第45話条件闘争
ええっと、とても厳しい条件闘争だったそうです。
私は係わっていませんが、ジョージ様は相当やりあってくださったそうです。
一介の徒士目付組頭とは思えない、激しい舌戦だったそうです。
私は全くかかわっていないので、あくまでも伝聞です。
一緒に参加した、マルティン様とイヴァン、ダニエルから聞いた話です。
最近よくイヴァンとダニエルの二人が話しかけてきます。
パーティーメンバーですし、同じ前衛職ですから、日頃から親しく付き合い、狩りの最中でも以心伝心できればいいと思っているのでしょう。
だから私もできるだけ仲良くするように心がけています。
元々嫌っていたわけではありませんし、無理をしているわけではありません。
話を元にも戻しましょう。
一番条件闘争を有利に導いたのは、公務と私用時間を分けて、公務中の狩りの成果は皇室に献上するという事でした。
今迄はとにかく皇都を護り、厄竜を迎え討つことに重点が置かれていました。
討ち取れなくても、大陸から追い出すことを目標にしていました。
それも当然でしょう。
二十年前の厄竜災害で、一億を越えていた人口が七千万人を切りました。
十年前の厄竜災害では、七千万人の人口が五千万人を切りました。
二十年前から考えれば、人口が半減しているのです。
しかも死んでいるのは、魔法薬を買えない貧しい庶民です。
年貢を納める民の半数を失えば、領主の収入も半減しているのです。
それは皇室も同じなのです。
それでなくても、もう厄竜がまき散らす疫病のうち最も恐ろしい、属性竜由来の疫病を治療する薬はほぼ残っておらず、三度目の厄竜災害が起これば、今度は皇室とわずかな有力貴族以外は治療のしようもないのです。
この状態では、属性竜由来の薬は戦略物資になります。
皇室に縋りついてでも、薬を賜ろうとします。
皇室はどれほどの褒美を与える事になろうと、皇国の全戦力を投じようとも、属性竜を狩り素材を手に入れたかったのです。
ですが、必ず厄竜が現れるとも言えないのです。
過去二度現れただけで、その間隔が十年だっただけです。
必ず今年現れるとも言い切れないのです。
皇国の現有戦力を全て投入しても、属性竜が狩れる確証もありません。
それくらいなら、我々の要求を聞き入れた方が確実とだと考えたそうです。
全く反対がなかったわけではありません。
無条件で前例を踏襲したがる人間も多いですから。
過去の強制仕官では、実力に応じて士族位を与えられましたが、大半は謁見資格のない徒士にされました。
亜竜種を狩った事のあるパーティーメンバーが、謁見資格のある騎士位をもらい、属性竜を狩った事のあるパーティーメンバーが、騎士位の一つ上の士爵位を与えられたことがあるだけです。
士族最上位の準男爵位を与えられた者すらいなかったのです。
それを城伯や宮中伯など、寝言同然の要求だと、門前払いを喰らって当然だったのですが、ある方の口添えで一変したそうです。
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