第61話甘味
「お姉様はこちらで甘味を食べられた事がないのですか?
私達には、送金してくださったお金でお汁粉を食べろとか、カステラを食べろとか、栗菓子が美味しい季節だよとか、手紙まで送ってくださっていたではありませんか?」
私がうかつでした。
何気ないマリアの質問に、何も考えずに答えてしまいました。
これで私が、魔都に来てから、自分の私的な事に銅貨一枚使っていない事がばれてしまったのです。
私は、下手な貴族では考えられないくらいの、莫大な金額を使っています。
ですが、それは全て、狩りに必要な武器や防具ばかりです。
貧乏生活が長かったせいで、私的な晴れ着や甘味には、全くお金を使っていなかったと、今更ながら思い出しました。
でも、しかたないのです。
長年の習慣習性は、そう簡単に治らないのです。
それに、今は私達の活躍で変わりましたが、私達が魔都に来た当初は、若い女性だけで街を出歩き買い物をするのは、とても危険な事だったのです。
だから、買い物は全てクラン内の売店ですなせていましたし、食事もクラン内の食堂で済ましていたのです。
「でしたらラナお姉様。
姉妹四人で初めての買い食いをいたしましょう」
「ニコルお姉様の申される通りです。
姉妹四人で買い食いいたしましょう」
「僕は仲間外れですか、ニコルお姉様、ダリアお姉様」
ニコルとダリアとクリスティアンまで、マリアの話に加わってきました。
四人のために初めて設けた公休日が、悪い方に作用してしまいました。
今迄の私は、休みなど欲しいと思ったことはありません。
遊び好きのダニエルでさえ、ドウラさんの手前、休みたいなどとはひと言も口にしませんでした。
ですが、変われば変わるもので、マリアをパーティーごと鍛えるとなると、急に疲労の事が気になってしまったのです。
私はマリアが疲労で思わぬ不覚をとる事を心配し、ドウラさんはレイノルドが疲労で思わぬ不覚をとる事を心配したのです。
その姿を見て、エマとニカに対する態度との違いに「おばあちゃんっ子は三文安い」と言う諺を思い出しました。
エマとニカもドウラさんの言動に苦笑していましたが、私は笑えませんでした。
私の事を見ているイヴァンとダニエルは、同じように苦笑しているのでしょうね。
「お姉様。
だったら姉弟五人で栗の焼き菓子を食べに行きましょう。
徒士団騎士団のお姉様方に、美味しい焼き菓子の店を教えていただいたのです。
昔お姉さまが焼いてくださった焼き芋には及ばなくても、姉弟五人で一緒に食べれば、それなりに美味しいと思うのです」
止めてくださいマリア!
職人が焼いた菓子と、素人の私が焼いた芋を比べないでください!
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