第85話撃破

 私には分かりました。

 属性竜がブレスを放とうとしているのが。

 今なら、丁度ブレスを放とうと口を開けている属性竜の口に、属性竜牙骨真銀槍を叩き込み、脳まで届かせることができると。

 私は躊躇うことなく、ほぼ無意識に全力で属性竜牙骨真銀槍を放ちました。


 私は全ての想いを込めて放ちましたが、それで惚けたわけではありません。

 二手三手と攻撃の手を緩めません。

 一手に全てをかけて、逍遥と死を迎えるようの性格では、冒険者は務まりません。

 足搔いて足搔いて、最後まで諦めない性格でなくては、冒険者になっても死んでいくだけなのです。


 属性竜のブレスを回避するためにも、次の攻撃を放つためにも、属性竜の側面に回って、耳から脳に届く角度で属性竜牙骨真銀槍を放ちます。

 一瞬も機動を止めず、そのまま属性竜の後方に回り込みます。

 最初に放った属性竜牙骨真銀槍が、ブレスで跡形もなく消滅させられています。

 何という威力のブレスでしょう!

 今まで戦った属性竜の中でも、最も破壊力のあるブレスです。


 二つ目に放った属性竜牙骨真銀槍が、属性竜に突き刺さりました。

 属性竜が避けようと動いたことで、わずかに角度が違ってしまい、鱗を皮と貫き、頭蓋骨は砕くことができたようですが、脳を破壊するまでには至っていません。


 ですが、脳震盪を起こすことには成功したようです。

 抵抗されることなく、属性竜の後頭部に近づくことができました!

 最大の力で攻撃するよりも、過去解剖した属性竜の頭蓋骨の構造を思い出し、正確に骨の隙間に属性竜牙骨真銀槍を叩きこむことを優先します。


 最大の力でなくても、身体強化された私の力は凄まじいのです。

 属性竜の鱗と皮であろうと、易々と貫くことができます。

 属性竜の牙を槍先に使っている事、この属性竜と出会う前に他の属性竜を斃せていた事、斃した属性竜の素材を自分のモノにできた事、そのすべてに感謝です。

 確かに脳に槍先が到達しました。

 手持ちの魔術書の中で、最大の破壊力がある書を解放しました。


 属性竜牙骨真銀槍から属性竜の脳に、魔術が伝わるのが分かります。

 属性竜の脳が破壊される感覚が伝わってきます。

 脳が破壊されたのに、いえ、破壊されたからこそ、属性竜は反射的に動きました。

 脳が破壊されたことによって、身体中に異常命令が伝わったのです。

 その動きに巻き込まれたら、私などバラバラに破壊されてしまいます。


 一瞬で属性竜から離れました。

 脳が破壊されてから、身体が動きを止めるまで、どれくらいの時間が必要なのでしょうか?

 ブレスまで反射で放ったりしないでしょうね!

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