第59話 忘れ物

夏休みは割とあっという間に過ぎていった。

ダブルデートを1週間後に控えた今日であるが、突然楓ちゃんから電話がきた。


「もしもし楓ちゃん?」

「やっほ〜元気かな?」

「元気だよ!そっちは?」

「私も元気だよ!……ところで七菜美ちゃん水着持ってる?」

「あ……」

「今から暇なら一緒に買いに行かない?」

「ありがとう!じゃあ、30分後に駅前で!」


プールを楽しみにしていたくせに、水着の事をすっかり忘れてしまっていた。

スク水ならあった気が……

あれなら春樹も……

って何考えてるの私!

とにかく危なかったな……

急いで準備を済ませ、集合場所の駅に向かった。


「お〜い!七菜美ちゃん〜!待った?」

「やっほ!待ってないよ〜!ありがとね、すっかり忘れてたよ」

「そんな気はしてたんだ〜それに、少し話したいこともあったし……」

「話したいこと?」

「うん。最近春樹とどう?」

「毎日連絡はとってるし、たまに電話するし、どうって言われるとな……まあ、幸せだよ!」

「それなら良かった!そういえば春樹と話した時春樹なんて言ってたの?」

「えっとね……」


この前、保健室で春樹が言ってくれた事を私は楓ちゃんに言った


「へぇ〜春樹がそんなことを……七菜美ちゃんを好きになって春樹はどんどん変わってるな〜」

「え?そ、そうなの?!」

「そうだよー!自分の身だしなみはこれでもかって言うくらいチェックしてるし、勉強も凄い頑張ってるしさ……」

「そ、そうなんだ……」

「愛は人を変えちゃうんだな〜なんてね!」


あまり人のいなかった電車を降り、ショッピングモールに向けて歩き出す。


「七菜美ちゃんはさ、好きってなんだと思う?」


突然の質問に驚いた。

好きが何かなんて、考えたこともない。

少し考えながら、自分の思う好きを言ってみた


「何となく、好きとはこれ!っていうのはないと思うんだけど、私の思う好きは……その人と一緒にいたり、話したり、メールをしているだけで幸せと思えたら、好きなんじゃないかな……」

「なるほどね〜」

「いきなりどうしたの?」

「何となく、聞いてみただけだよ〜」


には、何か悲しそうな、不安そうなものが入っている気がした……



「これなんてどうよ!」

「え……これは少し面積が小さいというか……」

「春樹を食べちゃう気で行かなきゃ!」

「えっ?!い、いや、まだそういうのは早いと言いますか、なんと言いますか……」

「冗談だよー!あれ?七菜美ちゃん、結構エッチだったりするのかな〜?」

「う、うるさい!」

「ごめんごめん。ん〜ほんとにどれがいいかな……」

「春樹って何色が好きなんだろ……」

「確か赤だったね……こんな派手になるけど」

「これは少し派手すぎる……無難に黒とかどうかな……」

「いいんじゃない!七菜美ちゃん見た目は大人っぽいし!」

「見た目はってどういうことかな?」

「な、何でもないよ〜あははは」


こうして、楽しい買い物が終わった。

外は夕日のオレンジが空を覆っている。


「今日はありがとう!」

「いえいえ、楽しかったよ!また来週ね!」


楓ちゃんと別れ、家に向かって歩き出す。

春樹、喜んでくれるかな〜

私の足取りはいつもより軽い気がした。




~あとがき~

次回、ダブルデートスタートです!

もう学校が始まりますので、平日の更新はあまり出来ないと思います。

ご了承ください。

これからもよろしくお願いします!

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