第70話三頭目の属性竜

「属性竜を見つけました。

 追いますか、誘いますか」


「追うよ。

 一気に斃すよ」


「「「「「おう!」」」」」


 幸運でした。

 いつもより奥まで大魔境に入ったとはいえ、探し始めて直ぐに属性竜を見つけることができたので、狩りに使える時間が長いです。

 これがヨジップ第三皇殿下を鍛錬する役目直前だったり、役目時間の少し前だったら、殿下を加えて狩ることになります。

 それはあまりに危険で、狩りを中止しなければいけない可能性もあるのです。


 殿下自身は死も恐れないと言われるでしょうが、参加させるこちらはそうはいかないのです。

 狩った属性竜の素材を皇室に献上しろとか、半分よこせと言われるだけなら、それほど躊躇いませんが、殿下に属性竜の止めを刺させろと言われたら、とても困ってしまうのです。


 絶対に不可能ならば、私達も厳しく諌言し止められるのですが、可能なのかもしれないところが、とても困るのです。

 今のヨジップ殿下は、初めて属性竜を斃した頃の私達と、それほど実力に違いがないのです。


「エマ、ニカ。

 一気に斃すよ。

 手加減なしに眼から脳を叩き潰しな」


「「はい!」」


 今回の属性竜は、前回の属性竜と違って、ずいぶんと人間を舐めているようです。

 私が偵察していても、逃げる事も攻撃することもありませんでした。

 パーティー全員で取り囲み、狩る準備を整えても、全く動じません。

 これが油断なのか、それとも自信なのかは、実際に狩りを始めればわかる事です。


 私達は属性竜を舐めたりはしません。

 金に糸目をつけずに用意した身体強化と防御の魔術書で、重ねがけ出来る限り重ね掛けして、事前の準備をしました。

 エマとニカの魔力を温存するために、魔術書は他の魔術師に作ってもらっていますし、二人が緊急で魔法を使わなくていいように、事前に使用しておくのです。

 それに長期戦も考慮して、予備も含めて多めに携帯しています。


 激烈な、属性竜の頭部を破壊するかと思えるほどの、圧倒的な魔術をエマとニカは叩きつけたのですが、一撃で斃すというわけにはいきませんでした。

 エマとニカがシンクロした激烈な攻撃魔法を、今までの属性竜なら斃せたかもしれない攻撃魔法を、今回の属性竜は防御魔法で防いだのです!


 でも、完全に防いだわけではありません。

 顔面頭部に大きな傷を負っています。

 特に大きかったのは、両目を損傷させたことです。

 今なら立て続けで攻撃を繰り返すことが可能です。

 属性竜に広域同時攻撃能力があったとしても、もうこれ以上重ねがけ出来ないくらいの防御魔法をかけています。

 ここは一気呵成に攻め、狩るべき時です!

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