第54話城伯2

「テゥーリ。

 私の家臣になりたい子なんていると思う?」


「います!

 たくさんいます!

 私はなりたいです!

 私を家臣に召し抱えてください!」


「え?

 本気なの?

 私みたいな小娘に死ねと言われたら、死ななきゃいけないんだよ?」


「大丈夫です!

 ラナ様はそんな命令はされません。

 家臣領民が全員助かる事を考えてくださいます」


 テゥーリの無条件の信頼が重くて痛いです。

 私はそんな立派な人間ではありません。

 ですが、本当に意外でした。

 私なんかの家臣になるよりも、ジョージ様、マルティン様、イヴァン、ダニエルの城伯家の方が、ゲイツクラン団長の血縁なので、安心できるでしょうに。


 まあ、女性当主の方が安心できるのかもしれませんが、それならばドウラさんの城伯家が圧倒的に安心感があります。

 ドウラさんがこのまま引退することが心配なら、圧倒的な魔力で簡単に亜竜種を斃すエマとニカの城伯家でしょう。

 私を選ぶ子がいるとしたら、前衛職の女性冒険者でしょうか?

 それならば多少希望者がいるかもしれませんね。


「ラナ閣下。

 もし本当に家臣を召し抱える気がおありなら、私達もお願いします」


「フリーダさん、ブリギッテさん、アンゲリカさん!

 貴女方までですか?

 貴女方のような熟練冒険者が私の家臣になって、何の利があるのですか?

 望めば皇室で召し抱えてもらえるのではありませんか?」


「いえ、それが一番嫌なのです。

 皇室に徒士家や騎士家で召し抱えられても、貧乏生活が待っているだけです。

 ですがラナ閣下なら、私達を蔑ろにしないのは分かっています。

 陪臣徒士家や騎士家になっても、私的時間は自由に狩りをさせてくださるでしょ?

 できれば皇室に強制仕官させられる前に、召し抱えもらいたいのです」


 フリーダさんが代表して話してくれました。

 なかなか興味深い話でした。

 ゲイツ家は、ずっと皇室の意向に沿って、当主や跡取りが冒険者になる事はありませんでした。

 イヴァンとダニエルは、冒険者になるために一時的に絶縁になっています。

 それをフリーダさん達は警戒しているのでしょう。


 そう考えれば、ドウラさんやエマとニカを警戒するのも分かります。

 ドウラさんのホセイ家は、士爵位を得ていたので、皇室の規則通り冒険者として狩りをしていませんでした。

 ドウラさんが冒険者になったのは、隠居して長男に家督を譲ってからです。

 エマとニカが冒険者になれたのも、後継者候補の兄がいて、家督を継げない女だっあからでもあります。


 となると、安心して仕えられるのは私だけという事になります。

 だとすると、案外簡単に千人の家臣が集まるかもしれません。

 でも、女ばかり千人の家臣団ですか……

 ひとつ間違えれば、とんでもない集団になってしまいます。

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