第75話身体強化

「姉上! 

 姉上が眼を覚まされました!」


 頭が痛いです。

 頭だけでなく、息をするたびに胸も痛みます。

 

「マリア姉上」

「よかった!」

「マリア姉上!

 私です!

 クリスティアンです!」


 もう少し静かにできないモノでしょうか?

 大声が頭に響くのです。


「静かにしてやんな。

 あれだけのケガをして死にかけたんだ。

 薬の飲み過ぎで副作用が出ているはずだ。

 もう少し眠らせやんな」


 ドウラさんの声がすると思ったと同時に、また激烈な睡魔に襲われ、たわいもなく眠ってしまいました。


 それからの日々は、覚醒と睡眠を繰り返す、何もできない日々でした。

 属性竜素材を使った薬の効果や副作用は、ほとんど検証されていません。

 それを大量に使用した私は、ある意味人体実験の被験者です。

 結果分かった事は、四肢が千切れ内臓がぶちまけられ、胸部が半分なくなるような状態であっても、元通りに回復するという事です。


 ですが、副作用もあるのです。

 欠損していた場所が元の身体になじむまでは、結構痛みがあるのです。

 脳と欠損部が再結合するまでは、元通りの力は発揮できません。

 ですが元の能力や経験をなくすわけではないようで、真剣に再訓練を行えば、十日程度の元の状態に戻るという事です。


 いえ、元通りではありません。

 私の場合は、斃した属性竜への攻撃のほぼ全てを独占しました。

 以前から分かっていた事ではありますが、魔法で斃すよりも、物理攻撃で斃した方が、身体強化の度合いが強いのです。

 

 まあ、これは、魔法で斃した場合には、魔力と身体強化の両方で経験値が消費されるからだという推測が、前からありました。

 特にエマとニカは、二人で斃すので経験値も半分ずつです。

 当初は、あまりの経験値取得と身体強化の差に、哀しい思いをしたこともありますが、単独で亜竜種を狩れるようになってからは、気にならなくなりました。


 問題は今回の身体強化を正確に話すかどうかです。

 まだ実戦の狩りをしていませんから、私も正確には言えません。

 ですが、再訓練中の感覚では、想像以上に身体強化がされています。

 もしかしたら、属性竜と対等に戦えるかもしれません。

 まあ、属性竜の強さも、個体差が大きい事を私達は知りました。


 最初に斃した程度の属性竜だったら、互角で戦えるかもしれない感覚があります。

 でもそんな報告をしてしまったら、皇室から危険視されてしまうかもしれません。

 しかし下手な手加減して、仲間を死傷させてしまうのも怖いのです。

 全力で戦うのは簡単ですが、加減して戦うのはとても難しいのです。

 私は、どうすればいいのでしょうか?

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