第63話 体育

二学期が始まり、早くも2週間がたった。

今年の夏休みは、いつも以上に楽しかった。

ハードな練習や合宿。

プール

楓と秋大の倦怠期など、なかなかいろんな事があった……


今日は曇り、少し風が冷たくなっているが、外で体育がある。

今日の体育では、グラウンドを男女で2等分し、それぞれサッカーを行う。

男子は教室で着替え、グラウンドに向かう。

グラウンドにはもう着替えている女子がたくさんいた。

この時期に、水遊びしている男子も数人いた……

グラウンドに入り、少し先に七菜美が見えた。

七菜美もこちらに気づき、小走りで向かってくる。

その時、水が七菜美にどっさりかかった。


「きゃっ!」

「あ……ご、ごめん坂石さん!」

「いいよいいよ!気をつけてね〜」

「……っ!」

「ん?どうしたの……わっ!」


慌てて手で胸を隠す。

そう、透けていたのだ。

このままだと七菜美が風邪をひきかねないし、何より周りに七菜美の体をやらしい目で見られるのは耐えきれない。

俺は自分の着ていたシャツを脱ぎ、七菜美に差し出す。


「ん?」

「風邪ひくだろ。着替えてこい。交換だ」

「え……でも……」

「ちょっと暑いし、少し濡れたくらいが俺はいいの!だから気にすんな!」

「わ、分かった。ありがとう!」


そう言って俺の手からシャツをとり、女子トイレに急いで入っていった。


「おいおい!露出魔かよ!あははは!」


後ろから、秋大と駿介がやってくる。

今の俺の状態は上裸。

なかなかヤバいやつのカッコだ。


「まあ、そんなとこだ!ははは!」

「うわ〜引くわー!てか寒くないのか?」

「さ、寒いわけないだろ!むしろ暑いぜ!」

「坂石さんに暑いとか言っちゃったもんな〜」


げっ、聞いてたのかよこいつら……


「まあ、風邪ひくなよ〜」


そう言って2人はみんなの並ぶ列に向かっていった。

2人の向かった方からやけに視線を感じるが、無理もない。

先生が来るまでに着ないと生徒指導……

その時、勢いよく後ろの扉が開いた。


「お待たせ!って、春樹変態みたいじゃん」

「うるせー!はよ七菜美の貸してくれ。」

「はい。ほんとに大丈夫?風邪ひかない?」

「大丈夫だって!ひいたら七菜美が看病してくれるだろ?」

「うん!」


冗談っぽく言ったのに……

いいのかよ!!

急いで湿った七菜美のシャツを着る。

いい匂いがするが、やはり寒い……

まあ、我慢すれば何とかなる!

そう思い、俺も列に向かっていったのだった。


先生が来て、点呼をとる。


「今井!」

「はい!」

「よし……ん?なんで坂石のを着てるんだ?」

「え……まじか!七菜美のかよ!すみません!どこかで入れ違ったようです。もう、汗でびちょびちょなので今日は許してください!」

「まあ、汗かいたのを返すのもな……次からはちゃんと確認しろよ」

「はい!すみませんでした!」


俺の作戦通りに話は終わった。

こうすれば、七菜美も、水遊びしたやつも、誰も悪いことにはならない。

我ながら素晴らしい作戦だ。


この授業を機に、何故か女子からの株は上がり、七菜美が少し不機嫌になったのだった……



~あとがき~

次は、春樹がフラグ回収した後の話になります!

お楽しみに!

これからもよろしくお願いします!

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