第14話

葉子は急に立ち上がり。


「それじゃ、私は夕食を準備するわね。お父さんは一雄と一緒に待っててもらえるかしら?」


「ああ、分かった。」


「すぐに用意できると思うから。」


そう言って葉子は台所へと向かった。一雄はテーブルの急須から庄之助にお茶を入れた。


「はい、おじいちゃん。」


「おお、ありがとう。」


庄之助はお茶を啜った。一雄は目を輝かせ問いかけた。


「ねぇ、桜の精さんは来てないの?」


「ん?ああ、桜の精も死神も来とらんよ。」


「死神?」


「いや、言い間違えじゃ。桜の精は来とらんよ。」


「ふ〜ん、残念だな。」


一雄は少しうなだれるもすぐに首を上げ。


「ねぇ、おじいちゃん。」


「ん?なんじゃ?」


「僕ね、明日学校の図書館で桜について色々調べて見たいんだ。」


一雄はそう言いながら自分のランドセルからノートを取り出した。


「そうか、それは良い事じゃ。」


「でね、おじいちゃん家の桜はなんて名前だっけ?」


「あの桜は江戸彼岸と言うんじゃ。」


「えどひがん。」


一雄はノートに[えどひがん]と平仮名で書いた。


「漢字はこうじゃよ。」


庄之助は一雄が書いた下に[江戸彼岸]と書いてあげた。


つづく

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