第13話

スレイブは桜の精の魂を自分の中に取り込み、新たな力に変え庄之助に与える事にした。


その昔、同じ様な事を行った覚えがあった。ある子供の魂を迎えに行った時だった、その子供の親に姿を見られてしまった事があった。子供が死んだら自分も自殺するつもりだったのだろう。その子の親はスレイブにこう言った。


「私の命はいりません、代わりに息子の命は助けてください。」


そうせがまれたスレイブは親の寿命の半分を取り込み息子へと与えた。このスレイブの行動によりこの親子はその後10年以上生き延びる事ができた。しかし、天界へ魂を連れて行かなかったスレイブはこっぴどく怒られた。二度とやるまい、そう決めたはずだったがまたやってしまうようだ。人が、いや死神がいいにも程がある……。


「今回は代わりに桜の精の魂を連れていく。それで何とかなるだろうか……。」


スレイブは1人呟いた。


「さて、庄之助さんは?」


スレイブは桜の力を庄之助に与えるため庄之助を探したが、どうやら家には居ないようだ。


「一体どこに?」


庄之助は死の宣告を受けている、向かうとすれば孫の住む谷山家だろう、スレイブは谷山家へと向かった。




──谷山一家の住むマンション


マンションの一室、庄之助と谷山葉子と一雄がテーブルを囲んで会話をしている。


「でもびっくりしたわ、急に一緒に食事したいなんて。今まで誘っても断られてばかりだったのに。」


葉子が不思議そうな顔で話している。当然明日庄之助が死んでしまう等思いもよらないであろう。


「ああ、ちょっとな……。迷惑じゃったかのう?」


庄之助にいつもの元気がない。


「いいえ、迷惑なら初めから誘わないわよ。一雄も喜んでいるし。ねぇ?」


一雄はまるで子犬のように庄之助の傍により。


「うん!おじいちゃんと一緒にいられる時間が増えて嬉しい!」


「そうか、ありがとうな。」


庄之助は少し間をおき時計を見た、時間は19時を回っていた。


「正彦くんは今日も遅いのか?」


「あの人は目が離せない患者がいるらしくて、昨日から病院に泊まり込んでいるの。」


「そうか、大変じゃのう医者というのも。」


「そうね、大変なお仕事だけどやりがいがあるって。それにあの人が医者を目指してなければ私も生きていなかったかも知れない。あの人には感謝してるの。その仕事を支えて恩返ししているつもりよ。」


「そうじゃったのう。」


庄之助と葉子は昔を思い出し物思いにふけっている。一雄は自分だけ除け者の様で面白くないといった表情をしている。


つづく

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