?
王子は少し考えたが、気にしない事にした。
「まあいいや、じゃあ、ジンは何してるの?」
「なんもしてねーよ。何かしてるように見えるか?」
ジンが、ほらっという感じで腕を広げている。
「見えないけど、じゃあ、なんでいるの?」幼い王子が核心をつく。
「おー、ガキのくせに痛いとこつくな。そうだな……」
そういうとジンは少し考えて続けた。
「おまえの望みを叶えてやるためにいるんだよ」ジンはまたニヤけている。
「えっ、やっぱ願いを叶えてくれるの? やっぱりジンなの?」
王子の碧い目が輝きだす。
「おー、なんでもいいぞ、言ってみろ」ジンは相変わらずニタニタしている。
「わかった」
王子は手に持っている壊れたランプを見つめて考えた。
「あっ、じゃあ、このランプを直して!」
王子はすごい良いアイデアを閃いたと思った。
「ランプ? あぁ、それは無理だ」ジンはあっさりそう言って続けた。
「それになんだ? もっと、こう大きな夢みたいなのはないのか?」
王子はジンにそう言われると改めて願い事を考えた。
「うーん、じゃあ、世界平和!」
王子は唐突にそう言った。
「世界平和? ガキのくせにまたとんでもないことを言うな?」
ジンは感心しているのか驚いているのか分からない。
「へへー、僕は王子だからね」王子は得意げだ。
「お前、王子なのか?」またジンは驚いている。
「そうか、王子か、よし、分かった。じゃあ、その願いを叶えてやろう」
ジンはそう言うと、怪しげな手付きで王子の頭に念を送るような仕草をした。
「よし、願いは叶えたぞ」
王子はきょとんとしている。
「え? もう?」
「そうだ。まあ、今すぐではないけどな。お前が大きくなった頃には叶うだろうよ」
「ふーん、大きくなったらか……」
王子は少し残念そうだった。
「あっ、そうだ。そこの奥の宝箱にいいものが入ってたぞ」
王子の残念そうな顔を見たからか、ジンはそう言って奥の部屋を指した。
「えっ、宝箱? どこどこ?」
王子は再び目を輝かせて奥の部屋へ走って行った。
ジンの言った通り、奥の部屋には宝箱が置いてあった。
王子は、宝箱にしがみつくと、小さな体を目一杯使い、重たい宝箱の蓋を開けた。
そこには、緑に輝くヴォーアム王家の紋章があった。
「やったー! すごい! お城の紋章だよ! ジン見て」
王子は嬉しそうに王家の紋章を抱えてジンのもとに戻って行った。
「あれ? ジン? どこにいるの? ねえ、ジン!」
王子は先ほどまでジンの居たところに戻ってきたが、そこにジンの姿はなかった。
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