第43話偽勅

「絶対に嫌です。

 強制仕官の上に属性竜を徴発されるなんて、納得できません!」


「その通りだ、父上に兄上。

 幾らなんでも理不尽すぎる。

 本当にこれが皇帝陛下の命令なのか?

 前のように皇族や重臣が騙った偽勅じゃないのか?!」


 私の怒りを引き受けるかのように、ダニエルが父親と兄に噛みついていますが、一族で争うことになるのは不幸です。

 だからといって、今回の勅命に従う気はもうとうありません。

 ゲイツ家から受けた恩を忘れたわけではありませんが、だからといって、ドウラの死に直結する素材の挑発に応じる気はありません。


「父上、兄上、どうなさるつもりですか。

 家と団を割って皇室に忠誠を誓われますか?

 それとも家と団で一致団結して、新天地を目指しますか?」


 普段冷静で天才肌のイヴァンが、父親と兄に決断を迫ります。

 イヴァンも今回の勅命には従えないと考えているようです。

 それどころか、大陸を離れて新天地を目指す覚悟のようです。

 それを聞いて、私も覚悟が定まりました。

 今の私達なら、皇国にもこの大陸にもこだわる必要はありません。

 どこでだって生きていけるはずです。


「今徒士目付組頭として建白書を出している。

 今回の勅命は恐らく偽勅であろう。

 だが皇帝陛下の真意は分からん。

 拒否された時の事を考えて、偽勅という体裁を整えた可能性もある。

 皇室であろうと、属性竜は喉から手が出るほど欲しいだろうからな。

 だがはっきりと拒否すれば、無理強いはできないだろう。

 これを無理強いしたら、冒険者が狩りをしなくなる。

 その影響は、皇国を揺るがすほどの大騒動になるだろうからな」


 確かにジョージ様の言う通りでしょう。

 それくらいは私にだって分かります。

 食べるだけで身体強化すると分かった、亜竜種を狩れる現役冒険者は、ゲイツクランの冒険者だけです。

 完全に敵に回すわけにはいかないでしょう。


 十年前二十年前には、亜竜種を狩れた冒険者はいましたが、全員皇室に強制仕官させられています。

 最悪彼らに狩りをさせるという方法もありますが、現役を離れて十年以上経つので、以前と同じように亜竜種を狩れるとは限りません。

 特に二十年前に現役を離れた人達は、体力も精神力も低下しているでしょうから、勘を取り戻す前に死んでしまう可能性が高いです。


 それと、一番の問題は厄竜の再来です。

 十年ごとに現れるとしたら、そろそろ現れてもおかしくはないのです。

 皇都の護りを疎かにしてまで、強制仕官させた元冒険者に、本当に成功するかどうかわからない、狩りをさせるとは思えません。


「さて、ではこちらの要求をすり合わせておこうか」


 ジョージ様になにか考えがあるようです。


 

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