6.伐採

 なんだ? 今のは?

 王子は村の裏口の前で立ちすくんでいた。

 鎧からは薄っすらと青白い光が立ち込め、体中に汗をかいていた。

 王子は、幻覚を振り払うかのように、大きく頭を左右に振った。

 そして、大きく深呼吸をして辺りを見回した。

 相変わらずの暑さで、畦道が陽炎に揺れている。夏草の匂いが辺りを埋め尽くしている。

 真夏の日差しに夢でも見せられたのだろうか?


 改めて納屋の位置を確認したが、今度は左手の小道沿いに森へと向かった。

 ほどなくすると、あたりは木々に包まれ、暴力的な暑さが少し和らいだ。


 枝集めか、大ぶりの枝ってどのくらいの大きさなんだ?

 王子は辺りに落ちている小枝を拾いながら長さを確認していた。


 その時ふっと背後に気配を感じた。

 驚き振り向くとそこには、まさに枝人間と表現するのがふさわしい魔物の姿があった。

 王子はすかさず銅の剣を抜き、顔と思しきあたりを切りつけた。

 すると枝人間は恐ろしい悲鳴をあげ、腕らしきもので切りつけられた顔を押さえた。

 今だ! 王子はガラ空きになったひょろひょろの胴体を真横から切りつけた。

 とうもろこしの茎を切り落としたような感覚が手に伝わり、バッサリと胴体から切り離された枝人間の上半身が地面に転がった。


 手応えが気持ち悪いな。


 王子はそう思いながら枝人間の枝を見つめていた。

 幻導師の枝だ。きっとこのことだろう。

 王子は、枝人間から足の部分を切り落とし、大きめな枝を手に入れた。


 あと二本くらいか?

 あたりを見回すと、暗がりに蠢く枝人間が何体もいることに気づいた。

 さて、伐採の続きだな……

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