第47話 きっかけ

今年も夏休みが始まった。

小学5年生の今でも、未だに人見知りな私。

友達もいないので、正直夏休みなんかどうでもいい。

唯一楽しみといえば、読書くらいだ。

おばあちゃん家にはいろいろ本があるので、今日もおばあちゃん家に来ている。

隣の街で、家からは歩いて40分程で着くため、近くてとても便利だ。

だが、おばあちゃん家にある本もほとんど読んだので、何だか新しい本が欲しくなった。

財布をカバンに入れ、ボサボサな髪のまま家を出る。

両親に連れて行ってもらおうとしたが、何やら忙しそうなので1人で行くことにした。

歩いて行ったことは無いが、どうにかなるだろう……


案の定、どうにもならなかった……

そう、迷子になってしまったのだ。

この歳ながら……

行き交う人に、聞こうとするが、人見知りが発動してなかなか声が出ない。

勇気をだして「あ、あの……」と話しかけても、無視される。

私がもっと可愛かったら良かったのかな……

努力もせずに何考えてんだ……

そう思いながら、近くにあった公園に自然と入っていった。

公園には誰もいなかった。

ブランコが空いているのが目に入り、そのブランコに座り、こぎはじめる。


私は自分が嫌いだ。

直したくても直せない人見知り。

可愛くなったらな……なんて考えるくせに努力なんてひとつもしない。

そんなこと私が私は嫌いだ。

好きな人でも出来れば、変わるのかもしれない。

人は、何かきっかけがないと変わらない……


何かが悲しかったのか、自然と涙がこぼれてきた。

こんな泣き虫な私も嫌いだ……


「おーい。どうしたの?」


俯いた顔を上げると、ハンカチを差し出す男の子がいた。


「とりあえず、涙拭きなよ」

「え?あ……」

「はいどーぞ」

「あ、ありがとう……」


彼からハンカチを受け取り、涙を拭く。


「で、どうしたの?」

「えっと……その……ま、迷子になっちゃって……」

「俺この辺に住んでるからこの街はほぼ知ってるよ!どこ行くつもりだった?案内するよ!」

「え……?ほ、本屋さん……」

「ほんとに!?俺も今から行く予定だったんだよね〜一緒に行こうよ!」


久しぶりに他人と話した。

久しぶりに人の優しさに触れた。

彼は人を助けることに見返りを求めていない。

彼にとっては、助けるのが当たり前なのだろう。聞いた訳でもないが、そんな感じがした……


「名前はなんて言うの?」

「さ、坂石七菜美……」

「坂石さんか〜俺は今井春樹!ちなみに5年生!坂石さんは?」

「同じだよ……」

「同級生なんだ!今日はおばあちゃん家にでも来たの?」

「……うん……家は隣の街にある」


彼が質問したりしてくれたおかげで、自然と話すことが出来た。

とても短い時間ではあるが、私は彼の優しさに惹かれていた……


本屋さんでは彼がおすすめの本を紹介してくれた。私はその本を買った。

本が好きなことを言うと、彼は

「本って面白いよね!でも国語は苦手なんだよな……あはは」

初めて趣味を共感出来た。

国語が出来ることを自慢してみると、

「へ〜凄いな〜!何か得意なことがあるのは、やっぱりかっこいいよねー!」

初めて人に認められた気がした。


帰っている時、私は無意識に彼に質問していた。


「好きな女の子のタイプって、どんな子?」

「あははは!急にどうしたの?えっとね……綺麗な黒いロングヘアで、スタイル良くて……まあ、一緒にいて幸せってのが一番かな!」


そこからも少し話した。

彼と別れ、おばあちゃん家に戻る。

私はこの時決心した。

いつか彼に会った時に惚れさせられる女性になってみせる!と……

そう、私に変わるきっかけをくれたのは今井春樹と言う男の子。

私の初恋の人だ。



~あとがき~

次回は現代に戻ります!

2000PVありがとうございます!

これからもよろしくお願いします!

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